さんち 〜工芸と探訪〜

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木を知り尽くすから作れた「白木の丸いトレー」、美しい木目に漆器産地の技あり

投稿日: 2020年3月9日
産地: 加賀
編集:
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冬は雪深く、一年を通して湿潤な地域が広がる北陸。その独自の風土が、さまざまな工芸技術を育んできました。

そんな北陸の地で2020年1月誕生したのが、ものづくりの総合ブランド「RIN&CO.」(リンアンドコー)。

漆器や和紙、木工、焼き物、繊維など、さまざまな技術を生かしたプロダクトが動き出しています。

越前漆器
長年の経験と勘でわずかな角度も調整していきます
ポチ袋の紙は、中身が透けないよう少し厚みのある紙を選択。紙を漉いた時にできる漉目(すのめ)をあえて出し、和紙らしさを表現
何千、何万個と常に同じ形に仕上げる成形技術。そこには長年培ってきた経験や勘が活かされています

今回は「RIN&CO.」を立ち上げた漆琳堂の内田徹さんとともに、プロダクトの製作現場を訪れ、北陸のものづくりの魅力に迫っていきます。


*ブランドデビューの経緯を伺った記事はこちら:「漆器の老舗がはじめた北陸のものづくりブランド「RIN&CO.」が生まれるまで」

いつまでも撫でていたくなる丸いトレー

今回ご紹介するのは、シンプルな白木の丸いトレー。

「RIN&CO.」丸いトレー

木目の美しさが際立ち、軽くて強度のある栓(セン)の木を使っています。

「RIN&CO.」丸いトレーアップ

なんともいえない、このなめらかな縁の角度。

手に吸い付くようにぴたっとおさまります。

サイズは8寸(直径24cm)と9寸(直径27cm)の2種類。

8寸であれば、一人分の小鉢やマグカップがフィットするサイズ

8寸であれば、一人分の小鉢やマグカップがフィットするサイズ

サラッとした手触りが心地よく、ずっと撫でていたくなるようなトレーなのです。

寸分の狂いのない丸物木地

このトレーをつくっている場所を訪れるべく、石川県加賀市にやってきました。

加賀市は石川県を代表する「山中漆器」の産地。

石川県には「山中漆器」「輪島塗」「金沢漆器」と3つの漆器産地がありますが、なかでも山中漆器はお椀や盆といった「丸物」をろくろで挽く「挽物木地師」が数多くいます。

ここ、(有)山中漆器工芸も、約40年にわたり丸物木地を手がけてきました。

山中漆器工芸

工房のなかに入ってまず感じるのが、ふわっと立ち込める木の香り。

稼働している機械を見ると、まさに丸いお盆がつくられている最中でした。

機械ろくろ

みるみるうちに木が削られていきます

数分ほどですっかりお盆のかたちに。積み上げられたお盆を見ると、どれも寸分の狂いもない美しさです。

溝をつけたり縁のエッジを際立たせたりなど、お盆の形状も自由自在

「機械ではミリ単位の調整ができますが、最後の仕上げはあくまで感覚なんです」と語るのは、代表の口出雅人 (くちで・まさと) さん。

山中漆器工芸2代目の口出さん

旋盤の機械で加工すれば、ある程度の美しさまではつくることができますが、微妙な仕上げは木地師の感覚に委ねられます。

そんな高い技術を持つ山中漆器工芸の木地に惚れ込んだのが、「RIN&CO.」を立ち上げた漆琳堂の内田徹さんでした。

福井県鯖江市で越前漆器の塗りを手がける内田さん(左)

普段は越前漆器の産地である福井県鯖江市河和田地区で漆器の漆塗りを手がけている内田さん。山中漆器工芸でつくられたお盆や椀の木地に漆を塗ることもあるのだとか。

「山中漆器は北陸の漆器産地のなかでも『木地の山中』と言われるほど、木地の技術が高いんです。丸物のなめらかな角度はもちろん、漆を塗るのが惜しいと思うほど木目も美しく、いつか口出さんの木地で何かできればいいなと考えていました」

