さんち 〜工芸と探訪〜

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お盆を迎える前に知りたい、これからのお念珠と祈りの話

投稿日: 2017年8月9日
産地: 東京
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みなさんこんにちは。ライターのいつか床子です。
まもなくお盆休みが始まりますね。親族でお墓参りに行ったりと、他のお休みとはまた違う特別な時間です。お墓参りなどでよく使うものといえばお念珠 (ねんじゅ) 。お数珠とも呼ばれています。

お墓参りや法事などの場面でいつも手にかけているお念珠ですが、そもそもどんな意味があるのか、またどのような使い方をするのが正しいのか、みなさんご存知でしょうか? 小さいころから当たり前のように使っているため、かえってわからないことがたくさんありそうです。

そこで今回は、モダンなお念珠を取り扱う「ひいらぎ」さんを訪問。お念珠の役割について改めてお話を伺うとともに、お盆のあり方、ご先祖様との付き合い方についてたっぷりお話を伺ってきました。

赤レンガが印象的なひいらぎさんのお店。お念珠やお香といった日本らしい小物を扱っていますが、入り口は洋風で気軽に入りやすい雰囲気があります

自分で組み合わせを選べる
色鮮やかな新しいお念珠

ひいらぎさんのお念珠を見てまず驚くのが、その色鮮やかさです。お念珠といえば全体的に濃い紫色で、大ぶりの珠がじゃらじゃらと連なっていて‥‥と、ちょっと物々しいイメージがありますよね。しかし店内にディスプレイされているお念珠はブレスレットのように洗練された趣があります。

一般的な仏具のイメージとは全く違う、洗練されたアクセサリーショップのような空間

あまりの鮮やかさに思わず引き込まれます

珠と房の組み合わせを自分好みにオーダーすることもでき、バリエーションは女性用だけでも200通り以上になります。オーダーからお渡しまでは約3週間。ひいらぎさんの店舗を始め、全国で受注会も開催しています。

「最初にアクセサリーだと思って近くに来られて、その後『え、これ数珠なの?』と驚かれる方も多いんですよ」とにこやかに語るのは、ひいらぎの代表取締役・市原ゆき (いちはら・ゆき) さんです。

今回お話を伺ったひいらぎ代表取締役の市原さん (写真右) と、店長の千田ひとみ (ちだ・ひとみ) さん

お念珠はもっと自由なもの

ひいらぎさんが作っているのは「片手念珠」や「一輪念珠」と呼ばれる、輪が一重の略式のお念珠です。このお念珠、意外なことに「この色は使ってはいけない」とか、「この珠の素材は駄目」というような縛りがほとんどありません。

しかも (日蓮宗以外の) ほぼ全ての宗派で使用することが可能。私たちが普段お念珠を使用する葬儀や法事などのシーンで、フォーマルに使用することができます。

房の形や輪の長さなど、宗派ごとに細かい決まりがあるのは輪が二重になっている本式念珠のほう。「お念珠って何だか難しそう‥‥」と感じるのは、本式のイメージがあるからだったのですね。

小さく丈夫に作られた子供用のお念珠もあります

そもそもお念珠は、珠を手繰って念仏を何回唱えたか忘れないようにするためのカウンターだったそう。なので当時は珠の数にも煩悩の数である「108」を基本に、厳密な規定がありました。

しかし片手念珠にはカウンターとしての意味合いはほとんどなく、珠の数を気にして作っているお念珠屋さんはあまりいません。ひいらぎさんでも、手のサイズに合う数に調整しています。

形式にこだわりすぎず、
故人と心を通わすお盆休みを

素材にこだわった色とりどりのお念珠を製作することで、お念珠を従来のイメージから解き放った市原さん。お盆やお墓参りといった行事についても、「形式にとらわれすぎないで」と呼びかけます。

「お盆やお墓参りが義務にならないでほしい」と市原さん

「お墓参りに作法や地方ごとの習わしはいろいろありますが、形式を守ることに気持ちが向きすぎると、単なる作業になってしまいますから‥‥。それよりも心の中で『会いにきたよ』、『ありがとう、毎日平穏に暮らせています』と亡くなられた人に声をかける、その気持ちが一番大事なんじゃないでしょうか。

忙しくてお墓参りに行けないときには、写真に向かって手を合わせて祈るだけでもいいんです。罪悪感や後悔を感じる必要はありません。

また、子供のころや不遇が続いているときは『先祖に感謝して祈る』と言われてもよくわからないかもしれません。そういうときは『最近こういう仕事をした』、『目標にしていた登山に行ってきた』というような、近況報告だけでもいいのです。

もう少し余裕が出てくると、その先に『これらが平穏にできたのはご先祖様のおかげかもしれない』と感じられるようになるのだと思います」。

慣習にこだわりすぎず、故人やご先祖様に思いを馳せて静かに語らうこと。お盆を迎えるにあたって、ぜひ大切にしていきたいです。

気持ちを切り替える道具としての
お念珠の新しい役割

市原さんはポーチの中にマイ念珠を1つ忍ばせています。「入れっぱなしで取り出さなくてもいいんですよ。お寺に立ち寄ったときなんかにおもむろに取り出せば、“ツウ”っぽく楽しめます (笑) 」とにっこり。

念仏を数えるという意味合いが薄くなった現代において、自分の気持ちを切り替え、心をリラックスさせるのも新しいお念珠の役割だと言います。

「私たちの日常ってかなり慌ただしいですよね。仕事もすごく忙しいし、子育てもあるしで‥‥。そんな疲れた頭と体で『さあ心を落ち着けましょう』と言われても、なかなかすぐにはできません。

そういうときに日常では使わないお念珠というアイテムを利用することで、すっと頭が切り替えられるんです。お香やキャンドルのようなものですね。

なかでもお念珠は手軽に持ち運びができますし、いつでも身に付けられるので、その役割を果たしやすいと思っています。だからこそもっと好きな配色で、気に入った素材で作っていただければ。自分のお守りとして、お念珠に愛着を持っていただきたいです。

お気に入りのお念珠は、家や外出先でリラックスするのに役立ちます

それに、お念珠はお通夜やお葬式で使う仏具なので何となく忌まわしいイメージを持つ人がいることもわかるんです。でも、そうではないんですよ。

珠と房のあいだに『ボサ』と呼ばれる部分があります。ここには菩薩様が宿るといわれて、魔除けや厄除けのお守りとしても昔から使われてきました。実はとてもありがたい道具なんです」。

房と珠の間にある螺旋状の珠が「ボサ」。菩薩様が宿るといわれています

お念珠は私たちが想像しているよりもずっと身近で、心強い存在だったのですね。

まもなくやってくるお盆。祈りにも道具にも自分らしさをプラスすることで、より実りのあるものにしてみるのはいかがでしょうか。

<取材協力>
ひいらぎ 千駄木
東京都文京区千駄木2-30-1
03-5809-0013
http://hiiragi-tokyo.com/

文:いつか床子
写真:いつか床子、ひいらぎ
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