さんち 〜工芸と探訪〜

SUNCHI ~ Explore japan through regional crafts ~

このページの先頭へ

元祖ねこあつめ?招き猫の街・瀬戸の「招き猫ミュージアム」に行ってきました

投稿日: 2017年2月26日
産地: 瀬戸
  • LINE

こんにちは。さんち編集部の尾島可奈子です。
我輩は猫である、と書いた夏目漱石は2月生まれ。そんな漱石が生誕150周年を迎えた2017年現在、日本は空前の猫ブームです。ゲームアプリ「ねこあつめ」は今年映画化も決定したという人気ぶり。そんな中、焼きもので有名な愛知県瀬戸に招き猫を集めてあつめてその数5000点以上という「招き猫ミュージアム」があると耳にしました。
そもそも身近にありすぎて、その由来や付き合い方を意外と知らない招き猫。思えばこちらが日本のねこもの元祖と言えるかもしれません。日本最大の招き猫専門博物館を訪ねて、元祖ねこあつめ?招き猫の魅力を探ってきました。

器だけじゃない。招き猫の街・瀬戸へ

名古屋から私鉄で1時間ほどのところにある愛知県、瀬戸市。言わずと知れた焼きものの街ですが、ミュージアムの存在を知るまで招き猫のイメージは持っていませんでした。実は瀬戸はかつて人形や鳥などを゙精密に表現したセト・ノベルティと呼ばれる海外輸出向けの置物を多く生産していた街。その元祖が招き猫だったそうです。歴史は明治30年代から始まりおよそ100年。2005年にオープンしたというミュージアムは、洋風文化が入ってきた当時をイメージしたという和洋折衷の外観でした。

瀬戸は陶器と磁器両方の産地。手前は磁器の破片を手すりにあしらった橋、奥は陶器作りの工程が描かれたタイル絵が続く陶橋。

瀬戸は陶器と磁器両方の産地。手前は磁器の破片を手すりにあしらった橋、奥は陶器作りの工程が描かれたタイル絵が続く橋。

川沿いには器を売るお店がずらり。

川沿いには器を売るお店がずらり。

街の中にも、焼きものの気配。

街の中にも、焼きものの気配。

マンホールの蓋にも瀬戸らしさ。

マンホールの蓋にも瀬戸らしさ。

尾張瀬戸駅から歩いて10分ほど、本日お話を伺う、招き猫ミュージアムに到着です!

尾張瀬戸駅から歩いて10分ほど、本日お話を伺う、招き猫ミュージアムに到着です!

案内いただく井上さん、鈴木さんに続いて展示フロアの2階へ向かうと…す、すごい数。様々な出で立ちの招き猫たちが、右手をあげ左手をあげ、お出迎えです。

階段を昇ると、そこには…

階段を昇ると、そこには…

img_9449

「ここには日本中から集めてきた招き猫がおよそ5000点、収蔵されています。日本で最大規模の招き猫専門博物館なんですよ」

5000点!一体どうやってこれだけの数を集めたのでしょう?

「実は全て、板東寛司さん、荒川千尋さんというご夫妻が個人で集められたコレクションなんです。元は群馬県の嬬恋にコレクションを展示するミュージアムがあったのですが、冬は豪雪地帯で、来られる方も限られていたのですね。すると来たお客さんがみなさん、『もっとたくさんの人に見てもらった方が良い』と仰られて。それで元々招き猫づくり発祥の地であったわが町にぜひ、と移転先として手を上げました。運営している私たちは中外陶園という地元の焼きものメーカーです。日本で一番多く招き猫を作っているんですよ」

メーカーさんが運営している博物館というのも珍しいですね。ただ、正直に言うと、あまり瀬戸に「招き猫」のイメージがなかったのですが…

「そうですよね。実は招き猫にも様々な変遷があって、時代や土地によってとっても表情豊かなんです。ひとつずつご紹介していきますね」

招き猫列島をめぐる

「招き猫は日本発祥の縁起物。江戸の町人文化の中から生まれました。浮世絵にも露天商が招き猫を売っている姿が描かれています。まず、右手、左手の違いはご存知ですか?右手がお金招き、左手が人招きの手ですね」

img_9395

「元々の招き猫は左手を上げていたそうです。そのうち右手上げも作られるようになり、当時人々は着物の左のたもとにお金を入れていたので、お金を出し入れをする右手を上げた招き猫をお金招きと呼ぶようになったようです」

