さんち 〜工芸と探訪〜

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細萱久美が選ぶ、生活と工芸を知る本棚

細萱久美が選ぶ、生活と工芸を知る本棚『柚木沙弥郎 92年分の色とかたち』

投稿日: 2017年4月1日
産地: 東京
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こんにちは。中川政七商店バイヤーの細萱です。
工芸にまつわる本を紹介する連載の第2回です。本や作品を拝見して、お人柄や暮らしに興味が沸き、お会い出来るものなら是非お会いしたい方の著書を選びました。

みなさん柚木沙弥郎さんはご存知ですか?柚木さんは、特に民芸の世界では有名ですが、現在、94歳を迎える現役のアーティストです。戦後まもなく、柳宗悦が提唱する「民藝」と出会い、後に人間国宝となる染色工芸家、芹沢銈介さんに師事しました。20代半ばにして染色家の道を歩み始め、今や日本の型染の第一人者として国際的な評価を得つつ、型染に限らず版画、ガラス絵、人形、絵本といった新たな分野にも挑戦し自らのアート表現を追求し続けていらっしゃいます。

今回ご紹介する本は、『柚木沙弥郎92年分の色とかたち』。92歳までの3年間の日常を追いかけ、作品や製造現場などの綺麗な写真が満載なので、パラパラと気軽に見るだけでも楽しいと思います。柚木アートは、自然や動物などのモチーフを大胆に、時に繊細に表現しており、作品を初めて見る方でもそこに力強さ、楽しさを感じるでしょう。柚木さんがこの本やインタビューでもよく話されているのは、「人間はいつもわくわくしていないとダメ。対象は何でもいい」という人生観。制作だけでなく暮らしそのものを楽しんでいる柚木さんの作品には、ワクワクがあふれています。

本の中では、柚木さんが国内外から集められた、地元のプリミティブなモノが多数掲載されているのも見所。ご自宅には郷土玩具、絵や布、人形、焼物などあらゆるものが所狭しと置いてありますが、なぜか調和がとれており、共通している特徴は、楽しく、おもしろいこと。まさに家は巨大なおもちゃ箱のようです。「モノを選ぶことは直感で、好きに理屈は無い。そして自分の選択眼に自信を持つこと」と柚木さん。私もモノを扱う身なのですが、いろいろに惑わされ、未だ断捨離を繰り返すようでは修行が足りないと身が引き締まります。柚木さんは膨大な蒐集品からその日、目に付いたモノを手に取り、それと向き合う時間を大事にするそう。これは真似してみようと思います。

「自分の中にはたくさんの引き出しがあり、まだ開けてない、知らない引き出しがある。歳を重ねてもそれなりに何か出来るはず」92歳当時の柚木さんが、歳を重ねて思うことを語られているページには、学びや勇気をもらえる言葉がたくさん見つかります。

自分の感性を磨いて常に今を生きることや、憧れや楽しいという気持ちを持ち続けることの大切さを学びます。東京が大好きという柚木さんと、美術館巡りやショッピングのお供をしたいなと本気で夢見ています。


<今回ご紹介した書籍>
『柚木沙弥郎 92年分の色とかたち』
 柚木沙弥郎/グラフィック社



細萱久美 ほそがやくみ
東京出身。お茶の商社を経て、工芸の業界に。
お茶も工芸も、好きがきっかけです。
好きで言えば、旅先で地元のものづくり、美味しい食事、
美味しいパン屋、猫に出会えると幸せです。
断捨離をしつつ、買物もする今日この頃。
素敵な工芸を紹介したいと思います。

文・写真:細萱久美
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