さんち 〜工芸と探訪〜

SUNCHI ~ Explore japan through regional crafts ~

このページの先頭へ

あなただけの
さんちの手帖に

会員登録を行うことでお気に入りの読み物に栞を挟むことが出来ます。記事に栞を挟んで自分だけの栞帖をつくってみませんか?
メールアドレス:(必須)
※ 「.@(@の前にドット)」、「..(ドット2つ)」を含むメールアドレスはご利用いただけません
メールアドレスは既に使われているか、正しい形式で入力してください
会員登録する
既にアカウントをお持ちの方は こちら

退会手続き

退会すると栞した読み物や産地の情報が完全に消去され復元することはできません。本当に退会しますか?
キャンセル
退会する
細萱久美が選ぶ、生活と工芸を知る本棚

細萱久美が選ぶ、生活と工芸を知る本棚『いいもの ほしいもの』

投稿日: 2017年2月21日
産地: 岐阜
  • LINE

こんにちは。中川政七商店バイヤーの細萱です。
仕事では、日本の工芸や食品など、生活に関わる商品の仕入れや、オリジナル商品の企画に携わっています。そんな仕事柄、工芸にまつわる基礎知識から、商品のアイデアソースとなるモノ・コト・ヒトには常にアンテナを張っていると思います。
情報源はさまざまで、製造現場や一般市場、ネットやSNS、自分や他人の生活そのものから見つかることもありますが、幅を広げる点で頼りにしているのは、本や雑誌などの紙媒体かもしれません。製造現場を知ることは深掘りするには欠かせませんが、幅広い知識や思想、イメージと言ったことを広げる作業には本がとても大事です。アナログ人間なので紙が好きとも言えますが、ふと思い立った時にいつでも見返すことが出来る本は増える一方です。
仕事上で何らか影響を受けた本ではありますが、単純に面白かったり、素敵なので紹介したい本がたくさんあります。工芸や、工芸のある生活が好きな方には、ご興味頂けそうな本を紹介していきたいと思います。

初回に紹介する本のタイトルは『いいもの ほしいもの』。1984年発行のいきなり絶版からで恐縮ですが、古本は比較的手に入ります。著者の秋岡芳夫さんは、戦後日本の工業デザイン黎明期から90年代にかけて活躍した工業デザイナー。工業デザイナーでありながら、消費社会に疑問を投げかけ「暮らしのためのデザイン」を持論に、各地で手仕事やクラフト産業の育成にも尽力された方です。秋岡さんの提唱していた「身度尺(しんどじゃく)」という概念が興味深く、人間の体の寸法に作ったものは使いやすいく、体の寸法や体のうごきに合わせてものを作ることを「“身度尺”で測って作る」と言い、しばしデザインに活かされていました。機能とデザインの両立は、中川政七商店のブランドコンセプトに通ずるものがあるので参考となる考え方です。

この本では、産業ロボット任せでは作れない、工芸による「いいもの ほしいもの」を蒐めています。
例えば、漆のお椀。秋岡さんの考える工芸は、毎日使えるようなものを言います。漆椀も毎日使うので、秋岡さんの3年使ったお椀は1日あたりで計算すると9円だそう。しかも初めより艶が増し、まだまだ使えるのでかえって割安である、というお話。現代でも数字はそう変わりません。
他には関市の小さな工場で作られるポケットナイフ。工程の一部で機械を使うので、「機械で手づくり」です。このような工芸品は意外と多く、機械を手道具のように使いこなせるかは生き残りにおいても鍵。意識のめざめた現代の職人にしかやれないと秋岡さんは言っています。
そして、先ほどの身度尺の発想から生まれた椅子のお話も。街の椅子と家の椅子には、違いが必要だと。日本では普通、家では靴を履かないのでその分座面高が街の椅子より低いべきで、しかも女性の身長に合わせた高さがなぜか男性にもしっくり。椅子の座は、低が高を兼ねる発見をしたとのことです。近い考えから生まれた「あぐらのかける男の椅子」は商品化されて今でも販売されています。
他にも30余りの工芸品が、職人やデザイナー、工場での手づくり、という観点から紹介されており、中には今では作られていないモノもありますが、いいモノ、気に入ったモノを大切に使おうという「消費者から愛用者へ」の秋岡さんの考えは、現代でも志向のひとつの主流となっているシンプルライフスタイルの参考になる本です。


<今回ご紹介した書籍>
『いいもの ほしいもの』
 秋岡芳夫/新潮社出版



細萱久美 ほそがやくみ
東京出身。お茶の商社を経て、工芸の業界に。
お茶も工芸も、好きがきっかけです。
好きで言えば、旅先で地元のものづくり、美味しい食事、
美味しいパン屋、猫に出会えると幸せです。
断捨離をしつつ、買物もする今日この頃。
素敵な工芸を紹介したいと思います。

文・写真:細萱久美
  • LINE

Follow us

全国の工芸・産地にまつわる読み物を毎日更新しています

さんち〜工芸と探訪〜の読み物は各種ソーシャルメディアでも配信中。 今すぐフォローして最新情報をチェックしよう!

関連の読み物

「さんち 〜工芸と探訪〜」がアプリ「さんちの手帖」として登場しました。記事を読むだけではなく、旅の栞や旅印帖として使える、あなたのおともになるアプリです。

  • App Storeからダウンロード
  • Google Playで手に入れよう

アプリの詳細を見る