さんち 〜工芸と探訪〜

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ロケットに欠かせない、驚異の精度を持つ町工場の手仕事

投稿日: 2019年4月6日
産地: 東京
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「地球は青かった」

人類で初めて宇宙に行ったユーリ・ガガーリンの有名な言葉です。

1961年の4月12日、ガガーリンを乗せた世界初の有人宇宙衛星・ソ連のボストーク1号が打ち上げに成功。そのことを記念して4月12日は「世界宇宙飛行の日」となりました。

JAXAのロケットにもその技術が。驚異の精度をもった「へら絞り」

世界中で日々研究が進む宇宙開発事業。

ロケットの製造の現場で、金属を加工する「へら絞り」という技術が重要な役割を担っているのをご存知ですか?

種子島で打ち上げられた宇宙航空研究開発機構 (JAXA) のH2ロケット。 ロケットの両サイドについたロケットブースターの先端部分や、エンジン部品がへら絞りで作られています

種子島で打ち上げられた宇宙航空研究開発機構 (JAXA) のH2ロケット。 ロケットの両サイドについたロケットブースターの先端部分や、エンジン部品がへら絞りで作られています

へら絞り加工とは、回転する平面状の金属板に「へら」と呼ばれる棒状の道具を押し当て、変形・加工していく手法です。

微妙な体重のかけ方や、へらの当て方で、金属を巧みに変形させていきます。それにもかかわらず、寸法誤差はわずか0.015ミリという驚異の精度。

この高い技術力を持ち、世界から注目される工場が東京都大田区にあります。北嶋絞製作所で、日本が誇る手仕事の現場を見学します。

北嶋絞製作所外観
へら絞りの様子。大きいものの場合は、数人がかりでへらを抱え、金属に押し当て絞っていきます

へら絞りの様子。大きいものの場合は、数人がかりでへらを抱え、金属に押し当て絞っていきます

東京都大田区 北嶋絞製作所

戦後間もない1947年に創業した北嶋絞製作所。戦後の焼け野が原で、まずは鍋や釜といった日用品作りから始まりました。高度経済成長期を迎え、様々な依頼が舞い込むようになり、難題も断ることなく挑戦し続けることで新しい技術が蓄積されていったといいます。

機械化による大量生産ができる現在、日用品は機械生産の方が効率がよくなり、職人の手による絞りの技術が求められるのは、高い精度を必要とする製品ばかりに。ロケットの部品をはじめ、パラボラアンテナや航空機の部品、医療器具など、特殊な金属パーツを数多く手がけています。

航空機・宇宙機器などの部品。厚みが一定でないと安全性に大きく影響するため人の手で作られます

航空機・宇宙機器などの部品。厚みが一定でないと安全性に大きく影響するため人の手で作られます

様々な細かい部品も作っている

「機械より、人の手の方が精度が高い」

と、へら絞り職人の北嶋隆之(きたじま たかゆき)さん。一体どういうことなのでしょうか。

「金属には、圧力に反発して元に戻る性質があります。絞っていく中で、そうした性質による反応がどれくらい起きるかはその時々で異なります。一定の圧力をかける機械ではそれに対応できないのです」

人間の経験を元にした数値設定をすることで、機械でも近いことができるようにはなってきているといいます。しかし、絞りながら状態を予測し、力加減や圧を加える方向などを調整して仕上げるには、今のところ人間の感覚が一番正確なのだとか。

脇に「へら」を挟んで体全体を使って金属を絞っていく

北嶋さんに実演していただきました。脇に挟んでいるのが「へら」

へらの柄には、ネジに挿す穴が空いています。加工する金属の硬さや大きさに応じて、扱いやすい位置に都度挿して使います

へらの柄には、ネジに挿す穴が空いています。加工する金属の硬さや大きさに応じて、扱いやすい位置にその都度挿して使います

テコの原理で力を加えて金属を絞っていきます

テコの原理で力を加えて金属を絞り、金型に沿わせていきます

叩いたときの音で、金型との密着具合を確認する

途中で金属を叩いて音を出します。金型との間に隙間があると、密着している部分と異なる音が響くので、聴き比べて金型との密着具合を確認します

金属の張り具合を見ながら適切に力を加えるとなめらかな仕上がりに

金属の張り具合を見ながら適切に力を加えると、なめらかな仕上がりに

力の入れ方を誤ると、表面に凹凸が生まれてしまう

金属の状態を考えず、力の入れ方を誤ると、表面に凹凸が生まれてしまう

金属の戻り具合を見誤って力を加えるとガタガタになってしまう

無理やり力を加えると、穴が開いたりガタガタになってしまうことも

「金属の種類によっても硬さや反発具合は異なります。絞っていると次第に硬くなってしまう素材もあります。その時は、熱することで元の状態に戻してから、また絞ります」

熱することで、へら絞りによって硬化してしまった金属を元の柔らかさに戻します。熱した時の金属の色を見て、状態を判断するのだそう

熱することで、へら絞りによって硬化してしまった金属を元の柔らかさに戻します。熱した時の金属の色を見て、状態を判断するのだそう

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