さんち 〜工芸と探訪〜

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色の名

はじまりの色、晒の白

投稿日: 2016年11月13日
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こんにちは。さんち編集部の尾島可奈子です。きっぱりとした晒の白や漆塗りの深い赤のように、日用の道具の中には、その素材、製法だからこそ表せる美しい色があります。その色はどうやって生み出されるのか?なぜその色なのか?色から見えてくる物語を読み解きます。

はじまりの色、晒の白

白という色は日の光と密接に関わっています。古代に存在した日本語の中で、色を指す言葉はもともとたったの4色だったそうです。それはアカ(明ける意)、クロ(暮れる意)、アヲ(生ふ、あふぐから転じて、うっすらと明るい、漠たる感じを示す)、そして明けた空が白んでいく、シロ。その新しい1日の始まりを司る色を人々が特別な色として捉えてきたことは、洋の東西を問わず聖者や神様が白い衣をまとっていたり、花嫁衣裳や亡くなった人に着せる死に装束が多くは白であることからも想像に難くありません。

そんな白を人工的に作り出すのは至難の技。もともと「日に当てて干す」という意味を持つ晒は、転じて布を白くすること、そうして白くなった木綿や麻布そのものを指すようになりました。とは言え、日に当てるだけで布が白くなるわけではないようです。

江戸時代に記された百科事典『和漢三才図会』(1713年)は、晒布の産地として大和国奈良、出羽国最上、山城国木津、近江国高宮、能登国阿部屋と宇出津、伊賀国高岡と石動(いするぎ)、越前国府中、周防国、安芸、豊州を挙げています。その製法は、織物を灰汁と石灰でたいて不純物を取り除き、石臼で搗いて柔らかくして…と、大変手間のかかるもの。最後の仕上げの工程が土地によって異なり、天日干し、雪晒し、水晒しと大きく3種類に分かれます。

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寛政元年の『南都布さらし乃記』に見られる奈良の晒し場の様子。

 

中でも水晒しの、大和国奈良の奈良晒は、上質な麻織物として主に武士の裃、僧侶の法衣に、また白さを好まれて茶巾にも用いられ、産業として栄えました。各地の名産・名所を描いた『日本山海名物図会』(1754年刊行)は奈良晒を褒めて「近国よりその品数々出れども染めて色よく着て身にまとわず汗をはじく故に世に奈良晒とて重宝するなり」と語ります。白さは色とりどりの美しい染めのスタートラインでもあったわけですね。

「日に当てて干す」という原始的な所作を起源に、いくつもの手間と技術を駆使して生み出された「晒」生地は、まさに日の光のようなきっぱりとした白色。それは古くから人があらゆる物事の原始の色として尊んできた色であると共に、様々な染色の出発点でもありました。これからの色をめぐる冒険にふさわしい、まさにはじまりの色といえそうです。

文 尾島可奈子

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