さんち 〜工芸と探訪〜

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この秋に参加したい、注目の工場見学イベント5選 燕三条 工場の祭典・ハタオリマチフェスティバル・こもガク×大日本市菰野博覧会・RENEW・五感市

投稿日: 2018年9月23日
産地: 読みもの
編集:
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はじめまして。中川政七商店の井上公平です。日本各地にある工芸産地の活性化を目指す、「地域事業」を担当しています。

仕事の内容は、産業観光イベント「大日本市博覧会」監修や、工芸産地での人材育成事業の企画、工芸メーカーさんの店舗起ち上げ支援など。

仕事柄全国各地を訪ねますが、ここ数年、工芸産地にある変化を感じています。

工場見学イベントが盛り上がっている

ここ数年、日本全国の工芸産地で工場見学を主体にした、いわゆる〈オープンファクトリー〉イベントが続々と誕生しています。

今年に至っては、9月末ごろから11月上旬にかけて、毎週末、日本のどこかでイベントが行われている盛り上がりようです。

ハタオリマチフェスティバル

一口に工場見学イベントと言っても、それぞれの特徴は異なります。

参加企業数が100社を超える大規模なものから、少人数制で参加者との関係構築に軸足を置いたディープなもの、工芸産地における町づくりをテーマにしたソーシャルなものまで、イベント作りの視点もさまざま。

一方で、共通点を見つけることもできます。産地の未来を描いた持続可能な取り組みのひとつとしてイベントを位置付けている点と、デザインを重視している点です。

工芸産地では、従来の「工場見学」という言葉のイメージからは計り知れない、新しい潮流が巻き起こっています。

実は、工場見学は難しい

そもそも、工場見学自体はビジネスの場では普通に行われていましたが、工場の中には企業秘密が詰まっているため、「できれば見せたくない」というのが、これまでの常識でした。同じ産地にありながら、隣の工場には一度も足を踏み入れたことがないというのはよくある話です。

職人自身も「自分たちの当たり前の仕事を見て誰が喜ぶのか?」という意識を持っており、わざわざ仕事を止めてまで工場を開放することに対して、「手間はかかるが得るものは少ない」と考えるのは当然のことでした。

そのため、工芸やものづくりをテーマにしたイベント自体は大昔から全国各地で行われていましたが、多くは物販が主体となっていました。

しかし、一時的に人は集まりますが、本来的な意味での産地のファンの獲得には繋がらず、最終的に得るものがないままイベントが疲弊していくというのが、悩みの種でもありました。

 

その状況は、2013年に新潟県燕三条地域で初開催された「燕三条 工場の祭典」をきっかけに変わり始めます。

燕三条 工場の祭典

©︎「燕三条 工場の祭典」実行委員会

燕三条 工場の祭典

©︎「燕三条 工場の祭典」実行委員会

なぜ、工場見学イベントが全国に広がっているのか?

2013年に、従来の「越後三条鍛冶まつり」をリニューアルする形で開催された「燕三条 工場の祭典」は、都市部以外で行われた大規模な工場見学イベントとしては初の試みでした。古くからの金属加工の町である燕三条地域は、お世辞にも観光資源が豊富な町とは言えません。

しかし、初年度でいきなり1万人が工場見学をするためにこの町へと訪れたのです。しかも、約4割が県外からの来場者でした。

この結果は、驚きを持って受け止められました。従来、価値がないと考えられていた工場見学に、なぜこれだけ多くの人が惹きつけられるのか‥‥?

燕三条 工場の祭典

©︎「燕三条 工場の祭典」実行委員会

 

考えてみれば当然のことですが、一消費者の立場からすると、普段立ち入ることのできない工場の中は、わくわくする場所です。しかし、その扉は業界の事情により、長らく閉ざされたままでした。

燕三条 工場の祭典は、「開け、KOUBA!」のコンセプトの通り、その重い扉をこじ開けました。

その後、2016年には中川政七商店が工芸産地巡回型の「大日本市博覧会」を起ち上げ、各地で地元の工芸事業者と共にイベントを開催し、この年は東京・岩手・新潟・長崎・奈良の5地域で延べ10万人が産地へと足を運びました。

大日本一博覧会

沢山の人が動くことで、経済も動きます。一連の成果を経て、工場見学そのものが、可能性を秘めた新たな観光コンテンツとして見直され始めています。

 

