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輪島塗

輪島塗とは。独自の技術と文化を築いた「塗師屋」の存在

投稿日: 2020年5月14日
産地: 石川
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華やかさと堅牢さを兼ね備えた漆器、輪島塗。

お椀ができるまでの工程は100以上に及び、1年かかることもあります。

独特の「塗師文化」を生み、建築のあり方にまで影響を与えた、「輪島塗とは?」に迫ります。

輪島塗とは。

輪島は、日本海に面した能登半島北岸の港町である。

輪島塗は、その石川県輪島市で生産される漆器。

原料となる漆の木と、ケヤキ、アテ (この地方でのアスナロの俗称) などの木地 (きじ) に使われる木が豊富にあるこの土地で、輪島塗は発展していった。

輪島塗は、例えばお椀づくりでは出来上がりまでに大きく3つの工程に分かれる。

「木地づくり」「漆塗り」「加飾」の3つで、そのうち「漆塗り」の工程には、下地作りだけでも23もの工程がある。

それぞれの工程で担当する職人・工房が分かれており、分業制によって仕上げられ、完成までに1年以上の年月を要することもある。

ここに注目。堅牢な下地を支える「地の粉」と優美な「沈金」

輪島塗の優美な装飾

輪島塗の優美な装飾

輪島塗が盛んになったのは、「地の粉 (じのこ) 」とよばれる粉が発見されたことが大きい。地の粉は、輪島市内の小峰山でとれる珪藻土を蒸し焼きにして、細かい粉末にしたものである。

珪藻土は、植物プランクトンが海底で化石になって出来た土であり、断熱性や吸水性に優れている。また微細な孔 (あな) が多数あり、漆をよく吸収するため、堅牢な漆器の下地づくりが可能になる。

さらに「布着せ (ぬのきせ) 」とよばれる工程で、木地の上縁や底の部分など壊れやすい箇所に寒冷紗 (かんれいしゃ・補足入れられたら) を貼ることで、いっそう丈夫なものに仕上げていく。

この堅牢な塗りの上に文様を彫り、溝に金箔や金粉を施して浮かび上がらせる「沈金 (ちんきん) 」の技法により、優美な輪島塗が生まれる。

輪島塗のきほん

装飾が施される様子

装飾が施される様子

◯素材

輪島塗の木地には、ケヤキやアテ (アスナロ) などの木材が使われる。

お椀やお盆などの木地には、木の年輪に小さな穴が複数あり漆がのりやすいというケヤキ材が使われ、お膳や重箱などの木地には、建築材にも用いられるほど耐水性に優れるアテ材が使われる。

◯代表的な技法

輪島塗の制作工程の様子

輪島塗の制作工程の様子

輪島塗にはさまざまな工程があるが、そのなかでも代表的な技法として「布着せ」と「沈金」がある。

布着せ : お椀の縁などの壊れやすい部分に布を貼り、丈夫にする作業。これにより、堅牢な輪島塗のベースが出来る。

沈金 : 輪島で盛んに行われるようになった加飾の技法で、漆器の表面に絵柄を彫り込み、その彫った場所に金箔や金粉を埋める作業のこと。彫り込みが深すぎると金箔が入りきらなかったり、割れたりするため、熟練の技が必要とされる。

◯代表的な作り手

輪島塗の重要無形文化財保持者で、いわゆる人間国宝として知られるのは、前史雄 (まえ・ふみお) (沈金) 、小森邦衛 (こもり・くにえ) (髹漆 ・きゅうしつ) 、山岸一男 (やまぎし・かずお) (沈金) らが挙げられる。

関連リンク
・石川県 (重要無形文化財)
https://www.pref.ishikawa.lg.jp/kyoiku/bunkazai/mukei/mukei.html

