さんち 〜工芸と探訪〜

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わたしの一皿 楕円皿の魅力と謎

投稿日: 2019年10月11日
産地: 島根
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夏とも秋と言えない、せめぎあいの気候が続いています。出版予定の本の原稿書きも佳境。こちらも編集さんとやりとりの応酬。季節も自分もなんだか忙しい。みんげい おくむらの奥村です。

さて、今年も夏に欠かせなかったのがそうめん。今シーズンもずいぶんお世話になりました。あと少し麺のストックがあるので、そろそろ使い切ってしまおう。

福岡県うきは市吉井町にある長尾製麺のそうめん

うちのそうめんの定番は、福岡県うきは市の吉井町にある長尾製麺のもの。この製麺所とその近所の雰囲気がとても好き。

小鹿田焼や小石原焼の買い付けをしてから、久留米あたりに向かうときに必ず立ち寄るエリアです。

福岡県うきは市吉井町にある長尾製麺のそうめん

この麺を初めて食べるなら。めんつゆで普通に味わってもらいたいところなんだけど、うちはいつも食べているので今日は変化球。和え麺にして。

こちらもそろそろシーズン終わりかな、という熊本の長ナスを使って。電子レンジで蒸しナスを作っておいて、それをそうめんに乗せる。暑かったのでナスも冷やしておいた。あとは薬味とタレをぶっかけておしまい。という、楽チンメニュー。

肉はなくてもいいけど、今日はたまに行くラーメン屋さんのほぐしチャーシューを買ってあったのでそれをトッピングして。

調理風景

こんな時、なんだか一皿で収まりがいいのが楕円のお皿。今日は島根県の森山窯のものを使って。

民藝運動の中心的なメンバーとして知られる河井寛次郎の最後の内弟子であった、陶工森山雅夫さんが築いた窯。静かなたたずまいで、ふつうの食事が映える、そんなうつわが多いのがこちらの窯。

こちらの窯は島根県の温泉津(ゆのつ)という場所にあります。良質の粘土が取れたため、江戸時代からの日用雑器の産地。

かつてほど大きな産地ではなくなってしまったけれども、こうして穏やかなうつわを生み出す窯が今なお残っているのはうれしいこと。

この楕円皿、月並みな言い方をすれば何でも受け止めてくれる。今日みたいな麺もいいし、ナポリタンなんかもいい。オムレツなんかもスコンと収まります。

釉薬が濃い場所、薄い場所で色の表情がずいぶん違うし、鉄分の多い土で作られているからその鉄部が焼成によって吹きだして茶色の点々になっている。

実はこのうつわ、その点々と色の表情がどことなく蒸しナスに似ている気がするのだ。蒸しナス乗っけの和え麺が頭に浮かんだ時、この皿がピンときた。

調理風景

この料理、出来たら香りの野菜を一つ用意したい。シソでもいいし、香菜(パクチー)でもミョウガでも、ニラでもミントでも。もちろん一つではなく組みあわせても。

今日はちょうど使い掛けのエゴマがあったのでエゴマ。暑い日は蒸しナスも冷やしたものを使えばいいし、香りの野菜はできればたっぷり、たっぷりと。タレは今日は黒酢を効かせています。黒酢とごま油と花椒。ちょっと中国寄りの風味で。

楕円皿というのは考えてみるとおもしろい。たとえば今日もそうなんだけど、ある料理が頭に浮かんだ時、「今日は楕円皿だ!」とすぐに決まる時がある。

別に丸皿で収まりが悪いわけでもない。でも、ぜったいに楕円皿なのだ。

そして楕円皿は言わずもがなで向きがある。もし運ばれてきた楕円皿が目の前に縦向きに置かれたら、ギョッとしてしまうだろう。横向きには安心感がある。

これってなんだろうか。同じことは長方形のうつわにも言える。目の慣れなのか、脳に何か潜在的なものがあるのか。果たして。

蒸しナスを乗せたそうめん

そうめんを放っておくと固まってしまうので、考えていてもわからないことはさておきさっさと食べよう。

このそうめんは麺自体がうまい。すすって飲み込んではもったいない。噛み締めて麺の味を楽しみたい。

この麺で食べれば、主役がナスではなくそうめんだと合点がいくはずです。どうぞお試しください。




奥村 忍 おくむら しのぶ
世界中の民藝や手仕事の器やガラス、生活道具などのwebショップ
「みんげい おくむら」店主。月の2/3は産地へ出向き、作り手と向き合い、
選んだものを取り扱う。どこにでも行き、なんでも食べる。
お酒と音楽と本が大好物。

みんげい おくむら
http://www.mingei-okumura.com


文・写真:奥村 忍
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