さんち 〜工芸と探訪〜

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海と桜と温泉と。港町に伝わるご当地ひな祭りを訪ねて 伊豆稲取の「雛のつるし飾りまつり」に行ってきました

投稿日: 2017年3月2日
産地: 伊豆
編集:
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こんにちは。さんち編集部の尾島可奈子です。
明日はひな祭り。といえば豪勢なひな壇飾りのイメージですが、日本各地にはちょっと変わったひな飾りがあるのをご存知ですか?地域のお母さんたちの手作りから始まって、今や全国から観光バスがやってくる一大イベントになった、伊豆稲取温泉の「雛のつるし飾りまつり」を訪ねました。

2月某日。ここだけ台風でも来ているんじゃないかという土砂降りの雨の中、海沿いを走る電車を伊豆稲取駅で降りて、アップダウンのある道を歩いて15分。一軒のお家を訪ねます。ここは伊豆稲取に伝わる「雛のつるし飾り」を製作する「ニコニコ会」さんの工房です。

「いやーすごい雨ねぇ、これじゃ桜も散っちゃうかしらねぇ」

会の取りまとめ役の齋藤さんが迎えてくれました。この時期、温暖なこのエリアでは早咲きの桜が咲くのです。伺った日にはもう若葉がのぞいていました。

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静岡県の中でも関東に近く、太平洋に突き出た伊豆半島は、温暖な気候で温泉も多く、一帯が昔からの観光地です。中でも半島の東側、東伊豆町に位置する伊豆稲取温泉は、おとなり河津町の早咲きの桜とともにこの時期、珍しいひな飾りが見られる町として人気を集めています。

晴れるとこんな気持ちの良い景色です。

晴れるとこんな気持ちの良い景色です。

ご自宅の一室を解放した体験教室の部屋に入ると、豪華なひな壇飾りと、部屋いっぱいに人形をつるした飾りが。あいにくのお天気を吹き飛ばすように華やかです。

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「昔はこのつるし飾りだけを、座敷に飾ったんですよ」

見入っていると、今日の体験教室の先生、久保田さんが声をかけてくれました。

「今のようなひな壇は、昔は裕福な家庭しか持てなかったんです。それを、せめてもと母親が自分の着物をほどいて人形を手縫いしたのが始まりと言われています」

見ると本当にいろいろな形の飾りがあります。それぞれに意味があるそうです。

「全部女の子の健やかな成長を祈った、縁起を担いだものなんですね。邪気を払うと言われる桃や、神様の使いと言われるうさぎ、早くおすわりができるように、足が丈夫になるようにと座布団や草履なども。稲取名産の、おめでたい金目鯛もありますよ」

ハート型の桃。

ハート型の桃。

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「全部で40種類くらいあります。つるすとだいたいひとつの高さが160~190cmくらい。必ず人形の数も紐の数も奇数と決まっているんです。縁起物なので、つないだ縁が『割れない』よう縁起を担いでいるんですね。基本的に人形の組み合わせは自由なんですが、作る人によっては下の方に海のものや地を這うもの、上の方に空を舞うものなど、工夫していますね」

他所で見つけたつるし飾り。地に植わる花や海中の亀が一番下にきています。

他所で見つけたつるし飾り。地に植わる花や海中の亀が一番下にきています。

こちらも他所で発見。お金に困らないよう、巾着もずっしりと一番下に。

こちらも他所で発見。お金に困らないよう、巾着もずっしりと一番下に。

桃の節句ということで、私は桃の飾りづくりを体験させてもらいました。まずは生地選びから。

体験支度中の齋藤さん(左)と久保田さん(右)。

体験支度中の齋藤さん(左)と久保田さん(右)。

この組み合わせに決めました。

この組み合わせに決めました。

こちらも、三つ桃(みつもも)という桃の飾りの一種。

こちらも、三つ桃(みつもも)という桃の飾りの一種。

このように三角に折り合わせて縫っていきます。

このように三角に折り合わせて縫っていきます。

針と糸を持つのも久しぶりです。たどたどしく縫っていると、じゃあ、ここは私やろうか、と久保田さんが助け舟を出してくれます。その手が早い、早い。

一針一針返し縫いにしていきます。

一針一針返し縫いにしていきます。

「孫が生まれたらみんなで集まって縫ったり、注文が入ればみんなで担当を分けて縫うんです。ひとりの人が同じ人形をまとめて作った方が効率がいいでしょう」

ニコニコ会さんをはじめ稲取にはつるし雛の保存会が4つあり、この後取材に向かうつるし雛の展示施設などで売られる、商品づくりも請け負っています。つるし雛の存在が知られるようになってからは、「うちにも欲しい」と全国から注文が入るそうです。地域のお母さんたちで、今はお土産ものとしてもつるし雛を作っているのですね。

綿を詰めて…

綿を詰めて…

紐を通して、

紐を通して、

引っ張ると…

引っ張ると…

完成です!

完成です!

だいぶ久保田さんに手伝ってもらいましたが、自分の手でつくったものはやはり愛おしいです。

もう1種類、三つ桃(みつもも)も同じ要領で完成です。

もう1種類、三つ桃(みつもも)も同じ要領で完成です。

「地域の学校に年に1度教えに行ったりもしているんですが、女の子も男の子も喜んで作りますね。この地域の子供達は、みんなつるし雛の作り方を知っているんですよ」

外はまだざぁざぁ降りの雨ですが、お昼からは晴れるとの予報。

「旅館組合の村木さんが案内してくれるから、『雛の館』と『むかい庵』に行ってみて。すごい飾りがあるから!」

笑顔で送り出されて、雨の中を駆け出しました。

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