さんち 〜工芸と探訪〜

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津軽の伝承料理をフルコースで味わえる。「津軽あかつきの会」が仕掛ける、楽しい「食の伝え方」

投稿日: 2019年7月29日
産地: 弘前
編集:
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津軽に寄ったら必ず訪れてほしいごはん処があります。

といっても表立った看板はなく、一見普通のお家。

しかし中に入れば10人近い「シェフ」が厨房を切り盛りする、ここは「津軽あかつきの会」。

「津軽あかつきの会」

会長である工藤良子さん宅を開放して、週に4日、地元津軽の伝承料理を提供しています。

「津軽あかつきの会」

この日お膳に並んだのは春の素材をふんだんに使った16品。

「津軽あかつきの会」のお膳

手がけた「シェフ」はみな、地元のお母さんたちです。

「子どもも手が離れてやっと自分の時間ができたから、ここで料理を勉強させてもらっているの」

長年台所に立ってきたであろうベテランの主婦の方でもそう語るほど、津軽に代々伝わる料理のレパートリーは幅広く、奥深いもの。

作物の採れない冬を越すために、工夫を凝らした様々な保存食が大切に伝承されてきました。

魚を焼いている様子
おかずを盛り付けている様子

そのできる限りを記録し、自ら作って後世に残していこうと工藤さんはじめ有志数人が活動を始めたのは、20年近く前のこと。

地域のお年寄りに伝承料理について聞いてみると、「知らなかった」料理に次々に出会ったそうです。

津軽あかつきの会
津軽あかつきの会
津軽あかつきの会
津軽あかつきの会

米、山菜、豆、海草など、土地の素材を生かし、無駄にせず、美味しく。

流通や食品管理が発達し、保存食の必要性は既にすっかり薄くなっていた時代、「今継いで行かなければ、消えてしまう」と工藤さんたちは危機感を抱いたそうです。

仲間で地域の家々を周って料理上手のお年寄りから伝統的な料理を教わり、地元の道の駅で伝承料理の朝ごはんを提供するように。

早朝から活動するので、「あかつきの会」と名前がつきました。

津軽の代表的な料理のひとつ「けの汁」

この日の食卓にものぼった「けの汁」。津軽の代表的な料理のひとつで、津軽の七草がゆとも呼ばれる、栄養たっぷりの汁もの

けの汁の味付けの決め手となる味噌

けの汁の味付けの決め手は味噌とのこと

2006年には聞き取った料理の作り方をまとめた本も発刊。

活動の一環として開くようになった予約制の食事会は、今では遠方からも人が訪ねて来ます。

調理の合間に予約の電話を受ける工藤さん

調理の合間に予約の電話を受ける工藤さん。もともと年に一度身内で開いていた成果発表の食事会にラブコールが多く寄せられ、3年ほど前からご自宅を開放して誰でも参加できる食事会が始まりました

会のメンバーも次第に輪が広まり、今では29名の方が名を連ねるほどに。

頭にはお揃いのりんごの三角巾

頭にはお揃いのりんごの三角巾

それぞれの都合に合わせ、常時7,8名が入れ替わり立ち代わり、あかつきの厨房に立ちます。

あかつきの厨房に立つ地元のお母さん
あかつきの厨房に立つ地元のお母さん

「作るときはね、お盆と正月がいっぺんに来たような忙しさ。でもそれが楽しいの」

あかつきの厨房に立つ地元のお母さん
あかつきの厨房に立つ地元のお母さん
この日の献立

この日の献立。メニューは材料を見ながらその時々で話し合って決める

ザルには今朝取れた山菜がたっぷり

ザルには今朝取れた山菜がたっぷり

天然の温泉水のみで育つ「大鰐温泉もやし」

ここ数年県外でも人気が高まっているという、天然の温泉水のみで育つ「大鰐温泉もやし」

暁の厨房に立つ地元のお母さん

これはどうしたらいいかな、お互いに声を掛け合いながら、新入りメンバーは先輩に相談しながら、テキパキと同時進行で調理が進んでいきます

旬のふきのとう

旬のふきのとうは‥‥

ふきのとうを油であげる様子

天ぷらに!

もやしの味付け

先ほどのもやし

小鉢に盛り付けられたおかずが並ぶ

だんだんメニューが揃ってきました

彩りを添える葉

彩りを添える葉も自分たちで取ってきたもの

膳上げという台

これは膳上げという台。客人が多い時にお膳を一斉に置ける作りになっており、一般の家庭にも昔はよくあったそう

提供するうつわは全て地域の家や旅館などで不要になったものを活用しているそう

この日来ていたのは偶然にも、工藤さんの中学時代の同級生という女性。かつての学友の活躍を知って、友人を誘って訪ねて来たそうです。

膳をかこんで食事している風景

「このうつわ懐かしいわ」

「こんな風に味付けするの」

やはり地元のお母さんたちでも、知らないレシピばかりのよう。嬉しそうに会話を弾ませながら、一品一品発見を楽しむように食卓を囲んでいました。

食べている間にもどんどん次の一品が運ばれて来ます。食感も味付けもそれぞれに違って楽しめるのに、どれも共通して優しい味わい。

お膳のおかず
実は翌日の献立用だったものを、おまけね、と出してくれた温泉もやし

実は翌日の献立用だったものを、おまけね、と出してくれた温泉もやし

「大事なのは、塩じゃなくて、出汁を効かせること。そうするとしょっぱくなく味が出るの」

保存食には、こうした出汁の準備など下ごしらえが欠かせません。そのため予約は3日前までにとの決まりがあります。

乾物を水で戻しているところ

乾物を水で戻しているところ

何日も手間暇をかけ、10人がかりで作る食べきれないほどのご馳走。それが一人たった1500円で味わえるということに、さらに驚きます。

「お金にならない場所は、楽しくないと誰も来ないでしょ」

大事なのは儲けることより、作る人も、食べる人も、この土地の料理を囲んで楽しい時間を過ごすこと。

20年前に工藤さんたちが願った未来は、明るい食卓の周りにしっかりと実っていました。

津軽あかつきの会 集合写真

<取材協力>
津軽あかつきの会
青森県弘前市石川家岸44-13
0172-49-7002
※食事会は木、金、土、日の12:00~14:00。4名から受付、3日前までに要予約。

文:尾島可奈子
写真:船橋陽馬
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