◯数字で見る輪島塗

・誕生 : 現存する最古の輪島塗は、室町時代の大永4年(1524年)作と伝わる重蔵神社(じゅうぞうじんじゃ、輪島市河井町)旧本殿の朱塗扉といわれている。
・工程の数 : (お椀の場合) 完成まで100以上の工程に及び、1年かかることも
・文化財指定 : 1975年に国の伝統的工芸品指定を受ける

輪島塗の豆知識

◯全国の漆器で最初に、重要無形文化財に認定

国の重要有形文化財に指定された輪島塗

国の重要有形文化財に指定された輪島塗

輪島塗は1975年に経済産業大臣指定の伝統的工芸品に、また1977年には全国の漆器産地で最初に、無形の技術を文化財とする重要無形文化財に指定される。

1982年には輪島塗の制作用具など3804点が国の重要有形文化財に指定された。

また輪島塗の中でも「ひな鶏飾筥」「漆器蘭と猫の図小屏風」「猫文飾筥」などの作品を残し、文部大臣賞などの数々の賞を受賞した前大峰 (マエ・タイホウ) は1955年、国の重要無形文化財保持者として認定された。1965年には紫綬褒章も受賞している。

◯発展を支えた独特の塗師文化

輪島塗が全国にその名が知られるようになったのは江戸時代の頃である。

問屋を通さず、塗師屋 (ぬしや) (※) が自ら全国に行商に出るのが輪島の特徴だった。これにより塗師たちが常に最新の文化、情報に触れることとなり、彼らが全国各地から仕入れた文化は、輪島で「塗師文化」として発展した。

※塗師屋
塗りを担うだけでなく、木地師や研ぎ師などその他の工程の手配も行い、漆器の企画から製造・販売までを取りまとめるプロデューサー的存在

輪島塗は高度な技の伝承を必要とするが、これを支えてきたシステムが「年季明け」と呼ばれる徒弟制だ。弟子の修業期間は時代によって異なり、明治は8年、昭和初期は6年、現在では4年間になっている。修行は行儀見習いから始まり、工房の清掃、仕事の準備といった基本的な業務を経て、作業助手をしながら技を習得していく。

年季明けした職人たちは、同門の恥とならぬよう技の研鑽に努め、それが結果として輪島塗の技術を高めることに繋がっていったのだ。

もし輪島を訪れたなら、輪島独特の「塗師屋造り」と呼ばれる町屋建築は見ておきたい。

町屋といえば、手前に作業場があり、後方に住居があるのが一般的である。しかしながらこの塗師屋造りは、住居が手前で、作業場が後方という人前職後の配置になっている。

職人たちは手前にある住居部分を毎日通り後方の作業場に向かうことで生活文化を肌で吸収し、その中での器のあり方を自ら考え、新たな輪島塗の製作に活かす効果があったと言われる。

輪島塗の歴史

◯室町時代にはすでに現在に近い技法が確立

輪島塗特有の地の粉を木地の上に塗り重ねた椀が室町時代の大屋荘 (おおやのしょう) 域から発掘されたことや、輪島市内の重蔵 (じゅうぞう) 神社に残る棟札 (むなふだ) (1476年) に塗師の名前があること、この重蔵神社の造立時 (1524年) の「重蔵権現本殿の朱塗扉」が現存することなどから、室町時代には初期の輪島塗が生まれていたと考えられている。

◯塗師屋が全国を回る行商スタイルで発展

輪島塗が全国に知られるようになったのは江戸時代の文化・文政の頃 (1804〜1830) であった。

他の産地とは違い、輪島の塗師屋は問屋を通さず、塗師屋が直接顧客へ販売する自作自売のスタイルが定着し、全国に輪島塗を販売した。

また、この時代であわせて知っておきたいのが、輪島塗ならではの販売方法である。

行商に行った先で10人の「椀講 (わんこう) 」と呼ばれる顧客グループを作り、商品の価格の10分の1の金額をそれぞれ出資してもらい、抽選で毎年1人ずつ納品される、という頼母子講 (たのもしこう)と呼ばれる販売方法が行われた。

