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“日本”の美しい腕時計。漆、日本画の素材がきらめく文字盤…金沢「C-Brain」の工房へ

投稿日: 2018年5月12日
産地:
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突然ですが、みなさんは、ふだんから腕時計を「する派」でしょうか? 私は「しない派」です。でも、そんな私でも、思わず欲しくなった腕時計があります。

岩絵具、箔、漆など、日本の伝統的な美を凝縮した腕時計「はなもっこ」。文字盤だけでも100種類以上あり、見ているだけでうっとりしてしまいます。

シーブレーン はなもっこ

はなもっこ かさねシリーズ 金箔のかさね(定色) 税別 27,800円

シーブレーン はなもっこ

はなもっこ こないろシリーズ 瑠璃(るり) 税別 2,2500円~25,000円

シーブレーン はなもっこ

はなもっこ うるしシリーズ  黒漆 税別 40,800円

しかも、これらの腕時計は、一つひとつ、手作業で作られているというから驚きです。さらに、文字盤に時計部分のケース、ベルトの組み合わせも自由自在。自分好みの腕時計にカスタマイズできるのも、魅力的です。

シーブレーンのアトリエ

ベルトも色とりどり

シーブレーンのアトリエ

一つひとつ手作業で作っていきます

シーブレーンのアトリエ

かつてはベルトの穴も一つずつあけていたのだとか

シーブレーンのアトリエ

今は機械で等間隔に一気にベルト穴をあけるのが主流

ものづくりの楽しさを腕時計に込めて

この素敵な腕時計を作っているのは、金沢にアトリエを構えるC-Brain(シーブレーン)。今回、その時計作りの現場を覗いてきました。

金沢駅からバスで揺られること25分。静かな住宅街の中にC-Brainのアトリエはあります。

シーブレーンのアトリエ
シーブレーンのアトリエ
シーブレーンのアトリエ

C-Brainで制作しているのは、「はなもっこ」の他に「クルチュアン」「iroha (いろは) 」の2シリーズ。いずれも手作りにこだわった腕時計です。

「ものづくりの楽しさや素晴らしさを伝えたいという思いから、C-Brainを立ち上げたんですよね」と語るのは、C-Brain社長の井波人哉 (いなみ・ひとや) さん。

もともと井波さんは、父親の跡を継ぎ、中学校の技術家庭科で使われる教材を手掛ける会社を営んでいたそう。自分が企画・製作をした教材で作ったものを、中学生たちが抱えるように大事に持って帰る姿に感銘を受けたのが、ものづくりにこだわるようになった原体験だったといいます。

1994年に立ち上げたC-Brain。当初は家具製作キットなども扱っていたとのことですが、ハンドメイドで時計を作る方との出会いがあり、腕時計に的を絞っていったのだとか。その当時からずっと作られているのが「クルチュアン」シリーズです。

シーブレーンの腕時計

C-Brainの原点「クルチュアン」シリーズ

しっかりと伝わっていたハンドメイドの魅力

さまざまな人脈に助けられ、順調に販路を拡大。およそ10年で個人が営む雑貨店を中心に全国165店舗で取り扱われるようになりました。

小売業大手からお声がかかったのも、その頃。ただし、非防水だった腕時計を生活防水仕様にすることが求められました。そこで、これまでハンドメイドのみだった時計部分のケースのうち、一部をメーカーに発注するように。

シーブレーンのアトリエ

ケースを手作りしているところ。真鍮の板を円形にしていきます

シーブレーンの腕時計

手前がハンドメイドのケース。ロウ付けされた耳部分がハンドメイド感たっぷり

当初は大手が取り扱ったことから注目度が上がり、売れ行きも伸びたものの、その勢いは次第に失速していってしまいます。

「ハンドメイドで作っていた分、そこには作り手の愛がしっかりとあったんでしょうね。お客さんもそれを分かっていてくれたのだなと改めて思い知らされました」と、井波さんは当時を振り返ります。

伝統的な“日本の美”で差別化

それまでの卸先であった雑貨店から百貨店にシフトすることを考えた井波さん。機能性としての生活防水はそのままに、C-Brainならではの腕時計、原点に帰って手づくりの大切さを意識した腕時計を作ろうと試みます。

