さんち 〜工芸と探訪〜

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graf 服部滋樹が出会った滋賀の風土と滋賀で生まれたもの

第2回 滋賀の水源、琵琶湖から生まれる文化とふたつのお酒

投稿日: 2017年2月22日
産地: 滋賀
タグ:
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こんにちは。さんち編集部の井上麻那巳です。
大阪のクリエイティブ集団、grafはデザインをし、家具をつくり、おいしいごはんと素敵なものを届けるちょっと変わった会社です。その代表を務める服部滋樹(はっとりしげき)さんが近頃毎週のように滋賀に通っているという噂。「MUSUBU SHIGA」プロジェクトのブランディングディレクターに就任し、すっかり滋賀の魅力に魅せられたという服部さんに、プロジェクトの中で調査(リサーチ)・再発見した滋賀のあたらしい価値、魅力を教えてもらいました。



滋賀の水が生んだものづくり



MUSUBU SHIGAプロジェクトの取材で石川亮さんとふたり、滋賀の水源となる湧き水スポットをめぐった服部さん。石川亮さんは、2010年頃より近江の地域伝承や地名など、様々な要因で名付けられた湧水を収集し作品制作したことがきっかけとなり、滋賀県の湧水を調べ、その背景やルーツを探究しているアートディレクター・美術家。その石川さんの案内でめぐった滋賀の水源から、どのようなものづくりが見えてきたのでしょうか。

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個性ある120ヶ所の湧き水



地理的にも精神的にも琵琶湖を中心とした滋賀県にとって、水は切っても切り離せない大きな存在。水のおかげで暮らしがある。水と関係する仕事が多いのも、滋賀県の特徴ではないかと服部さんは語ります。

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滋賀県にある湧き水スポットは約120ヶ所。それぞれに水の個性があり、個性によって活躍の場所が違います。農業に適した水や、水産業に向いている水など、良質の水をそれぞれに適した仕事に活かしている。そのなかで、人の営みと生活が成立していることが滋賀県の魅力のひとつだと感じたそうです。

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琵琶湖の中心に浮かぶ暮らし



服部さんが、滋賀県の暮らしの根幹となる文化があるのではないかと向かった先は、琵琶湖の中心に浮かぶ小さな島、沖島(おきしま)。沖島は、日本で唯一の淡水の湖で人が住む島です。



近江八幡市の堀切港から小さな船で10分弱。目的地の沖島には小さな畑が多く、それが生活のための農業や生活の糧になっていました。港が島の人々の憩いの場になり、夜中には漁船が出て、四季折々の魚を漁獲しています。その中には最高級の湖魚、ビワマスも。ひとつの湖に多くの生態系が存在し、1年のサイクルで生活と仕事が循環していることを感じたそうです。

水の恵みからお米、お酒へ



一方、琵琶湖を囲む陸地と山には農業エリアも多い。滋賀県と関わるようになり、本当においしいお米も毎年いただけるようになったとうれしそうな服部さん。琵琶湖の西と東で違うお米の味を楽しめるのも、滋賀の水の魅力です。水の恵みからお米ができ、そしてお酒へ。お米と水を原料とする日本酒ですが、滋賀のお酒は特に歴史が古いものが多いそうです。

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その中のひとつ、冨田酒造さんも460年の歴史があり、現在杜氏を務めるのは15代目の冨田泰伸さん。冨田酒造のお酒は伝統を引き継ぐ名酒として日本酒好きの間では知られていますが、同時に今の生活スタイルに合ったお酒を考案しています。伝統を大切にしながらも一方で時代に合わせるという考え方も持っていることで営みがサイクルとして回っている、素晴らしいものづくりのあり方だと語ってくれました。思想が揺るがずに技術を更新する、その土地に根付いているからこそ行える伝統の受け継ぎ方が、そこにはあります。

雨の中、出番を待つ冨田酒造の杉玉

雨の中、出番を待つ冨田酒造の杉玉

水の恵みを求めてやってきたラム酒



歴史が古いものが多い滋賀のお酒ですが、その一方で新しく参入してくるお酒もあります。なんとラム酒を滋賀県でつくっているのです。日本で製造していること自体がめずらしいラム酒。滋賀の水の恵みを一身に受けたナインリーヴズさんのラム酒から研ぎすまされたものづくりの精神を感じたという服部さんに、そこから見える滋賀の文化について聞きました。

