さんち 〜工芸と探訪〜

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青森生まれの「りんごかご」は業務用なのに愛らしい。唯一の作り手、三上幸男さんを訪ねて

投稿日: 2019年11月30日
産地: 弘前
編集:
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「りんご王国」青森は、「かご王国」でもあった。

先日は代表的なかごの一つ、あけびかごをご紹介しました。

そして青森のかごと言えばやはり、こちらを抜きには語れません。

りんご王国が生んだ「りんごかご」。

三上幸男竹製品販売センター

その名の通り、りんご農家さんが収穫のために使ってきたかごです。

しかし現在では農家さんに代わって、全国の一般のお客さんから「使ってみたい」と注文が舞い込みます。オーダーしてから3、4ヶ月待ちは当たり前という人気ぶり。

一体、人気の秘密はどこにあるのでしょう。現在、唯一りんごかごを作り続ける、三上さんを訪ねました。

あけびかごの工房を訪ねた記事はこちら:「あけびかごを探しに青森の宮本工芸へ。選び方やお手入れ方法を聞きました」

一軒だけのりんごかご工房、三上幸男竹製品販売センターへ

弘前駅から車で20分すこし。「三上幸男竹製品販売センター」に到着です。

りんごかご_三上幸男竹製品販売センター

かごを作る工房と販売所が一緒になっており、一般のお客さんでも立ち寄って直接かごを購入することができます。

りんごかご_三上幸男竹製品販売センター

「昔はこのあたりに100軒近くかごを編む家があってね。そういうところを車で回って集めてたの」

かごを編みながらそう答えるのは、センターの名前にもある三上幸男さんです。

りんごかご_三上幸男竹製品販売センター
作業は奥さんと二人で

作業は奥さんと二人で

センターがあるのは、市街地から弘前のシンボル 岩木山に向かう道の中ほどに位置する、愛宕という地区。向かう道の両脇には、りんご畑が広がっていました。

農地のそばで収穫を支える道具作りが盛んになったのは、ごく自然なことと言えそうです。

三上さんもかご作りを生業とする家に生まれ、自身は出来上がったかごを集めてりんご農家さんへ卸す仕事を思いつき、専門に行なってきました。

最盛期には年間10万個も運んだとか。遠く長野のりんご農家さんまで届けたこともあるそう

最盛期には年間10万個も運んだとか。遠く長野のりんご農家さんまで届けたこともあるそう

りんごかごの素材は竹。中でも近くの山々に多く生えている、根曲がり竹という種類を使います。

りんごかご_三上幸男竹製品販売センター
三上幸男竹製品販売センター
三上幸男竹製品販売センター

軽くて丈夫、さらに抗菌作用があると言われる竹は、ずっしり実ったりんごを入れるのにぴったり。竹特有のしなりで、商品である大切な果実に傷をつけません。

底の部分を編んでいるところ

底の部分を編んでいるところ

サイズはちょうど、りんご箱に入る大きさ。

りんごかご_三上幸男竹製品販売センター

持ち手はりんごをゴロゴロ入れても持ちやすいよう長めに作られています。

りんごかご_三上幸男竹製品販売センター

本体の縁の部分は特に、りんごに傷がつかないよう、やわらかい1年目の竹が使われているそうです。

やわらかい内側は傷んでしまうため、全て取り除き、皮だけを使います

やわらかい内側は傷んでしまうため、全て取り除き、皮だけを使います

当日制作中だった小さめサイズのかご。肌あたりが痛くないよう、節や余分なヒゲはバーナーで燃やして取り除いていました

当日制作中だった小さめサイズのかご。肌あたりが痛くないよう、節や余分なヒゲはバーナーで燃やして取り除いていました

どこを取っても、仕事の道具として考え抜かれた機能的な作り。

「だけど今は、りんご農家の99%は竹のりんごかごは使っていないからね」

幻のかごになる前に

りんご王国の発展とともに青森で育まれたりんごかごは、新たに登場したプラスチックかごに次第に取って代わられることに。

需要が減れば供給側も減ってしまうもので、みるみる作り手が減っていくのを前に、三上さんは配送の仕事をやめ、それでも竹製のかごを使ってくれる農家さん分は確保できるよう、30歳ごろから自分も作る側に回るようになったそうです。

