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山、窯、ときどきハマ。焼き物の神様が見守る、波佐見焼ふるさと巡り

投稿日: 2018年3月18日
産地:
編集:
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総面積約56㎢、人口約1万5000人の長崎県波佐見町。この小さな町で作られている焼き物が、日用食器のおよそ16%のシェアを誇るということを知っていますか?

最近になって「波佐見焼」という言葉を耳にする機会が増えている印象ですが、そのシェア数が物語るように、実は400年以上もの歴史をもつ焼き物なんです。

波佐見焼

どこかで見た覚えがある器がありませんか?

前回は、そのルーツを知るためにやきもの公園の一角にある「陶芸の館」を訪れました。

今回は、かつて波佐見焼を大量に生み出した世界最大級の登り窯跡が存在するという中尾山へ。

はさみ観光ガイド協会会長の石原正子さんと一緒に、何気ない風景の中に潜む「焼き物の町」らしさを探しながら歩いてみました。

波佐見町

やきもの公園を出ると、食器の生地を載せたトラックを発見!窯元まで運ぶのでしょうか。やっぱり焼き物の町に来たのだなと実感させられます

波佐見町案内図

商店街の案内図だって、焼き物でできています

中尾山で波佐見焼の“日常”を覗く

中尾山の麓へは、やきもの公園から車で5分ほど。中尾山は、波佐見の中で今でも数多くの窯元が集まる場所です。ここからは、歩いて山上にある中尾上登窯跡を目指します。

中尾山ゲート

道沿いの塀には地元の窯元さんたちが協力して作った焼き物の装飾が施されていました。この丸みを出すのが至難の業なのだそう。

波佐見町 中尾山
波佐見町 中尾山

色々な絵柄を見つけながら、勾配のある坂道も楽しく登れました

波佐見町 中尾山
波佐見町 中尾山

道中、石原さんの案内で、波佐見焼の工房にお邪魔することに。中尾山には見学可能な工房が多く、波佐見焼がどのように作られているのかを間近で見ることができます。

波佐見町 中尾山

波佐見焼の特徴は分業制。こちらは生地づくりを行う工房。石膏型に入れて乾燥させているところでした

波佐見町 中尾山

こちらは窯焼き屋さん。窯道具の一つ、「サヤ」がずらり。サヤは器を守る保護ケースのようなもので、これに入れて窯で焼きます

波佐見町 中尾山

ろくろを使った成形作業も見せてくれました

焼き物の神様にも会えます

もうすぐ中尾上登窯跡というところに、焼き物の神様を祀る陶山神社がありました。石原さんによれば、「地元の人たちは、陶の山であることは当たり前のことだからか、『山神社』と呼びます」とのこと。昔から、人々の生活のすぐそばに焼き物があったことがうかがえます。

陶山神社
陶山神社

社殿の中に入ると、色鮮やかな天井絵が目に飛び込んできます。これらは中尾山の窯元の絵師たちが描いたもので、2016年11月に刷新されました

陶山神社
陶山神社
陶山神社

社殿の脇には、焼き物に必要な三大要素「火」「水」「土」の文字が彫られた石碑も

波佐見町 中尾山

山神社の隣にある展望所からの眺め。明治・大正に作られた8本の石炭窯の煙突が焼き物の里らしい風情を残しています

世界第2位の大きさを誇った登り窯

ようやく、お目当ての中尾上登窯跡に到着。

江戸時代半ばごろには、全長約160m、33室もの窯室を擁した世界第2位の規模を誇っていた登り窯です。ちなみに、同じころ世界第1位だった大新登窯跡も中尾山にあり、大量の波佐見焼がこの小さな里山で次々に生産されていたのを想像すると、驚かされます。

中尾上登窯跡

登り窯で焼いたレンガを用いて復元整備中の中尾上登窯跡

中尾上登窯跡

一番上まで登って振り返ると、素晴らしい見晴らし。里山の向こうには鬼木の棚田が見えました

「おそらく、半分くらいの長さだったものが、波佐見焼の需要が増えていくにつれて上へ上へと開墾して窯室を増やしていったんでしょうね」と石原さん。

私たちの手元に磁器が届くようになったのも、この大量生産のおかげ。かつて、波佐見焼の職人たちが日々この坂道を行ったり来たりしていたかと思うと、何だか頭が下がる思いです。

里山の風景に溶け込んだ窯道具たちにも注目を

中尾山を歩いていて面白いのが、しばしば景色に溶け込む窯道具たちに出くわすことです。

道端には、窯焼きをする際に焼き物を載せる「ハマ」がよく落ちていました。ハマに載せて焼くことで形が歪まずにきれいに仕上がるとのこと。焼くとハマも縮んでしまうので、使い捨てなんだそうです。

波佐見町 中尾山

「この辺の子どもたちは、石の代わりにハマで水切りをして遊んだりするんですよ」と石原さんが教えてくれました

波佐見町 中尾山
波佐見町 中尾山

ハマもこんな風に並べると、道を飾る装飾に

波佐見町 中尾山

窯元の建物を交流の場へと改修した「文化の陶 四季舎」。外壁にサヤを埋め込んでアクセントに

波佐見町 中尾山

窯に使われていた耐火レンガも入口部分に再活用

波佐見町 中尾山

「陶芸の里」と記された石碑は、中尾山で見つかったさまざまな時代の波佐見焼のかけらやトンバイが埋め込まれていて、ちょっとしたアート作品のよう

焼き物づくりの気配が随所に感じられる波佐見の町。

もうすぐ、桜陶祭(2018年4月7日~4月8日)や陶器祭り(2018年4月29日~5月5日)で町がにぎやかになる季節です。町の空気や匂いを感じながら、ぜひ自分の足で波佐見焼が生まれてきた現場を歩いてみてください。きっと、波佐見焼がもっと身近に感じられるはずです。




<取材協力>
長崎県波佐見町観光協会
http://hasami-kankou.jp/
はさみ観光ガイド協会
http://hasami-kankou.jp/guide

文:岩本恵美
写真:岩本恵美、波佐見町観光協会
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