さんち 〜工芸と探訪〜

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日本全国、郷土玩具を求めて宝探しの旅へ 蒐集家の旅 郷土玩具編

投稿日: 2016年11月1日
産地: 福岡
編集:
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旅先を決める時、旅行ガイドやSNSで話題の場所を調べるのもいいですが、まずは自分自身の「好きなもの」と向き合いたいもの。

そこからスタートすると、自分好みの新しい出会いや、本当に求めているような体験ができるかもしれません。



今回は、“郷土玩具”との出会いを求めて旅に出る、素敵な収集家をご紹介します。ご自宅を訪ね、たくさんのコレクションを見せて頂きながらお話を伺いました。

“郷土玩具”とは、昔から日本各地で作られてきた”郷土”の文化に根ざした”玩具”。だるま、木彫りの熊、こけし等も郷土玩具のひとつ。その土地の風土・文化に密接が反映されています。

同じ「うそ」でも、顔と形が違うらしい。

福岡の郷土玩具・うそ

菅原道真を天神さまとして祀る神社で授与される、鷽(うそ)。

「鷽」という名の鳥がモチーフとなった郷土玩具です。福岡県の太宰府天満宮をはじめとし全国の神社で行われる、「鷽替え」という神事で用いられます。鷽(うそ)と嘘(うそ)をかけ、前年にあった凶事などを「嘘」とし、幸運がくるよう祈願されます。

「1月の天満宮の縁日、近くの神社で手にいれたのが、はじめての“鷽”でした」。調べてみると、同じ“鷽”でもいろんな種類があることが分かったそう。

「全国に、いろんな鷽がいるんです。太宰府天満宮のくるくるの毛は王道だけど、ストレートもいるし、形もぜんぜん違う。表情も地域によって全然違って。これ、鷽?みたいな子もいます」。今では、専用棚があるほど集められた“鷽”コレクションの前で、「鷽の旅」の思い出を教えて下さいました。


いいホテルよりも、レアな郷土玩具

郷土玩具コレクターのご自宅

鷽を求めて三泊四日で出かけた、九州への旅。「まずは、“鷽”のいるところを地図に書き込んで行って、コースを組みます」。メモを見せてもらうと、神社や工房の名前がぎっしりと並んでいます。かなり綿密な計画をたてられるようですが、蒐集以外はフリーなんだとか。

「決まってるのはどこの工房をまわるかと、地元の名物を食べるお店の候補ぐらい。泊まるところは決まってないことも多いです。決めちゃうと、お昼の行動に縛りが出てきちゃうので。」「夜、泊まるところがどこも空いてなくって、夜中まで移動した」なんていうハプニングも、楽しい旅の思い出に聞こえました。

途絶えてしまう前に。

郷土玩具収集家の旅

ひとつひとつが人の手によって作られているため、そんなに沢山は作れない郷土玩具。また、残念なことに近頃では、作り手の高齢化や後継者の不足などにより、徐々になくなってしまうものも少なくありません。

「はじめは近場で、土日に行けるところを周ってました。そのうち旅行で、近くに行ったら買おうかなーなんて。でも、“そのうち”なんて言ってると、どんどん買えなくなっていってる現状に気が付きました」

行こうと思っていたお店が閉店。作り手が辞めた。という話を聞くうち、居ても立ってもいられなくなったお二人。

「無くなってしまう前に、行かなくては」。旅行の合間に郷土玩具を探すのではなく、“郷土玩具を目的に”旅に行くようになりました。蒐集熱に一気に火がついたそうです。

「そんな遠くから何しにきたん」って言いながらも、喜んでくれる

郷土玩具収集家の旅・雉子車

「地方の工房や神社へ行く時はたいてい電話をして、行く日と時間を伝えておくんです」という話に、予約制なのかと聞くと、「普段は開けてない工房や、作家さんのご自宅にしまわれてるものも多いので」と、教えてくださいました。

「行ってみると普通のお家だったり、入口が分からない工房だったり、見つけるのが大変です」

訪ねていくと「そんな遠くからわざわざ何しにきたん」って言いながらも、喜んで迎えてくれるそうです。「倉庫にしまってある昔の作品を見せてくれたり、サンプルで作ったものを下さったり。絵付けもしてったらどう?なんて勧められることもあって、だいたい予定より長くなっちゃうんです」と笑って話される予定外の長居は、お二人にとっては想定のうちなのかもしれません。

季節で変えたり、由来に沿ったり。

鹿児島の郷土玩具・オッのコンボ

旅から連れ帰った郷土玩具は、メインの飾り棚だけでなく家中のあちこちに飾られていました。台所で見つけたのは、無病息災を祈願する縁起物、「オッのコンボ」。台所の守り神としても知られている鹿児島の郷土玩具です。

また、お話へ伺った10月、玄関の一番手前で迎えてくれたのは船渡張子(ふなとはりこ)。大きなかぼちゃからひょうきんな表情の鼠が顔をだす郷土玩具・埼玉の船渡張子は、ハロウィンが近いことにちなんで飾られたそうです。

「モチーフや素材によって、飾るものを変えます。メインの郷土玩具にあわせて、横の子たちも色を揃えたりしながらいつも楽しんでます」旅先から持ち帰ったものを家でも楽しむ生活は、旅の楽しさが日常にもずっと続いているような素敵な暮らしでした。

ずっと、宝探しをしてるみたい。

郷土玩具

情報も交通も便利になり、どこにいてもものが手に入るようになった今でも、現地に行かないと出会えないものがまだまだあります。工芸品は、人の手で作られているからこそ大量生産はできず、全国流通に乗らないこともしばしば。

「郷土玩具は、その土地の文化が色濃く反映されてるから特に面白い」と、語ります。「僕らが行くことを楽しみに、物づくりを続けて下さってる方もいるんです。はじめて行った時に辞めると言ってた作り手さんが、今では新作ができる度に連絡をくれます」。


蒐集家の旅は、訪れた土地の文化の継承にもつながっていました。

「ほしいものは沢山あるんだけど、なかなか見つからない。ずっと、宝探しをしてるみたいです」。未だ見ぬ郷土玩具を求めて、お二人の旅はこれからも続きます。

郷土玩具収集家の家

蒐集家:郷土玩具
大阪府にお住まいの矢嶋さんご夫婦。「郷土玩具が、素敵に飾れる棚がほしい」というのが家を建てる時の設計リクエスト。目の前に森が広がる気持ちのいい窓から入り込む自然光を受け、郷土玩具の棚ではその時期の選抜メンバーが気持ちよさそうに並んでいました。

 文 : 西木戸弓佳
写真:木村正史

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