さんち 〜工芸と探訪〜

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わたしの一皿 豊漁のさんまをつみれ汁に仕立てて みんげいおくむら 奥村忍による「わたしの一皿」 木漆工とけしの椀

投稿日: 2018年10月2日
産地: 沖縄
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今年はさんまが豊漁だ。安くておいしい。ありがたいことです。

秋の味覚のど直球。今月はさんまのお話を。みんげい おくむらの奥村です。

もともとさんまは大好物。5年ほど前でしょうか。秋口に北海道の根室に行ってさんまを食べた時、その別格の美味しさにおどろいて、もう二度と東京でさんまなんて食べるものか、と心に固く誓った。

が、結局帰って数日でさんまが恋しくなり食べてしまい、そこからズルズルと。

もう根室で食べたおいしさなんてどこへやら。でも毎回おいしいんだから、実に立派な魚です。ありがとう、さんま。

さんま

中国・台湾でも近年さんまをよく見かけるようになった。中国の内陸なんかでも焼いて食べているし人気があるようだ。マグロやサーモンから、徐々に魚の味覚も広がってきている。

未来、さんまは世界中で取り合いになり、高級魚になるのかな。そんな心配もしつつ、とりあえず今年はたくさん食べておこう。

もちろん焼いて食べるのが一番好きなのですが、さんまは青魚。いわしでおいしいレシピはさんまに置き換えてもやはりおいしい。

梅煮もよいし、パン粉焼きもよい、オイル煮も。今日はつみれを作ったので汁に仕立てて。

さんまをフードプロセッサーでミンチにする

つみれはフードプロセッサーを使えば簡単。本当はすり鉢で自分の本当に好みの加減でつみれを作ればよいのだけど、時間が掛かる。フードプロセッサーは本当にすごい道具。楽ちん。

今日は気を抜いていたら、ちょっとミンチしすぎました。本当はもう少しごろごろ感が強い方が好みなんです。でもまあいいか。

さんまのつみれ
さんまのつみれ

手で丸めて、指の間からポンと出したらスプーンでお鍋へ。

この一連の作業なんていうのは、実に楽しいもんです。何度やってもワクワクしちゃう。

今回はつみれ汁だけど、たっぷり作ってつみれ鍋もいいもんですよ。具沢山にして。

さんまのつみれ汁

今日、汁にあわせる椀は塗り物。うるしですね。沖縄の木漆工とけしの漆のお椀です。

「え?沖縄で漆?」と思った方。するどい。沖縄は漆のイメージがあまりないでしょう。いやいや、実は歴史が古い。

琉球漆器と言われ、王朝時代から続くすばらしい漆文化がある。その歴史を継ぐ工房もあるが、木漆工とけしはそれら琉球漆器とは別の文脈にある。

沖縄出身の渡慶次(とけし)夫妻は、それぞれが漆の名産地である輪島で木地師、塗師として修行し、沖縄に戻り工房を開いた。沖縄の人が沖縄の木で作る漆器。現代の琉球の漆器だ。

しかしはたして沖縄は漆器作りに向いているのか。意外に思うかもしれないが、答えはイエスだ。

一般的に輪島や会津、越前といった寒い地域の産地イメージが強いからだと思うのだが、漆というのは高温多湿で固まるので、沖縄はとても漆器づくりに向いている。

漆器の椀に入れたつみれ汁

今日はいつもと違って2つのうつわを用意。自分のものと我が子のもので、我が子のものも木漆工とけしのものである。

これは沖縄の、琉球張子の作家である豊永盛人さんが桃太郎の絵を描いたもので、別の面には犬・猿・キジが描かれている。この椀で食事を出すと我が子もいつもよりよろこんで食べる気がする。

木漆工とけしの椀に入れたつみれ汁

2つの椀を見ていると、つくづくも工芸は自由であってほしいと思えてくる。ただし、シンプルな椀のように静かでも力のあるもの。まずはこれが大事。

飽きず、ずっと使える。使うほど自分の手になじむ。そんなもの。そこにこんな表現が乗ると、これまたたまらない美しさになるのだ。

昨今、この順序が逆になったようなものをよく見かける。これはよくない。

この2つの椀は工芸のある種お手本のようなものだと思う。こんなものが世の中に増えてほしい、手に取る人が増えてほしい。

あれ、少し辛口?つみれに少し塩を多めに入れてしまったからな。




奥村 忍 おくむら しのぶ
世界中の民藝や手仕事の器やガラス、生活道具などのwebショップ
「みんげい おくむら」店主。月の2/3は産地へ出向き、作り手と向き合い、
選んだものを取り扱う。どこにでも行き、なんでも食べる。
お酒と音楽と本が大好物。

みんげい おくむら
http://www.mingei-okumura.com


文・写真:奥村 忍
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