さんち 〜工芸と探訪〜

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愛しの純喫茶

愛しの純喫茶〜山形編〜 OCTET(オクテット)

投稿日: 2017年8月22日
産地: 山形
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こんにちは。さんち編集部の西木戸弓佳です。
旅の途中でちょっと一息つきたい時、みなさんはどこに行きますか?私が選ぶのは、どんな地方にも必ずある老舗の喫茶店。お店の中だけ時間が止まったようなレトロな店内に、煙草がもくもく。懐かしのメニューと味のある店主が迎えてくれる純喫茶は密かな旅の楽しみです。旅の途中で訪れた、思わず愛おしくなってしまう純喫茶を紹介する「愛しの純喫茶」。今回は、山形の老舗ジャズ喫茶「OCTET (オクテット) 」です。
そこは、自分だけの秘密にしておきたいようなとても居心地のいい空間でした。

8月初旬、糸や織物のメーカーさんを訪ねて訪れた山形。
夕方、東京へ戻ろうとしたら終電まで新幹線が満席という危機です。どうやらスポーツの大きな大会と重なって新幹線がいっぱいなのだとか。困りました。

一杯やろうかとすぐに頭をよぎりますが、それにはちょっと申し訳ないほどの明るさで、散歩がてら喫茶店を探すことに。
駅前の大通りから少し入った小道、気になる佇まいの喫茶店に出会いました。おそらく駅から5分足らず。本当はもっと散歩するつもりでしたが、ちょっとだけ入ってみようと中へ。

山形・octet(オクテット)

少し重たい扉を開けて、そうっと中へ入ります。中は思ってたよりも薄暗く、喫茶店にしては大きなボリュームで音楽が流れていました。

山形・octet(オクテット)

「いらっしゃいませ。お好きなところに」と入口で声をかけられ、誰も座ってないカウンターの端に座ります。それほど広くない店内には5席ほどのカウンターとテーブル席が3つ。
壁にはずらりとレコードやCDが並びます。ターンテーブル、大きなスピーカー、真っ黒なピアノ、たくさんのライブのフライヤー‥‥ここだけ時間が止まっているような、ザ・ジャズ喫茶です。

山形・octet (オクテット)

迎えてくれたのは、1977年のzoot sims (ズート・シムズ) の山形ライブ。このライブもOCTETが主催している

私の他に、先客が2名。
離れたテーブル席に座るおふたりはどちらとも、流れる音楽の向こう側に参加してるかのように目を閉じたりリズムを取ったりして音楽に聴き入っています。

こんなオールドスクールな純喫茶に、音楽が流れている間に話しかけると嫌がられるかもしれない、と黙ってると「メニューはそこよ。何にしますか?」と話しかけてくれたのはマスターのほうでした。

堅物そうに見えたマスターは話してみるととてもチャーミングで気さくな方。そしてジャズのことを話しだすと止まらない、愛おしいジャズマニアでした。
のちに、山形のジャズ界を牽引するすごい方だということを知らされます。

山形・octet(オクテット)

マスターの相澤栄さん。コーヒーは一杯ずつドリップしてくれる

頼んだコーヒーをいただいている間、マスターの電話が鳴りました。
電話の向こうの方はお知りあいのようで、何かのライブの打ち合わせをしている様子。
話し終えて教えてくれたのは、相手は渡辺えりさん。ベテランの女優、演出家でもあり、シャンソン歌手でもある彼女のライブが明後日山形で行われるのだとか。
「へぇ、どこでライブされるんですか?」
「ここでするんです」
「え、ここで?」と驚きましたが、店内にはたしかにピアノもあるし、音響も整っている。でも、なぜここで?

山形・octet(オクテット)

JBLのスピーカーにピアノ。ライブの日は、ここがステージになる

なんでも、マスターはジャズのオーガナイザーでもあって、国内、海外からアーティストを呼んで定期的に山形でライブを開催しているのだそう。OCTETでのライブの他、山形市内の大きなホールでのライブも行っています。

渡辺貞夫さん、スコット・ハミルトンさんなどジャズにそんなに明るくない私でも分かるほどの大物たちの名前が書かれたフライヤーやポスター。それらのライブの主催は、すべてOCTETでした。

山形・octet(オクテット)

OCTETがオープンしたのは1971年。ジャズマニアのマスターが脱サラしてはじめたお店です。
末広がりの「八」と、お店を作るとなった時に力を貸してくれたのが8人の協力者だったことから、OCTET(八重奏の意味)となったそう。
古いレコードだけでなく現代のジャズも集まるコレクション数はなんと約1万5000枚!
市場には出回っていないような貴重なレコードも多く、ある音源を求めて県外からわざわざ来られる方もいらっしゃるのだそうです。

山形・octet(オクテット)

「この奏者は元々‥‥」「この曲はアレンジされてて‥‥」「この年代の‥‥」とていねいに解説してくれるマスター。本当に愛おしそうにニコニコと話されるので、こちらがにやけてしまうほど。
いい音楽と音響、そして愛のこもったジャズ講座に、すこしだけ休憩するはずだったのに、気付けば電車の時間に!マスターにお礼を伝え、走って駅に向かいました。

山形・octet(オクテット)

「山形のジャズ喫茶誕生秘話」マスターの相澤さんが出されているOCTETの誕生話

山形OCTET・オクテット

周年の際に常連さんから贈られたお酒

OCTET
山形市幸町5番8号
023-642-3805
11:00-21:00

文・写真 : 西木戸弓佳
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