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人気のマスキングテープ「mt」を生んだ “和紙の透け感がかわいい”という感覚 文房具としてのマステを世に広めた カモ井加工紙の「mt」

投稿日: 2018年12月15日
産地: 倉敷
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みなさんには「手離せない文房具」はありますか?100均やコンビニでも手軽に買える文房具ですが、自分にあったものとなると、なかなか出会えないものです。

そんな中で、ノートはこれ、万年筆はこれ、と指名買いされる文房具があります。手離せない理由はどこにあるのか?身近で奥深い、文房具の世界に分け入ってみましょう。

人気文房具マスキングテープを世に広めたカモ井加工紙の「mt」

人気文房具のマスキングテープ。

その使い方は実に幅広く、専門の本まで出るほど。

今となっては、当たり前のように文房具コーナーに色とりどり、柄もさまざまなマスキングテープが並んでいますが、もともとマスキングテープって文房具ではなく、業務用の道具だったのをご存知ですか?

その誕生の秘密が知りたくて、文房具としてのマスキングテープを世に広めたカモ井加工紙株式会社さんにお話を聞いてきました。

マステ「mt」の秘密その1、原点はハイトリ紙

マスキングテープのシェア9割を誇るカモ井加工紙さんの本社は、岡山県倉敷にあります。

カモ井加工紙本社

そのはじまりは、さかのぼること95年前、1923年に創業者の鴨井利郎氏が「ハイトリ紙」の製造を始めたことから。

ハイトリ紙とは、飛んでいるハエを捕らえる粘着面がある紙。ちなみに岡山弁ではかつて、ハエのことを「ハイ」と呼んでいたそう。

粘着剤がついたリボン状やシート状のこんな紙をおばあちゃん家などで見たことありませんか?

カモ井加工紙のハイトリ紙

カモ井加工紙のハイトリ紙。左は平型、右はリボン型

カモ井加工紙のハイトリ紙
お話を伺った専務取締役の谷口幸生さん。使い方を実演してくださいました

お話を伺った専務取締役の谷口幸生さん。使い方を実演してくださいました

食品問屋出身の初代が食品に寄って来るハエをどうにかできないかと、ハイトリ紙を作り始めたといいます。その延長で、殺虫剤を製造していたことも。食品の天敵である害虫を退治するハイトリ紙や殺虫剤は人気商品となりました。

ハイトリ紙と殺虫剤のポスター

レトロな当時のポスター

カモ井加工紙の機械

ハイトリ紙を製造していたかつての機械

マステ「mt」の秘密その2、時代のニーズに合わせて変化

1960年代に入り、高度経済成長を迎えると、ハイトリ紙で培った粘着技術を活用して、紙製の粘着テープを作るように。これがカモ井加工紙さんのマスキングテープの原型です。

カモ井加工紙の業務用マスキングテープ

そもそもマスキングテープの「マスキング」とは「覆い隠す、養生する」という意味。

大衆車として自動車の需要が増えていった時代は、車の塗装用として活躍したのだとか。車をこすったり、ぶつけたりして塗料がはがれた際に、その周りにテープを貼ってマスキングすることできれいに塗りなおすことができます。

カモ井加工紙の業務用マスキングテープ

当初は青がマステのスタンダード色。その後、さまざまなカラーバリエーションが生まれました。ちなみに、車用にはテープが目立つように車体の色として稀な黄色を採用

さらに時代は進み、1970年代になると、超高層ビルの建築ラッシュに。建築現場では、シーリング用の養生テープとして重宝されました。

業務用のマスキングテープは、薄くて丈夫なことが大事。素材には、薄さと強度を併せ持つ和紙が採用されています。

カモ井加工紙の業務用マスキングテープ

その薄さは、窓の向こうが透けて見えるほど

こうして、マスキングテープは時代の変化に合わせて用途を広げながら、業務用として塗装や建築のプロたちから絶大な支持を受けたのでした。

マステ「mt」の秘密その3、文房具としてのマステのきっかけは“工場見学”だった

そんなプロたちが愛用するアイテムに目をつけたのが、とある3人の女性たち。

「貼ってはがせる」「手で簡単に切れる」「文字が書ける」「透け感がかわいい」と、メーカーや職人たちとはちょっと違う、独自の視点でマスキングテープに価値を見出していました。

その熱心さは、ホームセンターなどを巡り、各社のマスキングテープを買い集めては比較研究していたほど。

カモ井加工紙資料室

彼女たちが作ったマスキングテープの本

カモ井加工紙資料室

マステ愛があふれています

「マスキングテープの生まれるところを見に行きたい」。

新たな本を作るべく、各製造元に工場見学を申し込んだ彼女たち。そのリクエストに応えたのが、カモ井加工紙さんでした。

2006年に彼女たちが工場見学にやってくると、それまでカモ井加工紙さんが気づかなかったようなマスキングテープの可能性を示してくれました。

業務用のマスキングテープに文字を書くことはなかったが、もともとテープに塗料がのるように作られていたことから、結果として「文字が書ける」テープであったこと。

プロとしてはテープはまっすぐ切りたいところも、彼女たちにとってはギザギザの切り口がかわいいという新しい感覚。

テープの薄さと丈夫さを追求して辿り着いた和紙に、かわいい“透け感”があるということ。

そして、「もっとカラフルなマスキングテープを作ってほしい」との要望。

「とにかく、彼女たちの熱量がすごかったんですよ。熱意がすごく伝わってきて、突き動かされました。ものづくりをする立場として面白く感じたので、じゃあ、やってみようということになって」と谷口さん。

こうして、文具・雑貨向けマスキングテープ「mt」の商品開発がスタート。

彼女たちの望みの色を出すのには苦労したそうです。

「非常にバランスが微妙な中間色だったんですよ。それを再現するのが結構大変でした」とmtの企画・広報を担当された高塚新さんは振り返ります。

そして、およそ2年の月日をかけて、誕生したのがこちら。2008年にmt初のアイテムとして発売されました。

カモ井加工紙のマスキングテープ「mt」

これまでに作られたmtのマスキングテープは2000種類以上。今でも年に600種類ほどが新しく追加されているというから驚きです。

現在、カモ井加工紙さんのマスキングテープの製造は、業務用が8割、文具・雑貨用が2割とのことですが、業務用も文具・雑貨用も基本的な製造方法は同じなのでmtの商品開発に手をかけるのは苦ではないそう。

これも全て、カモ井加工紙さんのものづくりの核となる「粘着技術」を活かした商品だからこそ。

「全く関係のないものを作ってほしいいと言われたら、お断りしていたと思うんですよ。これまでと近しいところのものづくりをやって、業界やお客さんが変わるというのは面白かったですね」と谷口さん。

さらに、mtの誕生は、マスキングテープを手にするお客さんを職人から一般の人に変えただけでなく、カモ井加工紙に入社を志望する人たちも変えたといいます。

mtが世に広まることでカモ井加工紙の認知度もアップし、「何か面白いことができる場所」として認識されるように。志望者にはデザイナーや外国の人もいるのだとか。

カモ井加工紙さんが培ってきた粘着技術とマスキングテープへの深い愛が感じられる工場に潜入した記事はこちら

<取材協力>
カモ井加工紙株式会社
https://www.kamoi-net.co.jp/
「mt」ブランドサイト

文:岩本恵美
写真:尾島可奈子
※こちらは、2018年4月19日の記事を再編集して公開しました。
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