さんち 〜工芸と探訪〜

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おばあちゃんが「母親の味」と口コミする新潟・十日町の店「Abuzaka」 豪雪地帯が生んだ食文化「ごったく」とは?

投稿日: 2018年8月2日
産地: 越後妻有
編集:
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旅に出たら、その土地らしいふるさとの食を味わってみたくなるもの。

今日訪れたのは「大地の芸術祭」を開催中の新潟県十日町市。ここではどんなお料理が食べられてきたのでしょう。

現地の方に、伝統食のおそばと地域に伝わるお料理が食べられるお店があると教えてもらいました。地元のおばあちゃんたちから「母の手料理の味」と評される人気店なのだそう!さっそく訪ねてみることに。

田んぼの真ん中でブッフェランチ

十日町駅から10分ほど車を走らせると、一面に広がる田園風景。緑豊かな里山を臨む場所に、黒いモダンな建物が見えてきました。

Abuzaka

お店の名前は「そばの郷 Abuzaka」。

新潟名物の「へぎそば」と、「ごったく」という食文化を気軽にブッフェスタイルで体験できるお店です。

Abuzakaの看板

新潟は十日町に伝わる「ごったく」とは?

「ごったく」とは、十日町地域の冠婚葬祭などで人が集まった際にお客さんをもてなす食事の席のこと。親戚や近所のお母さんたちが1つの台所に集まってわいわいと料理を作り、大皿に乗せて振る舞われてきました。

ごったく

ごったくに使われる食材は、雪に閉ざされる季節に備えて作られる乾物や干物、里山で採れた山菜や野菜など。煮物や和え物、天ぷらといった料理が並びます

へぎそば

十日町名物の「へぎそば」。フノリを混ぜることで生まれるコシと喉ごしが人気です

お店を訪れたのは平日のお昼どき。店内は小さな子ども連れの方から、年配のグループまで幅広い年齢層のお客さんで賑わっていました。みなさん地元の方のようです。

私もさっそくブッフェ台へ!

大皿に盛られた様々なごったく

山菜をはじめ、地元で採れた季節の食材を使って作られる煮しめ、味噌豆、切り干し大根、ぬた、サラダ、だし巻き卵などがずらり。お蕎麦につける特製カレー汁や自家製の甘酒とタピオカの冷たいデザートまでありました!

季節の野菜、山菜の天ぷら

季節の野菜、山菜の天ぷらも盛りだくさんです

ブッフェスタイル

種類豊富なので、どれにしよう?と目移りします。お皿に乗せる時間も楽しい

そばとごったく

きれいに盛り付けられました!少しずつ色んな種類を味わえるのがブッフェスタイルの嬉しいところ

山菜や地元野菜をふんだんに使ったお惣菜の数々。お出汁がたっぷりとしみ込んだ煮しめ、優しい甘辛さが癖になる味噌豆、山菜と大根の醤油漬け‥‥家庭料理がベースになっているからか、初めて食べる食材に対しても不思議と懐かしさを感じつつ、「お豆ってこんなに甘みがあるんだ!」なんて素材の美味しさに新鮮な驚きがありました。

「十日町は宝の山、色んな人に食べて欲しかった」

土地の食をブッフェスタイルで楽しめるAbuzakaは、休日になると地元の方だけでなく、他県からのお客さんでも賑わう人気ぶり。

地域の料理が気軽に食べられる仕掛けはどうやって生まれたのか?お店の立ち上げから携わってきた、店長でシェフの弓削朋子さんにお話を伺いました。

Abuzaka店長の弓削さん

弓削朋子さん。前職では、ミシュランガイド一つ星獲得の「鎌倉鉢の木」にて腕をふるっていた日本料理のプロフェッショナル

「十日町から関西の料理学校へ進学し、卒業後は県外で働いていました。大人になって改めて十日町を見つめると、今まで気づかなかったたくさんの魅力が見つかりました。四季折々の景色の移り変わりだったり、野山の豊かな食だったり。宝の山だったんです」

Abuzaka店内の様子

店内の様子。窓の外には田園風景が広がります。春夏はグリーンの稲、秋には黄金色の稲穂、冬には真っ白な雪景色。季節ごとに移り変わる風景もお店の楽しみのひとつなのだそう

「十日町の魅力をもっと伝えていく仕事がしたいなと思っていたところ、ちょうどAbuzakaを立ち上げるプロジェクトに出会いました」

「ごったく」って、ブッフェだ!

