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甲州印伝

甲州印伝とは。武田信玄も愛した鹿革に、漆が魅せる文様美

投稿日: 2020年6月30日
産地: 山梨
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軽く柔らかな鹿革と、漆の上品さが調和する日本の伝統工芸品が、山梨県甲府市にあります。

素材は、古くから人々に広く愛され、あの武田信玄も愛用したと伝えられる、鹿革。

そんな鹿革に、漆で模様付けを施すという独特な加工技法により生まれたのが、「甲州印伝」です。

今日は甲州印伝の誕生から現代に至るまでの繁栄の歴史をご紹介します。

甲州印伝とは。

甲州印伝とは山梨県を中心に発展した、鹿革を原材料とする工芸品。

鹿の革をなめして加工し、漆を用いて模様づけする。この技法が江戸時代に編み出されて以来、鹿革独特の軽く柔らかな風合いと漆の上品さが評判を呼び、様々な用具に用いられてきた。

現代では、財布や名刺入れをはじめ、リュックサックやボストンバッグなど、多くの人々が手に取るアイテムの素材としても活用されている。

写真提供:やまなし観光推進機構

写真提供:やまなし観光推進機構

◯ここに注目。「印伝」名前の由来はインドにあり

南蛮貿易が盛んであった17世紀頃、インド産の装飾革が東インド会社によって日本にもたらされた。その装飾革に「応帝亜 (インデア) 革」と呼ばれた革があり、幕府に献上された際に印度 (インド) から伝来したという意味で「印度伝来」から印伝と呼ばれるようになり、今日の「印伝」として広く知れ渡ることとなった。

◯ここに注目。印伝独特の3つの技法「漆置き」「燻」「更紗」

甲州印伝は、3つの伝統技法「燻 (ふすべ) 」「漆置き」「更紗 (さらさ)」によって支えられている。

燻:鹿革を煙で燻して黄褐色に染める。
漆置き:型紙の上から漆を乗せ、模様を表す。これが印伝独特の立体的な表情を生む。
更紗:型紙を用いて顔料で模様付けする。その模様がインドの布「更紗」に似ていることからこの名がついたとされる。

武田信玄も愛用。武具として愛された鹿革

鹿革は軽くて丈夫であることに加え、加工や装飾がしやすいという優れた特徴を持つ。手触りは人肌に近く、使えば使うほど手に馴染む素材として、古くより人々に親しまれてきた。

鹿革特有の軽さや丈夫さは武人らに重宝されてきたが、戦国時代になるとますます盛んに武具に用いられるようになった。

武具を彩る鹿革には厄除けや身を守る意の「亀甲」や疫病を防ぐとされる「菖蒲」など様々な模様が施されている。

武田信玄が好んだと言い伝えられる「信玄袋」 (由来は諸説あり) にも鹿革が用いられていた。

甲州印伝の歴史

写真提供:やまなし観光推進機構

写真提供:やまなし観光推進機構

◯日本の革工芸の歴史は奈良時代から

日本の革工芸の歴史は、奈良時代まで遡る。草木の根を用いた革への染色方法や模様付けなど、さまざまな技法が考案された。

奈良時代における革工芸の繁栄の証は現代でも確認することができる。

奈良の正倉院には1300年経った現在でも、ニホンジカの皮革を用いた製品が原型を保ったまま所蔵されている。

◯鹿革が武具として武士たちに愛された戦国時代

甲冑 (イメージ)

甲冑 (イメージ)

軽さや丈夫さという特徴から、鹿革は甲冑などの武具に使用され、武人たちに愛されてきた。武具への鹿革の活用により、新しい文様の登場や種類の多様化など、鹿革の装飾は華麗な発展を遂げる。

◯甲州印伝のはじまり

甲州印伝の始まりは、甲州の地で漆置きによる紋様付けが始まった1710年頃とされている。

当時は一帯に3軒の印伝細工所があったと記録されており、そのうちの一軒が、現在も継承されている印傳屋である。

「腰に下げたる 印伝の巾着を出だし 見せる」

十返舎一九の滑稽本『東海道中膝栗毛』(1802〜1809年刊) の文中にもこのように登場するほど、印伝は江戸時代の人々に広く愛されていた。その頃は他にも印伝をつくる地域があったと考えられているが、現代に伝わるのは甲州印伝のみとなっている。

◯山梨の特産品へ

明治時代に開催された内国勧業博覧会で信玄袋や巾着などが褒賞を得たことにより、甲州印伝は山梨県の特産品として不動の地位を築いた。大正期にはバッグなどにも用いられるなど、製品も多様化していく。

第二次世界大戦の際には鹿革規制が出され、甲州印伝の製作が困難になるという逆風も経験した。

そうした逆風を乗り越えて、1975年 (昭和50年) に甲府印傳商工業協同組合が設立され、続く1987年 (昭和62年)には国の伝統的工芸品に甲州印伝が認定された。

関連する工芸品

「皮革」とは。「人類最古のリサイクル品」と呼ばれる技と歴史
https://sunchi.jp/sunchilist/craft/116503

甲州印伝のおさらい

◯素材

柔らかで軽い鹿革。その丈夫さや保湿性、吸収性の高さから武具としても活用されてきた。人肌に近い手触りで使い込むほどに手に馴染む素材は、現代においても財布や名刺入れなど様々な製品として広く愛されている。

◯代表的な技法

・漆置
型紙を用いて漆を乗せる

・燻 (ふすべ)
鹿革を煙で燻すことで黄褐色に染める

・更紗
型紙を用いて顔料で模様付する

◯主な産地

山梨県甲府市

◯数字で見る甲州印伝

・誕生:1854年頃と伝えられる
・従事者 (社) 数:甲府市のなめし革・同製品・毛皮製造業従事者は45人
・伝統的工芸品指定:1987年、国の伝統的工芸品に認定

<参考>
北俊夫監修『調べよう日本の伝統工芸4 中部の伝統工芸』国土社 (1996年)
経済産業省 平成30年工業統計表「地域別統計表」
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kougyo/result-2/h29/kakuho/chiiki/index.html
山梨県の郷土伝統工芸品
http://www.pref.yamanashi.jp/shouko/kogyo/densan/inden_01.html
(以上サイトアクセス日:2020年4月4日)

<協力>
やまなし伝統工芸館
http://www.teikyo.jp/crafts-yamanashi/result.html?action=article&cid=112

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