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「波佐見焼」とは?その特徴と歴史

投稿日: 2019年11月5日
産地:
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波佐見焼とは、長崎県の中央北部に位置する波佐見町付近でつくられる陶磁器のこと。

波佐見町は、長崎県佐世保市、川棚町、佐賀県有田町、武雄市、嬉野市と隣接する県境の町で、総面積約56㎢、人口は約1万5000人。中央は平野部、周囲は小高い山々に囲まれた盆地地形をなし、とくに南東部の山々からは磁器の元となる陶石が産出される。

波佐見町 中尾山

波佐見町

長らく「有田焼」として売られてきた歴史を持つため近年までその名前が表に出ることは少なかったが、400年以上の歴史を持ち、現在でも日用食器のおよそ16%のシェアを誇っている。

長崎県波佐見町の工芸品 波佐見焼(はさみやき)

波佐見焼の歴史

波佐見町の前身である波佐見村は、1570年代頃に日本最初のキリシタン大名として著名な大村純忠の領地となり、その後江戸期を通じて大村藩に属した。

転機となったのは、1592年から1598年にかけて行われた、豊臣秀吉による朝鮮出兵、文禄・慶長の役。この戦いは別名「焼き物戦争」とも呼ばれ、各地の大名たちが、焼き物の高い技術を得るために朝鮮からたくさんの陶工たちを連れ帰った。

陶芸の館 展示パネル

九州各地の古窯は“焼き物戦争”がきっかけで誕生したものが多くある

大村藩も例外ではなく、朝鮮から連れ帰った陶工たちと波佐見町村木の畑ノ原、古皿屋、山似田の3か所に連房式階段状登窯を築き、1599(慶長4)年、焼き物づくりを始めた。これが波佐見焼の始まりである。

はじめは施釉陶器の生産が中心だったが村内で磁器の原料である陶石が採掘されるようになり、しだいに染付と青磁を中心とする磁器へ移行。ついには大村藩の特産品となり、江戸後期には染付の生産量が日本一に。こうして波佐見焼は、染付・青 磁ともに大生産地に発展していった。

波佐見焼
波佐見焼

中央の五弁花 (ごべんか) は波佐見焼によく用いられた文様の1つ。

17世紀半ばには、中国で起きた内乱の影響で、中国産の焼き物の輸出が中断。その代わりとして波佐見焼を含む肥前の焼き物に白羽の矢が立ち、東南アジアを中心に輸出され、波佐見焼の窯の数も職人の数も一気に増えていく。

波佐見焼

底の深い大きなどんぶり鉢は、当時の日本の食生活にはないもの。海外向けの商品として作られていた

1690年ごろに中国の内乱が収まると、海外輸出量は減少。そこから、国内向けの日用食器を量産していくようになる。

明治以降は鉄道の発達により、出荷駅がある有田から全国に流通していたため、波佐見と有田、2つの産地の磁器は合わせて「有田焼」としてその名を全国に広めていく。

こうして2つの産地は売上を増やし続け、1980年後半のバブル期に最盛を迎えることになるが、2000年頃に問題となった産地偽装問題をきっかけに、「波佐見焼」と厳密な生産地表記が必要となった。

波佐見焼の特徴

波佐見焼の特徴は、白磁の美しさと、呉須(藍色)で絵付けされた繊細な染付の技術。時代に合わせて改良を続けながら、庶民の器としてさまざまな日用食器が誕生した。いまも長崎県最大の窯業地であり、日用和食器の出荷額は全国3位を誇る。

波佐見

白磁にあい色の配色が美しい、西海陶器の小皿。

日用食器の一つ、唐草模様を筆で簡単に描いた「くらわんか碗」は丈夫で壊れにくく、波佐見焼の代表作となった。波佐見焼の食器を通して庶民の食文化は大きく変わり、焼き物が暮らしに身近なものになっていったともいわれる。

波佐見wiki

波佐見焼を代表する伝統的な「くらわんか茶碗」

人口約1万5000人の小さな町で高品質、大量生産を可能にしたのが、「分業制」。

人口の2割から3割の人が焼き物に関係する仕事に携わっている波佐見町。陶磁器の石膏型を作る「型屋」、その型から生地を作る「生地屋」、生地屋に土を収める「陶土屋」、その生地を焼いて商品に仕上げる「窯元」、陶磁器に貼る絵柄のシールを作る「上絵屋」、注文をまとめ、配送などを手配する産地問屋などを経てひとつの製品が世に出される。

波佐見
長崎県波佐見町「村松生地」の信輔さん作業風景
波佐見焼きの圧力成形の型

圧力成形の型

分業制によって各工房がその仕事に特化した技術を高め、相乗効果で波佐見焼全体のレベルも向上してきた。

※波佐見焼 分業制のすべて

現在の波佐見焼

2010年、産地問屋として3代続いていたマルヒロが新ブランド「HASAMI」を発表。

波佐見焼wiki

HASAMIのマグカッップ

当時の主流だった「薄くて繊細」とは真逆の、「厚くて無骨」な「HASAMI」ブランドのマグカップは、展示会等への出品を経て全国的なヒット商品に。アパレルショップや雑貨屋にも並び、波佐見焼の売上と知名度向上に大きく貢献した。

毎年春に開かれる陶器市「波佐見陶器まつり」も活況。

かつては、出品する9割が有田焼で、波佐見焼は肩身の狭い思いをしていた。しかし今では状況は変わり、全国から波佐見焼を目当てに訪れる人も増え、着実に存在感を強めている。2019年の陶器まつりには約320,000人が来場した。

波佐見焼

新しいブランドの誕生をきっかけに産地全体が盛り上がり、知名度と売上が向上。右肩下がりが続いていた出荷額も、2014年には前年を上回り、再びの成長曲線を描きはじめた。

長崎波佐見焼きの茶器や食器

<参考>
陶磁器の考古学 第二巻(佐々木達夫編/雄山閣)
波佐見陶磁器工業協同組合
マルヒロ

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