さんち 〜工芸と探訪〜

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「花ブロック」の歴史をたどる。実は沖縄生まれの工芸品 沖縄県の花ブロックの80%以上を生産する、山内コンクリートブロックに聞く歴史

投稿日: 2018年7月5日
産地: 沖縄
編集:
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沖縄の建物といえば、赤瓦屋根と並んで特徴的なのがコンクリート造りの家。

沖縄の外壁はそれぞれ個性がありますが、代表的なデザインといえば「花ブロック」。

代表的な花ブロック

花ブロックとは、コンクリートブロックに空洞を作って柄をデザインした、沖縄生まれの建築素材です

どんなものがあるのか、街を歩いてみましょう。

ブロック塀として使われる

ひし形と波の形は、沖縄のみならず、全国で活用されているデザイン

バルコニーのあしらいで使われる花ブロック

正方形のブロックにデザインが施されているものが多くありました

バルコニーや屋上などの柵として使われることも

バルコニーや屋上などの柵として使われることも

沖縄県警察運転免許センターの壁に使われている花ブロック

沖縄県警察運転免許センターの壁に使われている花ブロック。カーテンウォールとして機能していました

建物に個性を与えてくれる花ブロック。沖縄県外でも目にしますが、沖縄ほどバリエーションがあり、多く使われている家はないように思います。どのような機能から重宝され、沖縄の暮らしに馴染んできたのでしょう。

県内の花ブロックの80%以上を製造する、合資会社山内コンクリートブロックでお話を伺ってきました。

合資会社山内コンクリートブロック 代表の安里享 (アサト ススム) さん

合資会社山内コンクリートブロック 代表の安里享 (あさと すすむ) さん

沖縄の「住まいの悩み」をブロックが解消した

「戦前、沖縄は木造建築ばかりでした。終戦後、米軍が軍の施設や住宅を作るために手動のブロック製造機を沖縄に持ち込みます。それを見て、アメリカからカタログを取り寄せて機械を自作した地元企業がありました。そして翌年には、沖縄で最初のブロック製造業者が創業します。

木造建築は度々台風で壊れてしまいますし、かといって金属は潮風で傷んでしまうため使えません。コンクリート建築は台風による被害に強く、シロアリにも蝕まれず、潮風にも影響されません。それまでの沖縄の住まいの悩みを解消してくれる素材だったのです。

また、セメントや砂など主要原料が地元で調達可能で、小規模の生産設備でも製造ができました。沖縄にとって複数の好条件がそろい、戦後の復興期に生産が急拡大していったのです」

強い日差しを和らげたコンクリートブロック

「亜熱帯気候の沖縄は、日差しがとても強いです。日差しを和らげ、影を作って風を通そうという考えのもと、ブロック塀が広がったと言われています。

最初は、ただ積み上げられただけのブロック壁でした。しかし、それでは家の中に光が入りません。そこで、ブロックの積み方を変えて穴が見える形にし、強い日射しを遮る一方で、穴から柔らかい光と風を取り入れられるようにしました。これには、外の景色が入り込む開放感を残しつつ、人の視線も適度に遮断しプライバシーを確保する働きもありました。

さらには、その穴を四角や丸に変えてデザイン性を高めた方がいました。沖縄を代表する建築家のひとり、故・仲座久雄さんです。こうして、実用性と美観を兼ね備えた花ブロックが生まれ、広がっていきました」

適度な日陰を作りながら風と光を取り込む

適度な日陰を作りながら風と光を取り込んだ美しいバルコニー。沖縄は気温も湿度も高いですが、海に囲まれているため爽やかな風が吹く地域。ひとたび日陰に入ると心地よい「涼」を感じられます (撮影協力:あいレディースクリニック)

同じ建物を外側から見たところ。レースのようなデザインが涼しげでありつつ、プライバシーを担保する機能も担っていることがわかります

同じ建物を外側から見たところ。レースのような透け感が涼しげでありつつ、プライバシーを保護する機能も担っていることがわかります (撮影協力:あいレディースクリニック)

花ブロックのデザインは100種類!