なるほど。左右による意味の違いは後からできたんですね。

「発祥は諸説あるのですが、豪徳寺の白猫伝説は有名な話です。他にも浮雲伝説や金猫・銀猫など遊郭が舞台の話も多く、遊女がお客を手招きする姿を真似た、花街のお土産だったとも。江戸の花街で遊んだ旦那衆が郷里の奥さんに申し訳ないからと、お土産に買って帰るのが流行り、それが全国に伝わるきっかけになったという説です」

招き猫発祥にまつわる逸話は様々あるそうですが、どれも「猫の恩返し」の話だと言います。そちらも調べてみると面白そうですね。

「縁起物のひとつとして京都伏見稲荷の門前で売られるようになると、全国から参拝に来た人々が郷里へのお土産に持ち帰り、次第に全国各地でも様々な招き猫が作られるようになったと言われています。北の方は、色彩が鮮やかなんですね。伏見の招き猫は、やはりきつね顔です」

岩手県・花巻の招き猫。鯛に乗って、おめでた尽くし。

岩手県・花巻の招き猫。鯛に乗って、おめでた尽くし。

珍しい伏見の子持ち招き猫。ついそちらに目がいってしまいますが、確かに顔はきつね顔です。すごい迫力。

珍しい伏見の子持ち招き猫。ついそちらに目がいってしまいますが、確かに顔はきつね顔です。すごい迫力。

「黒猫の招き猫は、黒が魔除けや厄除けの意味を持ったためです。羽織りを着ているのは、猫を格上げさせるため」

img_9476
こちらも伏見人形の一種。座布団にも座って、人間のようです。

こちらも伏見人形の一種。座布団にも座って、人間のようです。

「この三河系土人形は、背中が塗られていないでしょう。これで完成なんです。なぜだかわかりますか?これは『質素倹約、無駄なことはしない』という三河の人間の気質なんですね。わざわざ裏まで見る人は少ないですからね」

かわいいだけじゃなく…

かわいいだけじゃなく…

ちらりと覗く背中に、産地の気質までわかってしまうとは。

ちらりと覗く背中に、産地の気質までわかってしまうとは。

「これは養蚕の盛んな地域で作られた招き猫です。お蚕の繭をネズミが食べてしまうので、本当は養蚕農家さんは猫を飼いたいけれど、すべての家が飼えるわけではありません。そこで張子の招き猫や猫の描かれた掛け軸を家に飾ることが、さかんに奨励されたそうです。養蚕で有名な群馬はだるまの産地でもありますから、だるまさんを抱えた招き猫もいますね」

土地の産業と結びついた、群馬の招き猫。いい顔です。

土地の産業と結びついた、群馬の招き猫。いい顔です。

地域ごとに、なんて個性豊かなのでしょう。ミュージアムには、何時間でも滞在して棚の前から離れない方もいらっしゃるそうですが、その気持ちもわかる気がします。

「伏見稲荷の門前で売られていた招き猫は、はじめひとつ一つ手作りでしたが、買い求める人が多くなると大量につくる必要から、石膏の型を使って焼きものを量産している瀬戸に白羽の矢が当たったそうです。明治30年代頃でした。初めて作るものですから、一体どんなものか、はじめは手探りでのスタートです」

そうして案内いただいた瀬戸の招き猫のゾーン。確かにちょっと、よく見かける招き猫と雰囲気が違います。

img_9446

「スリムで猫背、より本物の猫に近い姿ですね。当時伏見稲荷の門前の商人から注文を受けたこともあってか、ちょっときつね顔で、伏見の招き猫に似ているでしょう」

確かに先ほど見た伏見のものに、面影が重なります。

「一方で、三河の土人形と古瀬戸招き猫の流れを組んでいるのがこちら。見覚えありませんか?」

1 2 3
1⁄3
  • LINE

Follow us

全国の工芸・産地にまつわる読み物を毎日更新しています

さんち〜工芸と探訪〜の読み物は各種ソーシャルメディアでも配信中。 今すぐフォローして最新情報をチェックしよう!

関連の読み物

「さんち 〜工芸と探訪〜」がアプリ「さんちの手帖」として登場しました。記事を読むだけではなく、旅の栞や旅印帖として使える、あなたのおともになるアプリです。

  • App Storeからダウンロード
  • Google Playで手に入れよう

アプリの詳細を見る