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薩摩切子とは。幕末に生まれた「幻の切子」のあゆみ。江戸切子との違いは「ぼかし」にあり

投稿日: 2020年4月9日
産地:
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幕末の薩摩藩 (現在の鹿児島県) で生まれた薩摩切子。

作られていたのは、わずか20年あまり。彗星のごとく現れ、あっという間に姿を消してしまった幻のガラスは、時を経て現代に蘇った。

その美しさや歴史ドラマが今なお多くの人を惹きつけてやまない薩摩切子の世界を紐解いていく。

薩摩切子とは。浮かび上がる「ぼかし」に注目

薩摩切子とは、幕末に薩摩藩で生まれたガラス細工。透明ガラスの上に色ガラスを被せた「色被せ (いろきせ) ガラス」にカットを施した際に生まれる、「ぼかし」と呼ばれる独特のグラデーションが魅力である。

ぼかしが浮かび上がる薩摩切子

ぼかしが浮かび上がる薩摩切子

透明なガラスの上に色ガラスを被せたものを「色被せガラス」といい、その色ガラスの部分を削り取ることで、切り口に色のついた部分と透明な部分が生まれる。そこに現れる絶妙なグラデーションが薩摩切子の最大の特徴にして魅力である「ぼかし」である。日本で最初にこの技術に成功したのは当時の薩摩藩だった。

この「ぼかし」の美しさには、薩摩切子の厚みが関係している。

西洋の色被せガラスが型を使うのに対し、薩摩切子の場合は型を用いず、吹き竿に巻き取った透明なガラスの上から、別の窯で溶かした色ガラスを手作業で被せていく。このように型を使わない分、色ガラスの層は西洋のものに比べると何倍もの厚さになる。

厚い色ガラスの層から大きな角度で斜めに切り込んでいくと、下の透明のガラス層に近づくほどに色が透けていくため、濃色から透明色へと移り変わっていく絶妙なグラデーションが生まれるのだ。

ぼかしの見本。切り込みの角度や深さによって色の濃淡が変わっていきます

ぼかしの見本。切り込みの角度や深さによって色の濃淡が変わっていく

薩摩切子と江戸切子の違いは?

江戸の町民文化から生まれた江戸切子に対して、藩直轄で生まれ、発展したのが薩摩切子である。薩摩切子のように厚く色被せした素材を作ることは、当時の江戸の規模の小さい硝子屋にとっては困難なことであり、薩摩藩による大資本の投下によって薩摩切子独特の技術・特色が生まれた。

色被せの技法によって生まれる「ぼかし」が特徴の薩摩切子に対して、江戸切子は透明のガラスと色ガラスのコントラストがはっきりしているのが特徴だ。 (現在では江戸切子でも色被せの技術は使われている。)

また文様の構成にも違いがある。江戸切子はすっきりとした単文様のデザインが好まれるのに対し、薩摩切子では複数の文様を組み合わせたゴージャスなデザインが多く見られる。

面ごとに模様が違うのがわかります

面ごとに模様が違うのがわかる

薩摩切子といえばこの人。生みの親 島津斉彬

薩摩藩第27代藩主、島津斉興 (なりおき) の時代 (1846) に江戸のガラス技術が薩摩に伝播した。斉興は、ガラス製造の先を行く江戸から腕の良い職人をスカウトする。それが加賀谷久兵衛の徒弟で、ガラス職人として有名な四本亀次郎であった。

斉興の時代から始まったガラス製造は、薩摩藩第28代藩主、島津斉彬 (なりあきら) の代で急激な発展を遂げる。斉彬は亀次郎に薩摩切子を日本の特産品とすべく着色ガラスの研究にも着手し、様々な色 (紅・藍・紫・緑等) を発色させることに成功。

中でも日本初の発色に成功したガラスは「薩摩の紅ガラス」と呼ばれ、暗紅色のなかに透明感も併せ持つ「銅赤」は、薩摩切子を代表する色となった。

「薩摩の紅ガラス」

「薩摩の紅ガラス」

斉彬もこれを自慢に思い、将軍家への献上品や大名諸侯への贈答品に用い、評判を呼んだという。

しかし安政5年 (1858) 、島津斉彬は49歳という若さでこの世を去った。島津斉彬の死と共に、以降薩摩切子は衰退し、幻と言われるまでになる。

<関連の読みもの>
幕末の「下町ロケット」 島津家が世界に誇った薩摩切子の紅色

動乱の中で揉まれた薩摩切子の歴史

◯日本を豊かな国にするために。薩摩でガラス工芸品が生まれる

薩摩藩第27代藩主である島津斉興の時代に、薩摩でのガラス製造は幕を開けた。

当時薬品の腐食に耐えることのできるガラス瓶やガラス容器が必要だったため、医薬品用のガラスを作るために江戸から職人を招いたのが薩摩でのガラス製造の始まりである。

1858年、オランダの医師ポンペが薩摩を訪問した際にガラス製造部門には100人を超える人間が働いていたという記述も残っている。

第28代藩主島津斉彬は中国がイギリスに阿片戦争で敗北したことで、薩摩藩は欧米列強の脅威に立ち向かうため、軍備を強化するだけでなく、殖産興業にも力を入れることが重要だと感じていた。

