さんち 〜工芸と探訪〜

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着物づくりの工程、全て見せます。新潟十日町・青柳の工房見学へ行ってみた

投稿日: 2018年7月24日
産地: 越後妻有
編集:
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新潟県十日町市。今年の夏は、3年に一度の「大地の芸術祭」が開催され、多くの観光客で賑わいます。

この十日町には、もうひとつ、毎年夏を中心に全国から人がやってくる場所があります。

着物の一貫生産を行う「青柳」の工房見学。

美大生や職人としての就職を考えている学生、着物好きが高じて制作現場を見たいという人などから、熱いまなざしを向けられています。

ここでの見学をきっかけに、着物づくりの道へ一歩踏み出す人もいるのだとか。

人が集まる理由は何か、ぜひ行って確かめてみたい!と、工房を訪ねました。

1938 (昭和13年) 創業、株式会社青柳

着物づくりの全行程を間近に

着物の産地として1300年にも及ぶ長い歴史を持つ十日町。この地域の着物づくりの特色の一つが、設計から最終工程までをすべて自社一貫で行っていることです。

着物づくりは染、絞り、手描き、箔、刺繍‥‥と、工程ごとに細かく分業されているのが一般的。

しかし十日町は日本有数の豪雪地帯。冬の資材運搬が困難だったことから一貫生産の仕組みが出来上がりました。

染め上がった生地をほぐし、洗い、乾燥させます。仕上げ工程もすべて手作業です。

全ての技術を持っていることが新商品開発の力となり、一大産地として発展を遂げていったのです。

1938 (昭和13年) 創業の青柳も、創案から完成までの全工程を自社で行なっています。普段目にすることのできない技術の数々を一度に見られる工房見学。着物の専門知識がなくても、見ごたえたっぷりです。

安土桃山時代から続く染色技法「桶絞り」

まずはじめに圧倒されたのが「桶絞 (おけしぼ) り」。安土桃山時代から続く染色技法です。

桶絞り

染めたい部分だけを外に出し、あとの生地は桶の中にしまって染色液の中へ。重さ25キログラムもの桶を液の中で上下・左右に動かしながら手早く染めていきます。習得に何年もかかる技術なのだそう。

樽を使って染めたい部分だけを樽の外に出し、染色液に浸けていきます
樽の中は布と空気。浮力で水面に持ち上げられる樽を何度も両腕で染色液へ押し込みます

樽の中は布と空気。浮力で水面に浮き上がる樽を何度も両腕で染色液へ沈めます

生地が徐々に染まり始めます

作業中、職人さんのゴム手袋の中から大量の水が!染色液は85~90度とかなりの高温。火傷しないようにゴム手袋を2重にはめて、その中に水を入れて作業します

ザバッザバッという音とともに、染色液から上がる熱い湯気をあびながら力強く進む染色作業。この迫力ある様子に憧れて、青柳への就職を考えたという社員の方もいたとか。

染色が終わると、きつく締められた桶を開きます

染色が終わると、きつく締められた桶を開きます

桶染めの蓋を開けたところ

蓋を開けると‥‥

しっかりと閉じられていた桶の中からは、染まらない部分が出てきます

しっかりと閉じられていた桶の中には、一切染色液が侵入していません。白の美しさに格別のものを感じます

染める色ごとにこの工程を繰り返して生まれるのがこの見事な生地です

さっき染めていたのはこの赤い部分。染める色ごとにこの工程を繰り返し、ようやく1着分の生地が染め上がります。この生地は振袖になるのだそう

桶染めは手間がかかりますが、染料を上から塗るのではなく染色液にどっぷりと浸けることでダイナミックで濃厚な色合いが生まれるそうです。

無限の色を生み出す染料の調合

青柳では、イメージされた色を忠実に再現するために、独自の調合を行い染料も自社で作り出しています。部屋中に所狭しと並ぶ多種多様な染料から、精緻な色づくりへの熱い思いを感じました。

ずらりと並ぶ染料。これらを調合して色を作っていくのだそう

調合された染料がずらり

また、デザイナーさんは職人さんに相談して新作の染色方法や色を決めることもあるそう。現場の声を直に商品づくりに活かせるのも、自社一貫生産の強みになっているようでした。