また、工場見学を通じて、来場者数という数字以外にも、産地にいくつかの影響を与えました。

工場の中をきれいにするようになった、従業員が挨拶するようになった、働きたいと人が訪ねてきた、新しい仕事が決まった、イベントではない時にも町に人が訪れるようになった‥‥など、多様な人が交わることで、これまでにない変化が次々と起こっています。

燕三条 工場の祭典

©︎「燕三条 工場の祭典」実行委員会

そして、何よりも、工場で働く職人や地域の人たちが、外からの人を受け入れることで、自分たちのものづくりの価値を改めて見直すきっかけになりました。

この流れが全国の産地へと波及し、今年の秋はかつてない盛り上がりを見せています。

* * * * * * *

この秋、注目の工場見学イベント5選。

ここまでは、工場見学イベント隆盛の背景をお伝えしてきましたが、百聞は一見に如かず。ここからは、この秋開催される、注目の工場見学イベントを5つご紹介します。

 

オープンファクトリーの先駆け 「燕三条 工場の祭典」

燕三条 工場の祭典

©︎「燕三条 工場の祭典」実行委員会

最初は、近年の工場見学イベント隆盛の流れを作った「燕三条 工場の祭典」です。新潟県燕三条地域は、世界に名だたる金属加工の産地。

今年は、「開け、KOUBA!この秋、燕三条の真髄を体感する」をテーマに、過去最大となる109拠点を開放します。

燕三条 工場の祭典

©︎「燕三条 工場の祭典」実行委員会

燕三条 工場の祭典

©︎「燕三条 工場の祭典」実行委員会

ものづくり事業者を中心にした「工場(KOUBA)」93社に加えて、農業を営む8社が「耕場(KOUBA)」を、そして、各KOUBAで作られたアイテムを販売する8社の「購場(KOUBA)」も加わり、あらゆる側面から燕三条の魅力を体感できます。

案内所のひとつである三条ものづくり学校では、昨年から開催されているオフィシャルイベントの「産地の祭典」が行われます。日本全国の産地を盛り上げるつくり手が集い、物販・トークショー・ワークショップなどが楽しめます。

また、例年開催している少人数制のオフィシャルバスツアーでは、今年は本イベントでは一般公開をしていない限定工場を回る、少人数制の超プレミアムツアーです。伝統工芸士など高い技術力を持った職人の技を間近で見られるそうで、より深い体験を求める方にお勧めです。

 

「燕三条 工場の祭典」
【開催期間】
2018年10月4日(木)~10月7日(日)
※「産地の祭典」は、10月5日(金)~10月8日(月)
【開催地】
新潟県三条市・燕市全域、及び周辺地域
公式サイト:https://kouba-fes.jp


 

富士山のふもとの織物の町で行われる 「ハタオリマチフェスティバル」

ハタオリマチフェスティバル

山梨県富士吉田市は甲斐絹を発祥とする、日本有数の織物の産地です。多品種の織物を織る珍しい産地で、町中では今でも織機の心地よい音が聞こえてきます。

近年では多くのファクトリーブランドが台頭するこの町で、2016年から行われているのが「ハタオリマチフェスティバル」です。

「ハタオリ工場祭」では、産地のファクトリーブランドと、クリエイターやショップとのコラボレーションを商店街の店舗や空き家などを使って展示・販売します。

ハタオリマチフェスティバル
ハタオリマチフェスティバル
ハタオリマチフェスティバル

また、織物工場を巡るバスツアーでは、ハタオリマチならではの、織機の音の響く工場で、ものづくりを間近に見ることができます。

「よしだのまちの道具市」では、古道具や手仕事の良さを再発見する店や美味しい飲食店街に加え、古本市やクリエイターズマーケットも同時開催し、秋のお祭り気分を盛り上げます。

町中には「新世界乾杯通り」という、古き良き飲み屋街も残っており、夕方からのはしご酒もこの町の楽しみのひとつです。

 

「ハタオリマチフェスティバル」
【開催期間】
2018年10月6日(土)~10月7日(日)
【開催地】
山梨県富士吉田市(小室浅間神社/下吉田商店街各所/新世界乾杯通り)
公式サイト:https://hatafes.jp/


 

