さんち 〜工芸と探訪〜

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細萱久美が選ぶ、生活と工芸を知る本棚

細萱久美が選ぶ、生活と工芸を知る本棚『城一夫 日本の色のルーツを探して』

投稿日: 2017年12月3日
産地: 未分類
タグ:
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こんにちは。中川政七商店バイヤーの細萱です。

生活と工芸にまつわる本を紹介する連載の六冊目です。今回は、「日本の色」についての書籍を取り上げます。

日本の工芸にも「ジャパンブルー」と呼ばれる藍色や漆の赤、かつての奈良晒の白など、日本独自の色があり、工芸の表現においても色は大きな要素となっています。

著者の城一夫さんは、色彩文化と模様文化を専門に研究されている教授で、色にまつわる多数の著書があります。この本では「日本の色の成り立ち」と「日本の色の系譜」について、色鮮やかな写真や絵を多用し、読みやすい構成になっています。また、自分の好きな色についてのページを拾い読みする楽しみ方もあります。

色鮮やかな麻の布

日本の色の成り立ちについては、専門家ならではの歴史、宗教、文化などを絡めた学術的な内容で、さらっと読むというよりは「学ぶ」というような印象があります。ただ、「日本の古代社会では『黄』は概念としては存在していなかった!」など、私には“初耳学”も多く新たな知識を得られるのではないかと思います。

各色の系譜解説は、赤、青、白、黒、金、銀など主たる10色あまりと、「婆娑羅色 (ばさらいろ) 」が日本の伝統色彩色の中でも、異彩を放つ存在として取り上げられているのも興味深い点です。

いずれの色も古代から現代においての使われ方や意味合い、流行りがよく分かります。

例えば婆娑羅についてですが、織田信長や豊臣秀吉、伊達政宗など天下を掌握した武将たちが好み、城や衣装に取り入れました。信長のワインカラーのビロードの陣羽織や、秀吉の金や真紅の陣羽織は多くの人のイメージにあると思います。

現代の婆娑羅と言えば、サイケデリック。1960年代、アメリカを中心にさまざまなポップアートやサイケデリックアートが出現し、日本でも反モダニズムアートとして横尾忠則、粟津潔などによる、日本的なモチーフを使いながらもサイケデリックな色彩を使用したポスターで、新しいバサラを表現したとされています。

色とはなにか?

ところでそもそも、「色」とは何でしょう。回りを見渡すと、色の無いモノがほぼ無くて、特に人工物の色があふれていますね。

いわゆる「モノ特有の色彩」という意味以外に、昔も今も好色や情緒などの意味でも使われたりしますが、「色は匂へど散りぬるを‥‥」で知られる、平安時代の「いろは歌」の流布によって、色はモノの色という意味が強くなったそうです。

先に書いたように、古代日本では「キ」の概念はなく、「アカ」「クロ」「シロ」「アカ」の4つがありました。元々は「光」の色から生まれたとされ、夜明け、闇、夜が明けてハッキリ見える頃、明と暗の中間(青みがかった状態)を表していたといいます。

それ以外にも数多くの色名はありましたが、紅・紅梅色・桜色・刈安・緑・藍・朽葉など、植物や鉱物からの転用が主でした。

日本人は古来から自然崇拝の信仰がありますが、色彩に関してもそれは色濃く表れています。中川政七商店でも、手績み手織りの麻生地の染色名に、丁字・舛花・海松藍・刈安などと言った日本の自然からとった伝統色名を使っています。

手績み手織りの鮮やかな麻生地

「黄」が色名として認識されるようになるのは、6世紀頃、中国から仏教、儒教とともに「陰陽五行説」という思想が導入されてからになります。

この思想は、宇宙は「陰陽」と「木、火、土、金、水」の5元素からなり、この5元素が独自の循環をしているという考え方です。この5元素は、宇宙の森羅万象、すなわち色彩・方位・季節・星座・内臓等々に対応して配当されています。

色彩で言えば、「青、赤、黄、白、黒」の順に対応し、「春、夏、土用、秋、冬」と関連付けられています。これによると黄は中心にあり、重要な位置を占めています。

なかなかすぐには理解しづらい思想ですが、黄が登場し5元素がベースになる発想はなるほどという感じなのでぜひ本書をご覧ください。

聖徳太子も大事にした「色の世界」が、いまの暮らしにも

わが国でも陰陽五行説は国家経営の基本理念として取り入れられ、聖徳太子はこの思想に従って冠位十二階を制定しました。後に民事催事にも取り入れられ、日本の生活文化の中でも定着していきました。寺院催事の五色幕、五節句の祝、正月のお節料理、五色豆など五行思想が其処此処に見ることができます。

日本文化の特徴のひとつは外来の文化を取り入れて、それを自分のものとして咀嚼し、自国の風土に合ったものとして作り変えていくことにあります。

近世までは、特に仏教、禅宗、キリスト教などの宗教の伝来は色彩にも大きく影響を与えました。禅宗の理念は多彩な色彩を否定して黒(墨)1色で表現する禅宗文化となり、水墨画や枯山水が生まれました。キリスト教文化は一気に鮮やかな色をもたらし、文明開化は色彩開化でもありました。

思想や精神性が文化の形成に結びつき、ストレートに色彩に表れる事象は改めて興味深く感じました。

現代でも海外の文化との融合は活発ではありますが、かつては西洋文化の輸入がほとんどだったのが、最近ではクールジャパンなど、日本の文化が海外に影響を与えるケースも増えています。

そこに色彩の影響まであるのかは分かりませんが、一つの視点として見てみるのは面白いかもしれません。


<今回ご紹介した書籍>
『日本の色のルーツを探して』
城一夫/ パイ インターナショナル



細萱久美 ほそがやくみ
東京出身。お茶の商社を経て、工芸の業界に。
お茶も工芸も、好きがきっかけです。
好きで言えば、旅先で地元のものづくり、美味しい食事、
美味しいパン屋、猫に出会えると幸せです。
断捨離をしつつ、買物もする今日この頃。
素敵な工芸を紹介したいと思います。

文:細萱久美
写真:木村正史、山口綾子
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