街を歩いていると、珍しいデザインの花ブロックに出会うこともあります。いったいどれくらいの種類があるのでしょうか。

「創業当時は3〜4種類ほどでしたが、お客様の要望で独自の型を作ってきた結果、100種類近くまで増えました。商業施設やマンション、リゾートホテルなどで様々なオリジナルデザインを見つけていただけると思いますよ」

新しいデザインの花ブロック

新しいデザインの花ブロック。波をモチーフにしています

新しいデザインの花ブロック

前後で傾斜がついた奥行き感のあるデザインもありました

「お客様の要望で」と一口に言う山内コンクリートさんですが、その成形の裏側には見えない苦労が多くあるのだとか‥‥。

「花ブロックは、セメントと潮抜きした海砂、強度を高めるための砕砂 (さいさ=天然の岩石を細かく砕いて作った砂) を混ぜ合わせたものを型に流し込み、形を整えプレスし、型から外した後に一晩乾燥させて完成します。

コンクリートは強度と作りやすさのバランスを考えながら、混ぜ合わせる水分量を決めていきます。

強い日差しの中での強度を担保するためには、水分量を少なく調合する必要があります。水分が多いと、日差しで乾燥した時にひび割れてしまうのです。

生コンクリートのように水分が多いと型の隅々まで流し込ませやすく成形しやすいのですが、ブロックのパサパサした原料の場合、なかなかそうはいきません。そのため、細かいデザインの場合には苦戦します。

型から抜き取りやすいように、少し傾斜をつけてもらうなど、建築士の方やデザイナーさんと相談しながら、形を作ってきました」

乾燥した砂のような原料を型に流し込み、プレスして形を作ります

乾燥した砂のような原料を型に流し込み、プレスして形を作ります

棚に置いて、一晩乾燥させます

棚に置いて、乾燥させます

成形された花ブロック
編み物のように立体感のあるラインが折り重なるデザインは、製造が特に難しいのだそう

編み物のように立体感のあるラインが折り重なるデザイン。製造が特に難しいのだそう。製造工程のお話を思い出しながら眺めると、ため息が出ますね

地域の工芸と結びついたネーミング

ところで、なぜ「花」ブロックという名前なのでしょう?花の形をモチーフにしているものばかりではないように感じました。

「このことに関しては、立命館大学の磯部直希先生が研究をされています。

その仮説によると、花ブロックは『花織 (はなうい) 』に代表される、琉球王国時代の織物から来ているのではないかと考えられています。

花織の『ハナ』は植物の花の形を表しているのではなく、文様やパターン自体を意味する語として用いられているものです。花ブロックの『花』も、テキスタイルの豊かさに近く、工芸的な側面を持つと言えるのではないか、というのが磯部先生の説です」

古くからある花ブロックの名称を見ていると、たしかに織物を想起するものが出てきます。

「カスリ」という名前の花ブロック。織物の絣のデザインからの連想で生まれたのだそう

「カスリ」という名前の花ブロック。織物の絣のデザインから着想を得て生まれたのだそう

建築家の内井昭蔵さんデザイン。沖縄を代表する織物のミンサー織がモチーフになっているそう

沖縄を代表する織物の「ミンサー織」がモチーフになっている「M」シリーズ

沖縄で長きにわたり親しまれてきた花ブロックは、いま改めてその美しさや機能が見直され、各地でデザインに取り入れられています。コンクリート壁に個性と表情を与え、涼空間を生み出してくれるため、県内にとどまらず、全国から問い合わせがあるそうです。

東京でも、スカイツリーや渋谷ヒカリエなどの商業施設で取り入れられています。他にどんな場所で使われているかな?と意識して歩いてみると、近くの住宅街でも見つけることができました。

沖縄の住まいの工夫から生まれ、琉球時代から続く工芸品の美意識を取り入れてデザインが磨かれてきた花ブロック。成形の難しさを乗り越えて今ここにあると思うと、なんだか愛おしく感じます。

この町にはどんな花ブロックがあるだろう?と、いろんな場所で探してみたくなりました。

<取材協力>
山内コンクリートブロック
沖縄県西原町字小那覇1184-1
098-945-1542
https://www.yamauchi-cb.jp/

<撮影協力>
沖縄県警察運転免許センター
あいレディースクリニック

<参考文献>
「仲座久雄と「花ブロック」 ―戦後沖縄にみる建築と工芸― 」(2014年 磯部直希)
「戦後沖縄における『花ブロック』の変成 ―研究動向の整理と現地調査報告―」(2015年 磯部直希)
「沖縄建築士」創刊号 (1957年 沖縄建築士会)




文:小俣荘子
写真:武安弘毅
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