萬古焼と温泉の町に中川政七商店がやって来た 「こもガク×大日本市菰野博覧会」

三重県菰野町のこもガク

三重県菰野町は、中川政七商店では「かもしか道具店」のブランドでおなじみの、土鍋や急須を得意とする焼き物「萬古焼」の産地です。

さらにこの町には、1300年の歴史を持つ「湯の山温泉」、東海地方の登山家の憧れ「御在所岳」、有名シェフが手がけるレストランが人気の総合リゾート「アクアイグニス」など、実に豊かな魅力が揃っています。

湯の山温泉

湯の山温泉

御在所岳

御在所岳

アクアイグニス

アクアイグニス

今年は、菰野町の民間事業者を主体に塾とマルシェを組み合わせた体験型イベントを主催する「こもガク」と、中川政七商店による産地巡回型の工芸の祭典「大日本市博覧会」が手を組み、「工芸、温泉、こもの旅。」をコンセプトに、菰野町全体を楽しむお祭りを開催します。

メイン会場では、中川政七商店による全国の工芸品を集めた期間限定のストアや、東海の工芸やデザインプロダクトを集めた出展ブースでお買い物が楽しめます。

また、10月13日(土)は「花と器」をテーマに陶芸家・内田鋼一さんと花匠・佐々木直喜さんによる対談、10月14日(日)は「工芸産地の未来」をテーマに中川政七商店の中川政七と菰野・鯖江・三条の各工芸産地のリーダーをゲストに招いた対談を行います。

町内の工芸エリアを中心に開催する「コモノオープンファクトリー」では、迫力のある窯が魅力の萬古焼だけではなく、驚異的な技術を誇る指物建具の「指勘」や、菰野町唯一の酒造である「早川酒造」の工場見学を楽しむことができます。

指勘
早川酒造

また、期間中、少人数制で実施される「こもガク塾」は、60もの体験講座を用意しています。

「炭の窯出し体験」「草木染め体験」「枝豆収穫」「日本料理人による僧兵鍋教室」「元女子プロレスラーによるエクササイズ」など、ユニークな塾が目白押しです。事前予約制の塾が多いので、お早めに。

そして、この町の魅力は何と言っても、湯の山温泉。

10月13日(土)は夕方から夜にかけて「夜のゆのやま」と題し、温泉街での湯めぐりと特別営業のカフェやバーでのひと時を楽しめるイベントが開催されます。

昼間は大日本市博覧会や工場見学を思い切り楽しみ、夜は星空を眺めながら温泉に入り、湯上りのビールで乾杯。イベント期間中はこんな楽しみ方がお勧めです。

 

「こもガク×大日本市菰野博覧会」
【開催期間】
2018年10月12日(金)~10月14日(日)
【開催地】
三重県三重郡菰野町周辺
公式サイト:http://www.komogaku.jp/


 

全国からローカルヒーローが集う
「RENEW」

福井県鯖江市のRENEW

福井県のほぼ中央に位置する丹南エリアは、越前漆器・越前和紙・越前打ち刃物・越前箪笥・越前焼といった伝統工芸品に加え、眼鏡や繊維の産業が半径10kmの小さな県内に集積する全国的に見ても稀有な産地です。

RENEWは2015年に福井県鯖江市河和田地区にて漆器・眼鏡の事業者を中心に始まった「日本一コンパクトな工場見学イベント」。

歩いて回れる範囲に約30の工場が解放され、町歩きと工場見学の両方を楽しめるのが魅力です。2017年は中川政七商店の大日本市博覧会と共催し、周辺のエリアにも幅を広げたことにより、4.2万人の来場者を記録しました。

福井県鯖江市のRENEW
福井県鯖江市のRENEW

4回目の開催となる今回の目玉は、メイン会場のうるしの里会館で行われる「まち/ひと/しごと」というオフィシャルイベントです。

メイン会場のうるしの里会館で行われる「まち/ひと/しごと」というオフィシャルイベント

実は、福井県鯖江市は、若者の移住で全国的に注目を集める町でもあります。

10年ほど前から、河和田でのものづくりに憧れ、工芸を学ぶ若者や美大生が全国からIターン/Uターンで河和田へと移住をするようになりました。

そして、今まさに、彼らが地元に根差し、町づくりの新たな担い手になりつつあります。地元のものづくり事業者とクリエイティブな感性を持つ若手移住者による町づくりは、「直接的にものづくりに関わる人を増やす」という第一段階から、「町自体をもっとおもしろくする人を増やす」という第二段階へと移行しつつあります。

