さんち 〜工芸と探訪〜

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わたしの一皿

わたしの一皿 キリッとしないガラス

投稿日: 2017年7月19日
産地: 福岡
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きゅうり、空芯菜、ししとう、モロヘイヤ、ズッキーニ、おかひじき、オクラ‥‥。テーブルは緑の野菜の乱打戦。夏がやってきましたね。もう10日以上の真夏日が続いています。梅雨、まだ明けてないはずなんだけどな。クーラー付け過ぎで電気代がひたすら気になる、みんげい おくむらの奥村です。

今日は「オクラ」。夏野菜の四番打者といってもよいかもしれません。世界中で愛される野菜。生でもよし、ゆでてよし、煮込んでもよし。暑い日はとにかく料理もめんどくさい。出来ればささっと作れて、夏バテにならないような栄養のとれるものを食べたい。それならこのネバネバ野菜はぴったりの素材。

あついあつい日、使いたいのはやっぱりガラスのうつわ。前にも琉球ガラスを紹介したけれど、今回は福岡、旧小石原村 (きゅうこいしわらむら・現東峰村) で再生ガラスのうつわを作る太田潤手吹きガラス工房。

小石原 (こいしわら) は焼き物の産地。太田潤さんは小石原焼の家系に生まれた次男坊。長男が焼き物の道に入り、彼自身はガラスの道に入りました。修行は沖縄ですが、今は郷里で、あこがれる倉敷ガラスの小谷真三さんのように1人きりで 再生ガラスのうつわを作っています。

ガラスは焼きものとちがい、短時間の勝負。炉の中からガラス原料を取り出し、一気に成形していく。数人の工房なら分業で行程ごとにぽんぽんと作業が受け渡されていきますが、1人だとそうはいきません。全ての段取りが自分の両手の届く範囲にあり、狭い中でリズミカルに動き回り、1つの形を生み出します。

太田潤さんのガラスの良さは、キリっとしていないところ。していないところって何だよ、とは言わないで。同じコップを10並べると、10の表情がある。工業製品ならこれはダメでしょう。手の仕事でも同じコップなら、出来るだけ同じサイズ、形は当然意識して作られています。しかし、彼のものには10の表情がある。いや、15くらいあるかもしれない。なんだかほめているのかわからないようですが、ほめています。

今回使ったうつわもフチにゆがみがあるもの。作家もののわざとくずした形にしたものって、そのいやらしさが伝わってきて好みではない。でも、こう作りたいというのがあって、そこに辿り着いているのか辿り着いていないんだかわからない、そんな着地点のこのうつわのゆがみには愛らしさがあります。名誉のために言っておきますが、ヘタということではないんですよ。

ゼロから完成までが全て1人の手。原料として不安定な再生ガラスを、体調や心もちも一定しないふつうの人が吹く。そんなうつわなので、どこか仲の良い友人のような親しみがあります。

さて、オクラは板ずりで下ごしらえをして、さっとゆでる。クッタリしたら台無し。生でも食べられる野菜なので食感がきちっと残るようゆでたいところ。ゆで上げて冷水にとってオクラがおちついたところで、いそいで梅をたたき、調味料と合わせる。オクラをささっと切って和えるだけ。オクラの梅肉和えの完成。この料理は時間が経つと色が悪くなるので作りたてを食べたいもの。

この時期、明るい時間はガラスのうつわが光を通してより表情豊かになります。ひとときの涼をテーブルに。

最後に、小石原を含む東峰村やその周辺のこと。7月上旬の豪雨で甚大な被害に見舞われています。特に、高速の杷木 (はき) を降りてから小石原に向かう、のどかな山間のエリアが被害が大きかったようです。買い付けにむかう時にいつも季節季節を感じさせてくれる日本の里山の風景がありました。一刻も早くおだやかな暮らしが戻ってきますように。



奥村 忍 おくむら しのぶ
世界中の民藝や手仕事の器やガラス、生活道具などのwebショップ
「みんげい おくむら」店主。月の2/3は産地へ出向き、作り手と向き合い、
選んだものを取り扱う。どこにでも行き、なんでも食べる。
お酒と音楽と本が大好物。
みんげい おくむら
http://www.mingei-okumura.com
文:奥村 忍
写真:山根 衣理
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