ナインリーヴズののラム酒

ナインリーヴズのラム酒

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良い水を求めて滋賀へやってきたナインリーヴズさんと出会い、服部さんの頭の中には、遊牧民がそうであったように、人は営みに適した土地へ移動するというシンプルな事実が浮かんだそうです。人が土地に興味を持つ理由はさまざまですが、滋賀県には神秘的な光景や安定した土壌、そして水。人びとを魅了する土地の力が脈々と流れていました。

素材があり、人がいるから生まれるもの

冨田酒造の冨田さんいわく「出どころは狭く、出先は広く」。そのことばにあるように、この土地に素材があったからこそ人が出入りしただろうし、長く素材とともに生きた人たちは出入りする人から新しい感覚を得てきたのではないでしょうか。裏を返せば、閉鎖的な状態だと現在の滋賀の魅力、文化は生まれなかったとも言えます。同じ水の源から生まれた伝統と革新の味、それぞれ味わってみてはいかがでしょうか。

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前回の記事
第1回 山の恵み、水の恵みの間で出会った、和ろうそくと跡取り息子

石川亮さんとの湧き水スポットをめぐる旅はこちらから
MUSUBU SHIGA×RETRIP 石川 亮 滋賀の水源を辿る旅

服部滋樹(graf
graf代表、クリエイティブディレクター。1970年生まれ、大阪府出身。graf代表、クリエイティブディレクター、デザイナー。美大で彫刻を学んだ後、インテリアショップ、デザイン会社勤務を経て、1998年にインテリアショップで出会った友人たちとgrafを立ち上げる。建築、インテリアなどに関わるデザインや、ブランディングディレクションなどを手掛け、近年では地域再生などの社会活動にもその能力を発揮している。京都造形芸術大学芸術学部情報デザイン学科教授。



冨田酒造
琵琶湖の最北端、賤ヶ岳山麓の北国街道沿いで460余年の歴史を刻む酒蔵。銘柄は賤ヶ岳の合戦で武功を立て秀吉を天下人へと導いた加藤清正ら勇猛な七人の若 武者「賤ヶ岳の七本槍」にちなむ。地酒の「地」の部分に重きを置く事をコンセプトとし、地元の農家と提携し滋賀の米・水・環境で醸す本当の意味での地酒造りに専念する。伝統的な日本酒製法を大切にしつつ、スパークリング日本酒や日本酒のシェリー樽熟成など新しい取組もかかさない。ボトルに湖北の魅力を詰め込み、国内はもとより海外へも積極的に発信している。

ナインリーヴズ
2013年にスタートした、まったくあたらしい国産ラム酒のマイクロディスティラリー。自動車部品製造で培った日本ならではの“ものづくり”の心をもって、隠しごとなく、正直にラムを造っている。国産ラム酒として最も多く海外のコンテストで入賞し美味しいと評価を得ている。ラムフェスト・パリ 2014にてイノベーション部門銀賞、第三回 マドリッドインターナショナルラムコンテスト 2014にて熟成期間5年以下の部 銅賞、第四回 ジャーマンラムフェスティバル・ベルリン 2014にて新人賞、マイアミ・ラム・ルネサンス・フェスティバル 2015にてプレミアムホワイトラム部門金賞を受賞。



MUSUBU SHIGA
2014年、滋賀県の魅力をより県外へ、世界へと発信し、ブランド力を高めていく為に発足された。ブランディングディレクターには、graf代表・デザイナーの服部滋樹が就任。くらしている人々が”これまで”培ってきた魅力を分野やフィールドを超えた国内外の新たな視点をもったデザイナーやアーティストとともに調査(リサーチ)・再発見し、出会ってきたモノを繋ぎ合わせて実践しながら、あたらしい滋賀県の価値をデザインし、そして滋賀の”これから”を考えている。

文・写真:井上麻那巳
風景写真:服部滋樹
イラスト:今 美月(滋賀県立栗東高校美術科ビジュアルデザイン専攻)
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