「まち/ひと/しごと」は、彼らに呼応するように、全国のローカル経済圏で行われている社会的意義の高い活動を紹介するイベントです。

RENEW

「うなぎの寝床」(福岡)、「パンと日用品の店 わざわざ」(長野)、「Next Commons Lab 加賀」(石川)、「仕立て屋と職人」(滋賀)、「山の形」(山形)、「TRUNK DESIGN」(兵庫)など、ローカルという文脈で全国から注目を集めるメンバーが集い、物販・展示・トークショーなどを通じて、地域の未来を伝え、共に考えます。

 

「RENEW」
【開催期間】
2018年10月19日(金)~10月21日(日)
【開催地】
福井県鯖江市・越前市・越前町全域
公式サイト:http://renew-fukui.com/
※「まち/ひと/しごと」は10月18日(木)~10月21(日)


 

東北初開催のオープンファクトリーイベント
「五感市」

オープンファクトリー「五感市」

岩手県の奥州市・一関市・平泉町にまたがるこの岩手県の県南エリアは、「南部鉄器」「岩谷堂箪笥」「秀衡塗」などの工房が集まる東北でも有数の工芸産地。

2016年に「平泉五感市」として始まったこのイベントは、当初は、工芸の体験・職人による直接販売・勉強会がメインでした。

この五感市を通じて繋がりを深めた次世代の担い手たちは、積極的に全国の産地へ出かけ、各産地の未来をつくる人々と交流をしながら学びを深めていきました。

その中で次の一手が必要と考えるようになり、満を持して、2018年に大規模なオープンファクトリーイベントとして、五感市を進化させることになったのです。

五感市

開催エリアは大きく「奥州エリア」「平泉エリア」「一関エリア」の3つに分かれています。

「奥州エリア」の及源鋳造など南部鉄器の工場見では炎の迫力に圧倒されます。また、岩谷堂タンス製作所では、木工や彫金など複数の技術を組み合わせて作られる、重厚な岩谷堂箪笥の制作過程を一気通貫で見ることができます。

「平泉エリア」は、平安時代藤原三代が築いた町で、当時の「古代秀衡椀」を原点とする秀衡塗の工房「翁知屋」にて見学と制作体験が楽しめます。有名な中尊寺金色堂もすぐ近くです。

五感市
五感市

「一関エリア」では、和太鼓の「小山太鼓店」、染め物の「京屋染物店」などに加えて、日本酒やクラフトビールを製造する「世嬉の一酒造」にて酒蔵見学も楽しめます。また、11月10日(土)にはレセプションパーティーが開催され、ゲストを招いてのトークショーも実施されます。

岩手県南地域は、世界遺産・平泉もあり、毎年200万人が訪れる観光地でもありますので、工場見学と寺社巡りの両方を楽しむのがお勧めです。

 

「五感市」
【開催期間】
2018年11月9日(金)~11月11日(日)
【開催地】
岩手県県南地域(一関市・平泉町・奥州市)
公式サイト:http://iwate-kennan-kogei.com/openfactory/


 

* * * * * * *

工場見学イベントのその先にあるものは?

今年は、今回ご紹介した5つの工場見学イベント以外にも、一年を通じて全国各地で地域の特徴を生かした工場見学イベントが多数行われています。

近年は、ものの価格や機能だけでなく、その背景に共感して消費者がものを選ぶ時代となりました。

ものづくりの現場を訪ねるということへの関心は確実に高まっており、その結果が「燕三条 工場の祭典」や「大日本市博覧会」に全国から多くの人が訪れたということにも現れています。

では、隆盛を極める工場見学イベントのその先にあるものは何でしょうか?

現在、各地で開催されている取り組みは、その目的や方法論は異なりますが、いずれも自分たちの産地の未来を描き、そのための課題解決を目指しています。

既に、燕三条地域ではイベント期間中のみならず、常時見学ができる体制をとる工場が増え、加えて、産地に必要な人材育成、観光拠点の整備など重層的な取り組みへと発展しています。

私は、次の段階として、このような流れが広がっていくのではないかと考えています。
工場見学イベントは、この流れを作るための最初の一歩です。

今回ご紹介した5地域をはじめ、日本には魅力的な工芸産地があります。
イベントは各地の特徴を楽しめる絶好の機会ですので、この秋、ぜひ訪れてみてください。

文:井上 公平

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