顧客にとっては高額な輪島塗を購入しやすくなり、塗師にとっても安定した需要が見込めるようになる合理的なものであった。

このような販売方法の工夫によって京・大阪方面での販路が拡大したとされる。

◯明治維新後の変化

明治維新により大名や武士、公家などの需要を失った京都、江戸、尾張、加賀などの漆器産地は大きな打撃を受けることとなった。

一方で独自の生産・販売ルートを持ち、富裕な農家や商家を主な顧客としていた輪島は維新の影響を受けずに済んだ。さらに、優れた蒔絵師であった尾張の飯田善七をはじめ、他の藩からのお抱え職人が輪島に移住してきたことで、従来の沈金に加えて、本格的な蒔絵が発達。生産はより発展していった。

明治後期から大正時代にかけては、橋本雪洲や黒川碩舟、舟掛宗四郎、舟掛貞二など沈金の名工が活躍し、昭和に入ると1955年 (昭和30年) に前大峰が国の重要無形文化財の指定を受けた。

1975年 (昭和50年) には輪島塗が伝統的工芸品に指定され、1977年 (昭和52年) には重要無形文化財に指定された。

さらに1967年 (昭和42年) には現在の石川県立輪島漆芸技術研修所 (当初は輪島市立) が設立され、多くの漆芸作家を輩出し、今日も漆文化の発展に力を注いでいる。

現在の輪島塗

◯原材料の不足や後継者不足への取り組み

輪島塗で使用される漆は明治〜現在、他の産地と同様にほぼ中国産の漆に頼っている (年間で使用される漆は輪島だけでも3~4トンにのぼるが、国産は約200kg (約5%) ) 。そのため現在では国の援助を受けつつ、国産の漆の量を増やすため、輪島で漆の木の栽培活動が行われている。

また後継者不足への取り組みも積極的に行っている。以前は輪島塗の一人前の職人になるために7、8年という長い修行が必要だといわれてきたが、技術や道具の進歩もあり、4年間の修業期間を経れば職人になることが可能になった。

石川県立輪島漆芸技術研修所は、普通課程3ヶ年 (専門コース) に加え、特別課程約2ヶ年 (基礎コース)が設置され、全国から漆芸を志す若者を受け入れており(基礎コースを終了後、専門コースへと進むことができる)、輪島塗の仕事に就業がしやすいよう、奨励金制度等を準備している。

輪島塗の使い方、洗い方、保管方法

 

〇使用時のポイント

電子レンジは使わないようにすること。また、食器洗浄機、乾燥機の使用はさける。

〇洗い方

中性洗剤で洗うことができる。表面のつやを保つためにアルカリ性の洗剤や漂白剤はさける。研磨剤の入った洗剤やたわしを使うとキズができてしまうため使用しないこと。ガラス、陶器などとぶつかることでキズができる場合があるため別にして洗う。

〇保管方法

直射日光や紫外線があたらない場所に保管する。ガラスや陶器と重ねないこと。漆器は漆器だけでまとめて保管する。箱などに入れて長期保管する場合は、汚れや水分が残らないようにしっかりと拭きあげること。高い場所は乾燥しがちなため、できるだけ低く、適度に湿度がある場所に保管するとよい。

漆器の基本の扱い方についてはこちら
「漆器のお手入れ・洗い方・選び方。職人さんに聞きました」
https://sunchi.jp/sunchilist/craft/112389

<参考>
・石井昭著『ぬりもの〈輪島塗〉』リブリオ出版 (2003年)
・北俊夫著『中部の伝統工業』国土社 (1996年)
・小林真理著『漆芸の見かた』誠文堂新光社 (2017年)
・坂井宏先著『ポプラディア情報館 伝統工芸』ポプラ社 (2006年)
・輪島漆器商工業協同組合
https://wajimanuri.or.jp/frame07.html
・田谷漆器店
https://www.wajimanuri.co.jp/history/

<協力>
輪島漆器商工業協同組合
https://wajimanuri.or.jp/

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