さんち 〜工芸と探訪〜

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松岡正剛×中川政七対談「工芸と歴史」 前編「工芸界のニュータイプ!?」

投稿日: 2016年11月20日
産地: 読みもの
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こんにちは。さんち編集部の尾島可奈子です。2016年に創業三百周年を迎えた株式会社中川政七商店。その十三代当主である中川政七と、各界を代表するゲストが互いの専門分野をクロスさせて語らう対談企画。

第1回のテーマは「工芸と歴史」。”知の巨人”として名高い日本文化研究の第一人者、松岡正剛氏をゲストに迎えます。事前に寄せて頂いたコメント冒頭の一文は、「今、工芸の半分が、死んでいる」。いきなり核心に迫る幕開けです。

(以下、松岡正剛氏発言は「松岡:」、中川政七発言は「中川:」と表記)

バックミラーで歴史を映す

中川:今年、中川政七商店は三百周年を迎えたのですが、様々な角度から工芸を捉え直してみたいと考えました。そこで、各界で活躍されている方と対談をして知見を深めていこうというのが、今回の企画の主旨です。
第1回は、未来を考えるにはまず過去を知らなければいうことで、工芸×歴史をテーマに選びました。工芸も含めた日本の文化の変遷を紐解くなら、この方以外にはまず考えられないだろうと思います、記念すべきお一人目のゲストは”知の巨人”、松岡正剛さんです。どうぞ、よろしくお願いいたします。

松岡:今日はよろしくお願いします。三百周年、おめでとうございます。

中川:ありがとうございます。実は正剛さんとお会いするのはこれが初めてではないんですね。そもそも三百周年を機に、社史をちゃんと整えようと思ったのですが、自社の資料がたいして残ってないので、どうせならもうちょっと広げて工芸の歴史全体を読み解きたいなと思ったのです。ちょうどその時に松岡さんの『情報の歴史』(NTT出版)がイメージに浮かんで、松岡さんをたずねました。最初にお会いした時に松岡さんが言われた「歴史というものは未来を作るためにある」という言葉が、いまでも印象に残ってます。

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対談のきっかけとなった『情報の歴史』(NTT出版)

松岡:最初に中川さんと交わした時の歴史と未来というのは、「バックミラーで歴史を映しながら前へ進む」ということです。そのバックミラーは一個である必要はない。いくつものフィルターやミラーで歴史をセレクトするのがいい。歴史を選定して前へ持って行くということです。その装置さえあればどんな未来へも進めます。その場に応じたものに歴史を持ってくることができるのは、未来が先行しているからです。中川さん独特のセレクト感覚のもとで、立体的で不思議なバックミラーが作れれば面白いなというのが、僕が最初にあなたと会った時の「歴史は未来」と言った意味なんです。

中川:なるほど、今伺うと、よりはっきりとわかります。

松岡:そもそも中川さんが自分の会社の「のれん」に歴史を感じたのはいつ頃からなんですか。ビジネスコンサルティングという手法とシナリオと戦略を持って工芸の業界に入って、それが元々の家業とも重なっているわけだから、とてもユニークなケースだと思います。変なニュータイプ。「のれん」にこだわりがあるような、ないような。必然性があるような、ないような、ね。どの辺からそういうことをした方がいいと思い始めたんですか。

中川:変なニュータイプですか(笑)。工芸メーカーへのコンサルに関して言うと、何か戦略性が先にあったわけではなく、もう必要に迫られてなんですね。この仕事に入った頃、世の中ではファストファッションがどーんときている時で、要はたくさん作ることで安く作れる。それもあるかなと思ったのですが、こと工芸に関していうと、1000個作るから安くしてって言いに行ったらそもそも断られる。「いや、うち1000個も作られへん」って。

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松岡:なるほど、工芸の特殊性に気づいたわけだね。小さなロットの注文生産だからね。

中川:1000個作るために100個作れるところを10軒探すのはすごく大変です。そして毎年のように廃業の挨拶に2、3軒来られる。このままいくとまずいなと思いました。それで、「日本の工芸を元気にする!」というビジョンを掲げました。元気にするには彼らが自活していく道を考えなきゃいけない。そうすると経営に直接手を入れるしかないって思ってやり始めたんです。戦略的にというよりは、生きるためにスタートしたんです。

松岡:工芸や民芸を支える文化や基盤が今の日本にしっかりあるかっていうと、無いと思います。例えば、言葉の歴史を見てみるとよく分かります。言葉は当初、非常に意味が多様なんです。「自由」という言葉でいうと、日本では「自由狼藉」のように「勝手気まま」という意味があった。しかし、明治維新後に「リバティ」という言葉が入ってくると、西洋の価値観も流入してくるわけです。単なる「勝手気まま」ではなく、民主主義や自由主義を含めた「自由」という言葉に変わっていく。次第に、リバティ的「自由」の意味が主流になっていくんですね。そうすると、「自由」の意味の多様性が少しずつ失われていく。本来言語は正反対の意味を内包するほどに多様です。日本でいうと江戸の粋(イキ)に対して京都の粋(スイ)、公家の「あはれ」に対して武家の「あっぱれ」。

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中川:確かに、「あはれ」と「あっぱれ」では全く意味が変わってきますね。

松岡:そこが言語の面白さなんですが、リバティだけになってしまうと価値観が単一になっていくんですね。これは「工芸」に関しても言えることです。一時期は多くの人が「工芸」はこれでいいのか、「民芸」と言う方がいいのか、という風に向き合った時期があった。けれど、主流に対する反対・アンチが出にくくなっているのではないかと思います。
かつて、工芸の中には信仰も祈りも縁起物も、たくさんの意味と価値観が含まれていたけれど、もうそれは細かく散ってしまっている。お土産品とか民芸品とかは一体何に使うんだろうとみんな思い始めています。そこにきて、中川さんが話したように、メーカーが非常に少ないロットの中で戦っているということは、中川政七商店だけが抱える問題というよりも日本全体がそろそろ考えなければいけないことでしょうね。もしこれから新しい工芸を作り直すのだとしたら、今言ったようなことを一挙に起こしていった方が面白いと思います。

中川:そのためにもきっと「バックミラーで歴史を映しながら前へ進む」ことが大事なんですね。

写真:井原悠一
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