ついにほとんどの農家さんが竹製を使わなくなった頃には、りんごかごの作り手も三上さんの一軒のみに。

りんごかご_三上幸男竹製品販売センター

あわや幻のかごに‥‥と思いきや、

「注文こなければ、ぱっとやめるんだけど。ずっと来るから、かご作るの、やめられないんだ」

三上さんは今年で90歳。今も全国からやって来る注文をこなすために、土日も休みなくかごを作り続けています。

りんごかご_三上幸男竹製品販売センター

業務用だったりんごかごを、全国から人が買いに来る理由

今では3、4ヶ月待ちという人気ぶりを支えるのは、その企画力。

業務用としてのりんごかごの需要が減っていく中、三上さんは周囲からの「こんなかご、作れる?」「もうちょっと小さいサイズはない?」といった声を聞き逃さず、りんごかごを応用した様々なかごを創作。

農家さんからの注文に代わり、少しずつ一般のお客さんからの注文が増えていったそうです。

同じ形でも、網目の大きさを変えるだけで雰囲気がガラッと変わります

同じ形でも、網目の大きさを変えるだけで雰囲気がガラッと変わります。サイズも大きな1サイズのみだったのを、現在では大中小と用意

当日作っていたのは、りんごかごより小ぶりな「椀かご」。一番人気だそうです

当日作っていたのは、りんごかごより小ぶりな「椀かご」。一番人気だそうです

「数えたことないけど、40種類くらいかな。色々あるので見てみてください」

促されて向かった工房の奥の販売所は、さながら「かご天国」でした。

りんごかご_三上幸男竹製品販売センター

いざ、工房の奥の「かご天国」へ!

どれにしようか、迷う時間も楽しいかご天国へ

りんごかご_三上幸男竹製品販売センター
りんごかご_三上幸男竹製品販売センター

自分だったら何に使おうか、とじっくり考えてしまいます

りんごかご_三上幸男竹製品販売センター
こちらはもともと、漁師さん向けに売っていたというかご。右はイワシなど小さな魚も入るように、網の目が小さくなっています。50歳ごろまでは、北海道まで売りに出かけていたそう

こちらはもともと、漁師さん向けに売っていたというかご。右はイワシなど小さな魚も入るように、網の目が小さくなっています。50歳ごろまでは、北海道まで売りに出かけていたそう

りんごかご_三上幸男竹製品販売センター
長年使っていくと、こんな色合いに

長年使っていくと、こんな色合いに

「他にも色々なかごを作ろうとする職人はいたけれど、みんな途中でやめてしまった。

今も土日関係なく作っているけれど、全然苦じゃない。結局、面白いんだよ。気晴らしになるでしょ。休みなしさ」

りんごかご_三上幸男竹製品販売センター

三上さんの柔軟な発想力で仕事の道具から暮らしの道具へと変身し、消滅の危機を乗り越えたりんごかご。

技術は今、娘さんが引き継がれていると聞いて嬉しくなりました。

「こないだは大阪からわざわざ飛行機とレンタカーを使って買いに来た人がいたよ。交通費の方がずっと高くついちゃうのに、面白いよね」

りんごかご_三上幸男竹製品販売センター

そうまでしてでも買いに来たくなる気持ちはよくわかる、と思いながら、私も早くお買い物がしたくてたまりません。

<取材協力>
三上幸男竹製品販売センター
青森県弘前市愛宕山下71-1
TEL:0172-82-2847

文:尾島可奈子
写真:船橋陽馬
*こちらは、2019年7月19日の記事を再編集して公開しました。
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