オランダに詳しかった曽祖父・重豪の影響で、幼い頃から西洋文化に親しんできたこともあり、斉彬は殖産興業の1つとして薩摩独特のガラス工芸品、薩摩切子の製造を試みたのである。その後斉彬は藩主となったその年、銅粉を使用したガラスを透明な暗赤色に発色させることに成功。

この紅色 (銅赤) の切子は薩摩切子を象徴する色として将軍や諸侯へ贈られた。

◯技術の消失。表舞台から姿を消した薩摩切子

斉彬が49歳という若さで急逝し、薩英戦争 (1863) や明治維新、西南戦争 (1877) によって工場が焼失し、縮小すると、薩摩切子は一気に衰退の一途を辿り、ついには薩摩切子の製造・技術そのものが途絶えてしまった。

◯再興した薩摩切子

幻となった薩摩切子だが、約100年後、復興の動きが出てくる。島津家に残されているわずかな関連資料、集成館に収蔵されている薩摩切子を実測、写真のみを頼りに復元することが試みられた。

ついに鹿児島県の協力の元、1985年に鹿児島市磯に株式会社島津興業の「薩摩ガラス工芸」が設立され、紅色の発色にも成功し、薩摩切子が現代へ蘇ることとなった。

現在でも「薩摩ガラス工芸」では薩摩切子の生産が続けられている

現在でも「薩摩ガラス工芸」では薩摩切子の生産が続けられている

100年前の姿を取り戻した現在の薩摩切子

薩摩切子が知れ渡ることになった「紅ガラス」だが、この色を発色させるのは現代でも極めて困難である。また発色させたとしても同じ色合いを連続して出すことは困難であり、製品化すること自体が難しいとされてきた。

そんな中、株式会社島津興業の「薩摩ガラス工芸」が「紅ガラス」を復刻。販売も行なっている。ぼかしの表現が難しい黒の薩摩切子の製造も行われ、幻となった薩摩切子を現代に甦らせただけでなく、二色被せなど新技法の薩摩切子製作にも力を入れ、進化を遂げている。

島津薩摩切子の商品

画像出典元:島津薩摩切子

<関連の読み物>
幕末の「下町ロケット」 島津家が世界に誇った薩摩切子の紅色

ここで買えます・見学できます

薩摩ガラスが作られている薩摩切子工場

薩摩ガラスが作られている薩摩切子工場

現在「株式会社島津興業 薩摩ガラス工芸」では、薩摩切子の各工程を間近で見学できる工場の一般開放を行なっている他、併設のショップでグラスや花瓶など、工場で作られた実際の製品を購入することができる。

薩摩ガラス工芸
鹿児島県鹿児島市吉野町9688-24
http://www.satsumakiriko.co.jp/

島津薩摩切子オンラインショップ:
https://shop.satsumakiriko.co.jp/

薩摩切子の使い方と保管方法

◯使い方

薩摩切子は、急冷急熱に弱いため、直接熱湯を注いだり、大量に氷を注ぐようなことは避ける。 (※電子レンジ不可) 口縁の部分が比較的薄く作られているため、乾杯の際などはグラスの縁がぶつからないように注意したい。

◯洗い方

食洗機、乾燥機の使用は避け、スポンジか柔らかい布に食器用洗剤をつけて丁寧に洗う。

カットの入った部分は時々やわらかいブラシで洗うとよい。ぬるま湯ですすぎ、乾ききる前に布で水気を拭きとる。水垢などで表面が曇ってきたら、台所用漂白剤を水に溶かし、数時間つけておくと綺麗になる。

◯保管方法

収納する際は、ガラス同士が直接当たらないように気をつける。重ねて保管する場合には、器の間に紙か布を挟むとよい。

薩摩切子のおさらい

・誕生:1850年ごろ
・産地:鹿児島県
・代表的な技法:ぼかし
・伝統的工芸品指定:1997年に鹿児島県の伝統的工芸品指定を受ける

さらに「薩摩切子」を知る

<参考>

山口勝旦著『江戸切子』 (1993年)
『NHK美の壷 切子』NHK美の壷 制作班 (2007)
薩摩ガラス工芸(観光事業部)
https://www.shimadzu-ltd.jp/project/satsumakiriko/

<協力>

島津薩摩切子
http://www.satsumakiriko.co.jp/
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