さんちのオススメ産地 17 鹿児島県かごしま
概要
活火山と共にくらしてきたまち。多彩な自然と風土が歴史文化を構築
九州南端に位置し、薩摩半島と大隅半島の本土と、種子島、屋久島、奄美大島などの離島(薩南諸島)で構成された県。
年間の平均気温は18.5度と1年を通して暮らしやすい温暖な気候だが、南北で600キロメートルと長く、北部と南部では気候が大きく異なる。県北部の伊佐市の1月の平均気温は、山形県の酒田市とほぼ同じであるのに対して、県南部の指宿市は1月に菜の花が咲くほど暖かな土地である。離島は、温帯と亜熱帯にまたがっているが、九州地方最高峰の宮之浦岳がそびえる屋久島は、冷温帯の一面もあり、山岳部では毎年積雪が観測されている。3つの気候の特徴をもつ県は、世界的に見ても珍しい。
なお屋久島は、1993年に日本で初めて、世界自然遺産に登録された島である。
県のシンボルでもある桜島は、本土の薩摩半島と大隅半島の間の錦江湾に浮かぶ活火山としてそびえ立つ。日本有数の火山地帯であり、他に北部の霧島からトカラ列島まで11の活火山が分布しており、温泉の数も多い。泉源数も約2,730で、大分県に次いで全国2位。指宿では、砂むし温泉という砂の中に体を埋める珍しい入浴法が、300年前から湯治として県内外の人から愛されてきた。
主な産業は農業である。畜産や、水産も盛んであり、温暖な気候と風土がもたらす恵みの数は多い。旧国名を名に冠した薩摩芋は、県特有の火山灰の風土的影響もあり、栽培量日本一を誇る。料理用の他にも、飼料用、でんぷん用、芋焼酎用等、多種多様な品種が栽培されている。他に、お茶の品名にも県名が入るほど、お茶の産地としても有名だ。4月上旬から始まる新茶は、日本一早い「走り新茶」として親しまれている。
歴史ある文化の見どころも多い。討幕・維新に尽力した西郷隆盛や大久保利通といった県を代表する偉人たちが生まれたまちであり、今年は明治維新150周年にあたる。幕末当時の産業革命に多大な功績を残したことから、「旧集成館」「寺山炭窯跡」「関吉の疎溝」が、2015年に世界文化遺産に登録された。
またロケットの打ち上げ施設は、種子島宇宙センターと内之浦宇宙空間観測所の2か所あるが、鹿児島県にしかない施設である。
歴史
異国文化・伝来の地。近代化の幕開けは、明治へ導いた産業革命と西洋文化
鹿児島県で1番古いといわれている遺跡は、種子島の立切遺跡と横峯遺跡である。この地域には、約3万年前から人が住んでいたと推定されている。本土では、霧島市の上野原遺跡で約9500年前の竪穴式住居跡が多数発見され、人が村を形成して生活していた。
古代は、襲国(そのくに)と呼ばれ、熊襲(くまそ)や隼人(はやと)と呼ばれる人々が住んでいたことから、熊襲の地や隼人の地とも呼ばれていた。
8世紀には、旧国名の薩摩国(鹿児島県西半部)と大隅国(鹿児島県東半部と種子島、屋久島含む)の2つの国として分かれていた。
鹿児島の歴史を語るうえで、島津氏との関係は切り離せない。
鎌倉時代初期12世紀末に初代・島津忠久が薩摩・大隅・日向の3国の守護職に任じられて以降、徐々に勢力を伸ばし、16世紀後半には、薩摩・大隅・日向の一部に跨る領域の支配が認められた。
16世紀、日本の南玄関口として、古くから琉球を始め、中国、韓国、アジア太平洋地域の国々との交易が盛んだった。西洋の文化も入り、鉄砲やキリスト教が伝来した。その後、日本全国へとひろまっていった。また、17代当主・島津義弘が朝鮮に出陣した際に、陶工職人を連れて帰ってきたのが、薩摩焼の始まりとされている。薩摩焼は、のちの1867年に開催されたパリ万国博覧会で、薩摩藩が出品したひとつでもある。
江戸時代には、薩摩・大隅の2か国、日向国諸県郡の大部分を領有し、琉球王国を支配下に置いた薩摩藩となった。鎖国が崩壊した幕末の19世紀後半には、28代当主・島津斉彬が中心となり、積極的に西洋文化を取り入れ、近代化の幕開けとなった。反射炉・溶鉱炉や製鉄・造船・造砲・紡績・印刷・製薬など各種機械工場の建設を進めていった。また、豊かな国をめざした斉彬は、海外貿易品として、着色ガラスを研究させ、カットを施して模様を刻む、薩摩切子を誕生させた。
こうして日本をリードする大きな力を持つなか、西郷隆盛や大久保利通などの優秀な政治家も数多く輩出し、明治維新に大きく貢献することとなった。
明治4年(1871年)、それまでの藩を廃止し、薩摩藩は鹿児島県となった。
2011年には、鹿児島と博多を結ぶ九州新幹線鹿児島ルートが全通した。
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