創案工程で、柄の色を指定しているところ。色味だけでなく、ぼかし方なども全て原寸大で描き出します

今回特別に、創案工程で柄の色を指定しているところも見せていただきました。色味だけでなく、ぼかし方なども全て原寸大で描き出します

刷毛で色を描く「引き染め」

今度は刷毛で生地を染める「引き染め」の現場へ。吊るした生地に、染料を手早くムラなく伸ばしていきます。素早く刷毛を操る熟練の技が求められます。

刷毛で染める工程。織りにより立体感のある生地は特に技術が必要なのだそう

刷毛で染める工程。表面に凹凸のある生地を染めるには特に技術が必要なのだそう。この日はストールを染めていました

刷毛と染料
壁にはたくさんの刷毛が並びます

壁にはたくさんの刷毛が並びます

型紙を300枚も使って1つの着物を染めることも

こちらは「型友禅」の技法で生地を染める場所。板場と呼ばれているそうです。

長い板の上に乗せられた白生地に型を当て、1色ずつ染め上げていきます

長い板の上に乗せられた白生地に型を当て、1色ずつ染めていきます

型友禅は、型紙を生地の上に乗せて染めていく技法。 振袖などの型友禅を構成する型紙は250枚から300枚に及ぶことも!一反を完成させるのに1週間ほどかかることもあるそうです。

型染めの様子
型染めの様子
型染め途中の友禅

型染め途中の友禅

一口に「染め」といっても、こんなにたくさんの技法があるのですね。染めの工程の先の、箔加工、手刺繍、金泥描きなど細かな装飾の工程も、タイミングが合えば見学することができます。

見ているだけで、面白い。美大生や着物好きの方が夢中になるのもうなずけます。

染めや絵付けの体験も

同社では、見学に加え、染めの体験も行なっています。見学の興奮そのままに、自分でもトライできるのは嬉しい。

染め体験で作れる座布団。柄の色付けを自分で行うことができます

染め体験で作れる座布団。柄の色付けを自分の手で

次世代へとつなぐ十日町の着物づくり

数々の貴重な技術を間近で見られる工房見学。十日町でも、全てオープンにしているのは珍しいと言います。案内してくださった青柳蔵人 (あおやぎ くらんど) さんに、その理由を伺いました。

株式会社青柳の代表取締役専務 青柳蔵人 (あおやぎ・くらんど) さん

株式会社青柳の代表取締役専務 青柳蔵人さん

「かつて職人の世界は、一子相伝など技を秘めておくことに価値がありました。ですが現代では、作る過程をオープンに伝えることが、お客様との信頼関係にも繋がっていくのかなと思っています。

また、着物がお好きな方にはものづくりに興味のある方が多いようなんです。そういったお客様に喜んでいただけたらとはじめました。

3年ほど前から本格的にはじめて、今では学校の課外授業や市の観光事業としても広がりをみせています。夏休みなどを使って訪ねてきてくれる学生さんも多くなりました」

株式会社青柳の代表取締役専務 青柳蔵人 (あおやぎ くらんど) さん

「着物を仕事にしたいという方にもたくさん出会いました。職人さんが分業制で着物づくりをしている地域や個人の工房では、就職の受け入れが難しいこともあるようです。着物づくりに携わりたくても、現場を見る機会や就職先がないと悩んでいるんです。

そういう人にとって着物との接点を作る機会になっているのは嬉しいですね」

友禅染

どうしても着物づくりがしたい。でも、受け入れ先がない。

実は、実際にそうした悩みを持って、ついに青柳さんと出会い、東京の会社勤めから着物の世界へ飛び込んだ女性がいます。

次回は、Iターンで青柳に就職し、未経験から着物のデザインをはじめた女性にお話を伺います。

<取材協力>
株式会社 青柳本店
新潟県十日町市栄町26-6
025-757-2171
https://kimono-aoyagi.jp/
*見学、体験ともに予約制 (有料) です。

文:小俣荘子
写真:廣田達也
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