さんち 〜工芸と探訪〜

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奈良クラブ ボードメンバー

“工芸の再生請負人”中川政七がサッカークラブの代表に転職!人・街を変える教育事業に挑戦

投稿日: 2019年1月4日
編集:
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奈良からJリーグ入りを目指す、JFL (日本フットボールリーグ) 所属のサッカーチーム「奈良クラブ」。

NPO法人奈良クラブは11月26日、2019年シーズンに向けて新法人設立とともに新体制となることを発表しました。

“工芸の再生請負人”が、サッカークラブの代表に

新法人「株式会社 奈良クラブ」の社長には、“工芸の再生請負人”、中川政七氏が就任。

同氏はこれまで、「日本の工芸を元気にする!」をビジョンに掲げる工芸メーカー、中川政七商店を率いてきました。

中川政七氏(奈良クラブ 代表取締役社長 /中川政七商店 代表取締役会長 )

中川政七氏(奈良クラブ 代表取締役社長 /中川政七商店 代表取締役会長 )

中川氏は、江戸時代から続く家業を継いだのち、工芸業界ではじめて製造から小売までを自社で行うSPA業態を確立。入社当時4億円だった年商を52億円まで伸ばした経営者。

そのノウハウを生かして、2009年には工芸業界特化型の経営コンサルティングを始め、これまでに全国16社の再生に貢献してきました。

また、工芸を元気にするためには、個社のコンサルティングだけでなく、工芸の産地そのものを盛り上げていくことが必要不可欠という考えのもと、新潟県三条市、佐賀県、福井県、そして創業の地・奈良で、地域の事業者やクリエイターを対象にした経営塾も開講しています。

コンサルティング第1号となった長崎県の陶磁器メーカー、マルヒロの「HASAMI」

コンサルティング第1号となった長崎県の陶磁器メーカー、マルヒロの「HASAMI」

コンサルティング先など志を同じくする全国の工芸メーカーとともに開催した合同展示会「大日本市」

コンサルティング先など志を同じくする全国の工芸メーカーとともに開催する合同展示会「大日本市」

2015年に会社としてポーター賞、2016年には日本イノベーター大賞優秀賞を受賞。

取り組みが世間に知られるとともに、同氏はいつしか「工芸の再生請負人」と呼ばれるようになりました。


そんな中川氏が、なぜサッカーの世界に?

「工芸メーカーの経営も、サッカーチームの経営も本質的には同じ」

中川氏はこう語ります。

「経営のステージが変わっても、ビジョンを掲げ、立場の違う者同士の共通言語を作り、理想の姿を実現するために取り組んでいくことは同じ」

ものづくりとマネジメントが両輪として回る仕組みを作っていくように、サッカーの現場とマネジメントがしっかりと絡み合い機能していくことを目指すのだそう。

そこには、プロの経営者として自社の取り組み、工芸メーカーのブランディングを通じて確立された考えがありました。

東京・南青山で開催された奈良クラブの新体制発表会を訪れて、詳しく聞いてみることに。

「サッカーを変える 人を変える 奈良を変える」

「N.PARK DAY」と題された発表会イベントでは、奈良クラブの新たな指針や未来構想がボードメンバーによるトークセッション形式で語られました。

「N.PARK DAY」

12月9日に開催された「N.PARK DAY」。奈良クラブのロゴ「N」は平城京がデザインのベースになっています

登壇者は、代表取締役社長に就任した中川氏、NPO法人 奈良クラブを理事長として牽引してきた代表取締役副社長の矢部次郎氏、欧州最高峰のサッカー指導者養成機関に在籍中の若手指導者でGMに就任した林舞輝氏、クリエイティブディレクターに就任した有限会社BACH代表でブックディレクターの幅允孝氏の4名。

奈良クラブ ボードメンバー

左から中川政七氏、矢部次郎氏、林舞輝氏、幅允孝氏

新しい奈良クラブの掲げるビジョンは、「サッカーを変える 人を変える 奈良を変える」。

サッカーを通じて人の成長に寄与し、人を変えることで奈良に良いコンテンツを数多く生み出す。その結果として奈良がより魅力的な街になることを目指していくとのことです。

「変わる」=「学び」と「勇気」

人が変わるために必要なことは「学び」と「勇気」。

奈良クラブは世界最先端のサッカー解析と地域に根ざした日々の活動を通じて“ 学びの型”と“ 一歩踏み出す勇気”を伝えていきたいとしています。

学ぶことで、上手くなるコツが得られます。自分に足りないことに気づき、それをどう解消していくか。アメリカには、「学習学」という学び方の学問があるのだそう。

日本でも、室町時代に能楽師の世阿弥によって書かれた「風姿花伝」に“守破離”という学びの型が登場することが紹介されました。

こうした学び方、学びの型を教えていく「教育」に重きを置くとのこと。

「選手たちはもちろん学びを通じてサッカーを高めていきますが、選手たちの変わっていく姿を多くの人に見せていけたらと思っています。

見ているお客さんは奈良クラブのやり方を見てどういう風に人間は成長していくのか?を知ることもできます」と選手と観客の関係も語られます。

奈良クラブのクラブハウスには、ブックディレクターで今回クリエイティブディレクターに就任した幅氏による、選手のためのライブラリーが作られました。元々学びに関心のあった、副社長の矢部氏による依頼であったそう