「その頃、伝統に対する世の中の意識が変わり始めていると感じたんですよね。僕自身、伝統芸能の加賀萬歳 (かがまんざい) を30年ほどやっていて、宴会などの舞台に立つと皆さんしっかりと見てくれるようになったと肌で感じました」

そこで、伝統的で、かつ、美しいものを時計作りに取り入れようと思い立ちます。そうして生まれたのが「はなもっこ」でした。

まず、井波さんの頭に浮かんだのは漆。輪島の漆職人を探し、漆塗りの文字盤を実現させます。それと同時に、日本画家としても活動する社員の牛島孝 (うしじま・こう) さんの考案で、岩絵具や箔を使った文字盤も作られました。

シーブレーンのアトリエ

岩絵具の原石。左がアズロマラカイト。濃い青の部分はアズライトと呼ばれ、「群青」色に、緑の部分はマラカイトと呼ばれ、「緑青 (ろくしょう) 」の色になるそう。右は、「水浅葱 (みずあさぎ) 」の色の原石、アマゾナイト。粒子の細かさで色の濃淡も変わってくるのだとか

シーブレーンのアトリエ

大切にしているのは「主張しすぎないこと」

アトリエでの時計作り全般を任せられているのが、中学生のころから日本画を描いてきたという牛島さん。その美しさをより多くの人に知ってもらいたいという思いから、岩絵具や箔などの日本画の素材を「はなもっこ」に使うことを思いついたといいます。

「『はなもっこ』で使われているのは、いずれも昔ながらの素材や文様、色彩です。それらはすでに素晴らしいものであり、私たち作り手はそれらの素晴らしさを腕時計に落とし込むのが仕事。だから、作り手の思いを強く主張しすぎないことがこだわりでもあります」

その美しさと腕時計というプロダクトとしての機能性を共存させる上で難しいのが、文字盤の制作だそう。

なんと、真鍮をベースにした文字盤の上に和紙や岩絵具を重ねられるのは0.2㎜ほどの厚さまでなのだとか。

「凹凸や塗りむらがあると、針が引っかかって止まってしまうんです。精密機器としての機能性も求められるので、不良なく作るように注意しています」と牛島さん。

シーブレーンのアトリエ

和紙を重ねた上に岩絵具を塗り重ねていきます。厚塗り厳禁です

シーブレーンのアトリエ

時間を指し示すインデックスも時計作りの大事な要素。こちらでは、和紙に金箔を貼ったものを打ち抜き、一つずつ角度を確認しながら膠でつけていきます

シーブレーンのアトリエ

時針、分針、秒針を載せる道具。1本ずつ針の高さが異なります

シーブレーンのアトリエ

こちらは時計の動作確認をする機器。時計の進み具合のずれをチェックする、時計の聴診器のようなもの

こうして職人たちの手を経て文字盤に宿った美しさは、世代をも超えて魅了する強さを持っていました。

「結果として、客層は10代から70代までと大きく広がりました。中には、親子三世代で購入してくれた人もいましたね」と井波さん。

シーブレーン・井波社長と牛島さん

井波社長(右)と牛島さん(左)

「はなもっこ」は2009年 (平成21年) に金沢ブランド優秀新製品大賞、石川ブランド優秀認定商品銅賞など、数々の賞を受賞。C-Brainを代表する腕時計となりました。文字盤のバリエーションも、岩絵具、箔、漆に始まり、今では紋切や蒔絵、螺鈿と広がりを見せています。

シーブレーンのアトリエ

こちらは集中力が必要な紋切の作業中。30~40分かけて、丁寧に切り抜いていきます

シーブレーンのアトリエ

出来上がった紋切はとても繊細です

選択肢の多さに迷うところですが、それだけに一つひとつの決断も愛おしく思えてきそうです。「この組み合わせかな」「いや、それともこっちの組み合わせが似合うかな」と、大いに迷って自分だけの腕時計を見つけるのも、「はなもっこ」という腕時計の楽しみなのかもしれません。

私とカタログとのにらめっこは、しばらく続きそうです。

<取材協力>
C-Brain (シーブレーン)
http://www.cbrain.co.jp/

文:岩本恵美
写真:C-Brain提供、岩本恵美
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