さんち 〜工芸と探訪〜

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わたしの一皿

わたしの一皿 富士吉田のうつわ

投稿日: 2018年1月23日
産地: 富士吉田
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宝くじが当たったらどうするか。いつも考えてしまう。世界中行きたいところだらけ。蒐集もやめられないから買いたいものだらけ。

ついワクワクしちゃうけど、実は宝くじは買わない。みんげい おくむらの奥村です。

当たってもらいたいものは当たらないのに(買わないから当然だけど)、あたってほしくもないものは勝手にあたる。食材の話。

たとえば先月取り上げたサバ、そして今日の食材カキ。過去を振り返ればどちらにも派手にあたってます。あたると本当に辛い、でもやめられない。不思議なもんだ。

今日は寒い、寒いところから地元の市場に届いたカキ。北海道のサロマ湖から。サロマ湖は汽水。海水と淡水がまじった湖で、北のゆたかな海と大地の栄養が存分に蓄えられている。

もうそれだけでずいぶんと期待が高まりますが、ここのカキは漁協が独自にノロウイルスの検査をしているそうで、安心感もある。

どうやって食べようか。もちろん生でいけるけど、個人的にはちょっと加熱してさらに甘みが出たものが好きだ。ということで蒸すことにする。焼きもよいが、蒸すほうが味のバリエーションも付けやすいので個人的には好き。

どう食べるでも、まずはカキの殻を洗う。海藻やら付着物を取って、少し身ぎれいに。最近のものはもともときれいにしてあるものが多くそんなに神経質に洗うこともないが、手にずっしりくると、ぎゅっと詰まった身を想像してつい顔がほころぶ。

牡蠣を洗う

マニアックな話になって申し訳ないが、二枚貝をむくのがとても好きだ。これは実に経験を要する技術。

カキなら、貝の上下、貝柱の位置がポイントで、貝剥き(家にありますか?)を差し込み、最短でもっとも美しく貝を開けるその瞬間に人生の歓びすら感じるのであります。

せっかく閉じ込められていた汁を全てこぼしてしまったり、貝柱がうまく切れずみじめな姿になってしまうとしょげる。今日はうまくいった。そして実はこの段階で一つ生で食べています。やっぱり生もうまいうまい。

ところで、食卓にそのままうつわとして出せる調理道具というのがある。例えばすり鉢。白和えを作ってそのまま出したっていい。今日もそんな道具だ。竹ザル。貝を乗せて鍋に入れて蒸す。

蒸しあがった牡蠣

そしてそのまま食卓に。見た目がとてもよい。竹ザルはそばぐらいなら使うという方、それだけじゃもったいない。敷紙を敷いて揚げ物を乗せたって美しい。うつわとしてもずいぶん頼もしい道具なんです。

今日使った竹ザルは富士山麓で取れるスズ竹を使ったもの。年配の熟練の編み手が多い中、若い編み手さんにお願いしているもので、サイズ違いで持っているととにかく便利。

全国的に多い真竹のものに比べると、やわらかくしなりの強さを感じるのが特徴。スズ竹は、竹を採取してすぐに編むことができるので編み立てのカゴは青々とした美しさが。使い込めばだんだんと色が落ち着き、茶色、飴色っぽくなっていく。うちのはこれで3年目。少し落ち着いてきました。

牡蠣の寄り

鍋に合う大きさのザルにカキを並べて酒や調味料を。今日は中華風。ごま油と刻んだ豆豉(トウチ)を効かせて、あしらいには豆苗を。生でも食べられるカキだから蒸し加減には気をつけて。蒸しすぎて小さく硬くなってしまっては意味がない。

蒸しあがったらまずは殻にたまった汁をずずり。クラクラするほどの旨味。あとは大ぶりの身を一気に口に放り込む。ほっぺたの内側からまたも旨味の応酬。とぅるりと消えてなくなった後も海の余韻がしばらく続く。

竹ザルの上の蒸し牡蠣

なんて贅沢をしてしまったんだ、とあらゆる方面に感謝。もつかの間、二巡目にいきたい。ザルを持って次のカキを盛り、鍋に設置。蒸しガキは一気にやってはもったいない。自分のリズムで何度も出来立てを食べるに限る。これで冬のエネルギーをぐぐっと蓄えて寒さをもう少し耐えるのだ。



奥村 忍 おくむら しのぶ
世界中の民藝や手仕事の器やガラス、生活道具などのwebショップ
「みんげい おくむら」店主。月の2/3は産地へ出向き、作り手と向き合い、
選んだものを取り扱う。どこにでも行き、なんでも食べる。
お酒と音楽と本が大好物。
みんげい おくむら
http://www.mingei-okumura.com
文:奥村 忍
写真:山根 衣理
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