奈良クラブのクラブハウスには、ブックディレクターで今回クリエイティブディレクターに就任した幅氏による、選手のためのライブラリーがあります。新体制となる以前に、元々学びに関心のあった副社長の矢部氏の依頼によって作られました。「本も学びの1つのアプローチ」と幅氏

学びの取り組みの一環として、これから毎週水曜日の夜は、中川氏とGMの林氏による勉強会が開催されます。社会の構造を知り、生きるすべを学ぶ。サッカーのみならずビジネスのことなど幅広く学べる機会です。

この勉強会は、選手はもちろんのことスタッフや地域の子供達や社会人も受講できる場にしていく計画なのだそう。地域やファンを巻き込んで共に学んでいくのが奈良クラブのスタイル。なんとも羨ましい取り組みです。

そのほかにも、試合後に林氏によるゲーム解説の場を設けることも企画中なのだとか。

サッカーの知識が増えると見所が増え、より試合を楽しめるようになるといいます。これも面白そう。

GMの林氏 (左) とクリエイティブディレクターの幅氏。トークセッションは和やかな雰囲気のなか進みました

GMの林氏 (左) とクリエイティブディレクターの幅氏。トークセッションは和やかな雰囲気のなか進みました

「奈良クラブをモデルケースにしながら、地元の人々が自分自身の暮らしにその学びを生かしていってくれたら。

そのためにも、試合でも結果を残していかなければ」

ボードメンバーたちが率直な気持ちを語ります。

奈良がポートランドを超える日

サッカーと人を変えることに加えて、ビジョンに掲げられたのは「奈良」を変えること。

中川政七商店が300周年を迎えた2016年「中川政七」を襲名した中川氏。襲名披露の壇上で「今後10年、地元・奈良に力を注いでいくこと」を宣言していました。

「言ったからには、想像を超えていく奈良ブランティングをやる。

20年前は誰も知らなかったポートランドが、今や世界的に有名な都市になったように、世界にその名が響き渡るほどの圧倒的な奈良を見せなければいけないと思っています」

とも語っています。

まさに奈良クラブでやろうとしていることは、地域を元気にすることとも通じているのですね。

地域の人々が集まれる場を育てたい

奈良クラブ創設者で副社長の矢部氏は、「奈良クラブ」の名前に「FC」やサッカーチームとしての個性を表すキーワードをあえて付けないことを守り続けています。その根底にあるのは、総合型地域スポーツクラブの概念。

サッカーを中心として活動しつつも、サッカーだけにこだわらず地域の人々が集まれる場を育てていきたい。そんな思いがありました。矢部氏の大切にしているこの考えを中川氏も全力で支える意思で、経営を引き受けたのだそう。

中川氏と矢部氏

そこで生まれたのが「N.PARK構想」。

将来的には、街の中心にサッカー練習場、クラブ、スタジアム、その周りに人が集う様々な施設がある広場を作ることを目指しています。

実は、奈良県は世帯所得が高く、東大・京大合格率で全国一、二を争う教育レベルの高さを誇っています。歴史を遡れば元祖マルチタスクの聖徳太子にたどりつく奈良。元々「学び」と親和性の高い地域なのです。広場づくりの根底にあるのはもちろん「教育」。

今回の発表会の会場は、緑豊かな広場のような場所。ボードメンバーの語るN.PARK構想を体で感じられる会場でした

発表会の会場前には、緑豊かな広場が広がっていました。ボードメンバーの語るN.PARK構想を体で感じられる空間です

「学びの都として奈良を世界に知ってもらえたら」そんな思いが込められています。

「そのためにも、サッカーで勝ち進みJ1に上がることを目指します。5年でJ2、10年でJ1であっと言わせたい」



「JFLの試合は、動画放送がありません。現地でなければ見られないんです。

みなさん、次回は奈良でお会いしましょう。ぜひ試合を見に来てください!」

明るい呼びかけの声と共に、奈良の未来を描くトークショーは締めくくられました。

奈良クラブ ボードメンバー

「学ぶことは、楽しめることを増やすこと」。

サッカーについて知識の乏しかった筆者も、トークセッションでの解説や取り組みを聞くことで、じわじわとサッカーに興味が湧いて来ました。奈良という街に対しても同じです。

「奈良に試合を見に行ってみたいな」、さっそくそんな気持ちになりました。

奈良で始まる、新しい取り組み。ワクワクしながら応援していきたいと思います。

奈良クラブ
奈良市神殿町667-1 ウズシオパーク1F
http://naraclub.jp/

文:小俣荘子
写真:西木戸弓佳・小俣荘子
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