「私がチームに入った当時は、そばとブッフェをやることだけが決まっている段階でした。

地元の食材を使って、この地域ならではのものを食べてもらいたいなと考えている時にふと気づいたんです。昔からやってる『アレ』って、実はブッフェと同じだなぁって」

弓削さんの頭に浮かんだのは、親族や地域の集まりに欠かせない「ごったく」のことでした。

ごったく

「ごったくで振る舞われるのって、大勢でシェアする大皿料理なんです。テーブルの上に並べてみんなで取り分けて、お腹いっぱい食べるっていう。特別な料理じゃなくても『たくさんある』ということ自体がご馳走なんですよね。

お母さんたちの『たくさん食べてね』『おかわりどうぞどうぞ』という気持ちのこもったご馳走です。雪国なので、十分な食物がない時期もあったでしょうから」

大皿にたっぷり盛り付けるのは、お母さんたちの気持ちの表れなのですね

大皿にたっぷり盛り付けるのは、お母さんたちの気持ちの表れなのですね

先生は、地域のお母さんたち

ブッフェのテーマがごったくに決まると、いよいよ弓削さんの新しいお店づくりが始まりました。

「これまで日本料理をやってきましたが、山菜の詳しい扱い方となると特殊な専門性が必要になります。採り方から処理の仕方まで、地元のお母さん方に教えてもらいました。一番の先生です。

みなさん独自の作り方やノウハウをお持ちなので、色んな方に教えていただきながら試行錯誤しました」

「ごったく」の器は、家庭ごとにとっておきの大皿を用意したり持ち寄るもの。Abuzakaでは、地域の方から譲ってもらった器を使っているのだそう

ごったくの器は、家庭ごとにとっておきの大皿を用意したり持ち寄るもの。同店では、地域の方から譲ってもらった器を使っているのだそう

ごったくでは、代々伝わる家庭ごとのオリジナル定番料理も登場するそう。「教わったレシピは数え切れないほど」という弓削さん。それらを元に、お店の味を作り出していきます。

「元の型を守りながら、そばとの相性や幅広い年齢層の方にとっての食べやすさを考えて、現代風アレンジを加えました。山菜や郷土料理を食べたことのないお子さんや若い世代の方にも食べてもらって、知ってもらいたかったんです」

店内には小さな子ども連れに使いやすい席の用意も

店内には小さな子ども連れ家族も使いやすいスペースの用意も

こうして生まれた弓削さんのごったくを携えて、Abuzakaは昨年、2017年3月にオープン。またたく間に評判を呼びました。

「カフェのような雰囲気のお店ですが、思いのほか年配の方がたくさん来てくださいます。先日は、70〜80代の方から『母親の手料理の味がする』と感想をいただきました (笑)

100歳のおばあちゃんのお誕生日会の場として使っていただいたこともあります。年配の方が昔を思い出しながら喜んでくださるのは嬉しいですね。

インターネットも使っていない方々が、本当の口コミで地図を見ながら来てくださって、ありがたいことです」

次の世代に伝えていきたいから、レシピは隠さない

年配の方だけでなく、若い世代のリピーターのお客さんも増えているそう。

「来店をきっかけに郷土料理に興味を持たれる方がいたり、作り方の質問をいただくこともあります。家でトライしてみたいと。

レシピは包み隠さず伝えるようにしています。広まってほしいんですよね。みんなに食べてもらいたいですし、子どもたちに地元の美味しい物で育ってほしい。

これからはAbuzakaの歳時記をまとめたり、郷土料理のレシピや大根を干す時の藁の結び方の技術を伝えたり、そんなワークショップができたらいいなと思っています」

Abuzakaのエントランス

「そして、この地域の食に携わる後継者を育てたいという思いがあります。私もそうでしたが、進学や就職で外に出て行く子が多い地域なんですよね。

でも大人になって振り返るとすごく魅力的な場所なので、一緒に盛り立てていきたいんです。出ていった子たちが外から見て魅力を感じる、県外の人がここで働きたいという目標を持てる、そんな場所にしていけたらと思います」

Abuzakaには、インターンで訪れる学生や、四季を感じる暮らしがしたいという思いから働き始めたスタッフもいます。四季折々の食材を使ったごったく文化を通して伝える、十日町の魅力。ここAbuzakaから、じわじわと発信されています。

暖炉の置かれたエントランス

エントランスに置かれた薪ストーブ。「おかえり」と、あたたかく迎たいという思いが込められているそう

おなかいっぱいになってお店を後にする頃には、私もすっかり十日町の食に魅了されていました。親戚の家でご馳走になるような気分で旅先の食文化に触れるごったく体験、ぜひ味わってみてください。

<取材協力>
そばの郷 Abuzaka
新潟県十日町市南鐙坂2132
025-755-5234
http://abuzaka.com/
※予約不可、直接店舗へお出かけください。

文:小俣荘子
写真:廣田達也 (一部画像提供:Abuzaka)
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