実際に山中漆器工芸では、昔こそ山中エリアからの注文がほとんどでしたが、今では木地師の職人不足などから、福井や金沢、関西方面からの注文も増えているそう。

「ひとつの産地だけでものづくりを完結させることは、これから先もっと難しくなるのかもしれません。だからこそ、同じ北陸の漆器産地として、口出さんたちが手がける丸物の完成度の高さを多くの人に知ってもらいたい」

そんな思いから、内田さんは「RIN&CO.」の商品の一つとして、口出さんに製作を依頼することになりました。

口出さん作業中

商品は、丸物のなかでも木目の美しさがわかる丸いトレーに。

「トレーは乗せたり運んだりと、暮らしのなかでも幅広い世代に愛される日用品ですが、実際にできたものを見てどんな風景にも溶け込むなと思いました」

と、仕上がりに手応えを感じています。

内田さんと口出さん

いいとこ取りした「横木取り」

山中漆器工芸では、丸物を手がける時にどんな部分を気をつけているのでしょうか。

「丸物は何よりも木の扱いがとても重要なんです。最近は白木のままで仕上げるものも多く、材料取りに神経を使いますね」と口出さん。

原木から木地にするための良質な材料を取り出すためには、品質管理が大きく左右します。うまく木の水分が抜けきっていないと、削っている最中にひび割れや変形が生じることも。

木地の水分の状態によっては、削っている間に割れてしまうこともあるそう

木地の水分の状態によっては、削っている間に割れてしまうこともあるそう

そこで、材料取りのこだわりを知るため工房の2階へ。

広いスペースには所狭しと木地の材料が出番を待っているかのように積み上げられていました。

山中漆器工芸の2階

木地を取る方法には、「縦木」と「横木」取りの2種類あります。

山中漆器の産地では本来、木を輪切りにした状態から木地を取り出す「縦木取り」を行ってきました。年輪に沿って木地をとるため歪みや収縮には強いですが、一方で材料効率が悪いという欠点もありました。

山中漆器工芸は、産地のなかでも珍しい「横木取り」を採用。木を輪切りではなく板状にしたものから椀の大きさに切り取るため、大きく木地が取れる利点がありますが、縦木取りに比べて木の変形が多いという欠点もあります。

寸分の狂いのないお盆を生み出すためには、木地の縮みや歪みは致命的。その欠点を補うために試行錯誤を重ね、たどり着いたのが今の乾燥方法でした。

漆琳堂用の型

まずは原木を2〜3ヶ月間日干しし、水分を12〜13%に調整。丸物のかたちに合わせて木地を切り出し、乾燥室で水分量がほぼ0%になるまで乾燥させていきます。

カラカラに乾いた木地

カラカラに乾いた木地

乾燥させた後は、今度はスチームで水分を入れ、再び12〜13%まで戻していきます。

きれいに積み上げられた木地。切削で出た木屑を燃料をボイラーで炊き、蒸気を送ります

きれいに積み上げられた木地。切削で出た木屑を燃料をボイラーで炊き、蒸気を送ります

調湿、乾燥、そして再度調湿。どうして同じ工程を繰り返すのでしょうか。

「木は乾燥する時に歪みが生じるんです。一度、限界まで乾かして歪みをあえて生じさせ、再び最適な水分量に戻すことで、横木取りでも木の変化が少ない木地をつくることができます」

こうして材料効率の良さと木の変化に強い木地取りの両方を叶えた口出さん。

木の種類によっては最適な水分量が異なるため、木の個性を見極めることも大切にしています。

口出さん手元アップ

木を知り尽くしているからこそ生まれる歪みのない美しい木地。

のせるものや置く場所が変わっても、その雰囲気にすっと馴染みそうです。

「RIN&CO.」丸いトレー商品イメージ2

一つひとつ異なる木の個性を楽しみながら、自分だけの1枚を暮らしに取り入れてみませんか。

丸いトレー(山中漆器工芸)

<掲載商品>
越前木工 丸トレー
https://www.nakagawa-masashichi.jp/shop/g/g4547639670137/

<取材協力>
有限会社山中漆器工芸
石川県加賀市山中温泉菅谷町ハ148-1

文:石原藍
写真:荻野勤、中川政七商店
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