さんち 〜工芸と探訪〜

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勘場蒲鉾店

向田邦子の思い出の薩摩揚

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「初めての土地に行くと、必ず市場を覗く。(中略)そんな一角にかまぼこ屋を見かけると、私は途端に落着かなくなる。(中略)揚げ立ての薩摩揚は、その土地なりにそれぞれおいしいのだが、私にとっての薩摩揚は違うのだ。三十六年前に鹿児島で食べたあの薩摩揚でなくてはならないのだから、始めから無理な注文に決まっている。」
『父の詫び上/薩摩揚』向田邦子(文春文庫)より

テレビドラマ「だいこんの花」「寺内貫太郎一家」「阿修羅のごとく」、エッセイ集『父の詫び状』をはじめ、数々の名作を残した脚本家で作家、エッセイストの向田邦子。東京生まれの彼女は、父親の転勤により小学校時代の2年間を鹿児島で暮らした。子どもから少女へと変わる思春期を過ごした鹿児島を「故郷もどき」と懐かしみ、毎日のように食べていたという薩摩揚は「過ぎ去った過去が生き生きとよみがえる」特別なものであった。

そんな彼女が好んで取り寄せていたのが、鹿児島県いちき串木野市にある勘場蒲鉾店の「つけあげ」である。

勘場蒲鉾店の薩摩揚げ

パッケージも鮮やかで目を引く

鹿児島県の郷土料理のひとつで特産品でもある薩摩揚。地元では「つけあげ」とよばれているが、薩摩藩時代、中国や琉球文化との交流から、魚肉のすり身を澱粉と混ぜて油で揚げた「チキアギ」が食べられるようになり、それがなまって「つけあげ」になったとも言われている。県内でも、いちき串木野市は、古くから水産練り製品加工業(さつまあげ・かまぼこ)が盛んで「さつまあげ発祥の地」とも言われている。

向田邦子が好んだ「つけあげ」は、いちき串木野産の特徴でもある豆腐が入り、ふわふわもっちりとした食感。噛むほどに甘味が広がり、シンプルながら味わい深く、いくつでも食べられてしまう。

おかずにもおやつにもなる「つけあげ」は、箸よりも手で食べるのが似合う。向田邦子のエッセイ片手につまんでみてはいかがだろうか。

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