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体感温度を2度下げるポータブル冷房。その名も、うちわ。 生産量9割を占める丸亀で、改めてうちわのことを知る

投稿日: 2018年7月21日
産地:
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猛暑ですね。

今日は少しでも涼しい話を。と、夏の風物詩「うちわ」のことを話します。

年間約1億本が生産されているという、うちわ。エアコンや扇風機などの冷却装置がある中で、思っていたよりも多い数字に驚きました。

震災の影響もあってか“電気を極力使わずに涼をとる工夫”に注目が集まっているのでしょうか。いま改めて、昔から伝わる日本の知恵、うちわのことを見直してみたいと思います。


うちわのことなら丸亀へ

讃岐うどんでも有名な、香川県丸亀市。実は、国内うちわの9割が丸亀で生産されているそう。国産うちわを見たら、ほとんどの場合で丸亀出身だと考えて良さそうです。

うちわのことを学びに、丸亀市にある“うちわの港ミュージアム”にお邪魔しました。

“うちわの港ミュージアム’という名前の通り、港沿いにあります

“うちわの港ミュージアム’という名前の通り、港沿いにあります

丸亀うちわは、国指定の伝統工芸品

日本の夏の風物詩うちわですが、丸亀うちわは国が指定する「伝統的工芸品」にも選ばれているれっきとした“伝統工芸”です。

※「伝統的工芸品」とは、製法・技術・原料・産地などの条件に沿って、経済産業大臣が指定した工芸品のこと

こんなにも、全国的に身近な工芸品もなかなかありません。昔から長く使い続けられる身近な工芸品というだけあり、そこには暮らしの知恵が詰まっています。

改めて考える、うちわの魅力

とても今さらな話ですが、うちわの魅力は何といっても涼がとれること。本当に涼しくなるのかというと、実際に体感温度が2度下がるのだとか。驚きです。

体の表面の熱が奪われることで、人は「涼しい」と感じます。体の表面にある水分が気化するときに熱を奪っていくのですが、うちわであおぐことでよりその気化がより進んで、多くの熱を奪うことができる、という原理に基づいているようです。昔の人は感覚的に、それを知っていたのかもしれません。

次に思い浮かぶのは、台所でのうちわ。やはり「冷ます」時に便利です。

特に野菜は、うちわを使うとより美味しくなるような気がします。ブロッコリーやほうれん草のような青菜を茹であげてから、冷水にあげて色止めするのではなく、ちょっと頑張ってうちわで冷やす。すると、野菜の旨味がしっかり感じられて美味しいなと思います。

また、お弁当が傷まないよう冷ます時にもうちわの存在は欠かせませんね。

また、風鈴で風の音を聞いて涼むように、見た目で涼むことができるのもうちわの良さ。緩やかに風を送る姿には美しさがあります。

また、うちわを見ると夏が来たなぁと思うのは、日本の夏の風物詩の一つである証。どれだけ便利な冷却装置がでてきても、無くならないものなのだろうと感じます。



400年以上前に生まれた丸亀うちわ

丸亀うちわの始まりは、約400年前。徳川家光時代の1633年頃、丸亀藩主が製造を開始。金毘羅(こんぴら)参りのための船でにぎわう丸亀港で、お土産品として売り出されていたそうです。

その後、1700年代に丸亀藩の武士の内職としてうちわ作りが奨励されたことで、発展は加速。産地としての基盤を作っていったようです。


「伊予竹に 土佐紙貼りてあわ(阿波)ぐれば 讃岐うちわで 至極(四国)涼しい」

四国で歌い継がれているこのうたは、丸亀はうちわ作りに必要な材料がすべてを近くで揃えられることを歌っています

これも、丸亀でうちわ作りが発展した理由のひとつ。「伊予竹」の竹は伊予(愛媛)、「土佐紙」の紙は土佐(高知)、ノリは阿波(徳島)というように、近くに産地が揃っていることことが強みとなり、現代まで受け継がれています。



手仕事による、47の製造工程

丸亀うちわができるまでには、なんと47もの工程があります。

大きく分けると、「骨」づくりと「貼り」。そのほとんどを、今でも職人さんの手作業で行っています。それも、一人の職人さんが、すべての工程をすべて行うことも多いのだそう。

お話をうかがった “うちわの港ミュージアム” で実演をされていた長谷川さんもそのおひとり。

うちわの「骨」となる部分の製造工程を見せて頂きました。

持ち手の部分を作る工程。筒状から一定の幅に割った竹の、内側を削り取る。この幅の調整によって、握りやすさが変わるのだそう。

持ち手の部分を作る工程。筒状から一定の幅に割った竹の、内側を削り取る。この幅の調整によって、握りやすさが変わるのだそう。

「穂」と呼ばれる、うちわの面の部分の土台を作る工程。「切り込み機」で35〜45本の切り込みを、ものすごい速さで入れていく。印がある訳では無いのに、等間隔で仕上がるのが熟練の技。

「穂」と呼ばれる、うちわの面の部分の土台を作る工程。「切り込み機」で35〜45本の切り込みを、ものすごい速さで入れていく。印がある訳では無いのに、等間隔で仕上がるのが熟練の技。

熟練した職人さんは、竹を割る作業からここまでの工程を1日で数百本も行うのだとか。

熟練した職人さんは、竹を割る作業からここまでの工程を1日で数百本も行うのだとか。

面となる部分を編んでいく工程。「子どもでもできる簡単な工程」と作り手の方はおっしゃいましたが、真っ直ぐ編むのはなかなか難しそうです。

面となる部分を編んでいく工程。「子どもでもできる簡単な工程」と作り手の方はおっしゃいましたが、真っ直ぐ編むのはなかなか難しそうです。

編んだうちわの骨に形を付け、編みを美しく調整していく工程。「付(つけ)」というこの工程は、昔は「付師」がいたほど年季のいる作業なのだそう。

編んだうちわの骨に形を付け、編みを美しく調整していく工程。「付(つけ)」というこの工程は、昔は「付師」がいたほど年季のいる作業なのだそう。

ここまでで、うちわの「骨」が完成。

職人さんの早業に簡単そうに見える作業も、体験させていただくととても難しく全くうまくいきませんでした。

お話をお聞きした長谷川さんは、うちわを作りはじめて13年目。「でも、まだまだです。職人だなんて、言えません」とおっしゃいます。それだけ、高い技術が必要な丸亀うちわ作り。47の工程をすべて完璧にやるには、何十年の修行が必要なのだとか。

「プラスチックのうちわと違って、竹のうちわはしなりがいい。所作も美しいし、柔らかい風が送れます」と、最後に教えてくださいました。確かに、これだけたくさんの職人技が詰まったうちわの風は、気持ちがいいに決まってます。今年の夏は、伝統的工芸品・丸亀うちわで涼をとるのはいかがでしょうか。





<取材協力>
丸亀市うちわの港ミュージアム
香川県丸亀市港町307−15
0877-24-7055





文・写真 : 西木戸 弓佳


この記事は2017年春の記事を再編集して掲載しています。適度に体から熱を逃し、この猛暑を乗り切りましょう。
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