さんち 〜工芸と探訪〜

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三十の手習い

三十の手習い 「茶道編」五、体の中にあるもの

投稿日: 2017年3月18日
産地: 読みもの
編集:
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◇春の味

道具に息を飲んだあとに、美味しい春の味が待っていました。

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金沢「吉はし」さんの福寿草というお菓子。中の餡はよもぎが練り込んであります。周りは味噌風味の麩のやき。金沢独特のお菓子だそうです。

続いていただいたお菓子には、節分のおもてなしが。

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お干菓子は京都「京華堂利保」さんの「福宝(ふくだから)」という豆菓子です。菓子器は、ひとつは李朝の古い福升。お米の油で真っ黒になっています。もうひとつの菓子器は吉田神社で節分に頂ける福升だそうです。

升の茶碗!間違っても水平にして飲んではダメですよ、両角からこぼれますよ、と先生から注意が。

升の茶碗!間違っても水平にして飲んではダメですよ、両角からこぼれますよ、と先生から注意が。

◇松竹梅の由来

「先ほど茶の湯を大切にした時代の話をしましたが、今度はまた別の時代のお話をしましょうか。これは『三友棚(さんゆうだな)』という棚です」

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「作られたのは明治時代。華やかな文明開化の空気に押されて、日本に昔からあったお茶のような文化は陰に隠れてしまいます。そこで茶の湯に縁深い大徳寺のお坊さんたちが心配して、『こんな時だからこそ三千家が手を携えて、何か新しい方向性を打ち出す時なのでは、ひいてはその象徴となるような道具を作っては』と助言して生まれたのがこの『三友棚(さんゆうだな)』です。三千家でアイディアを出し合って作られました。

なぜ、三友というかわかりますか。歳寒の三友(さいかんのさんゆう)という言葉があります。冬枯れた寒い大地の中にあって、漢詩に詠み、傍に置いて愛することができる、君子の友となりうる3つの植物を指します。なんの植物ですか?絶対にみなさん知っていますよ。そう、松竹梅。冬枯れにも耐えうる、君子が愛でるべきめでたき植物が日本にも来て、松竹梅になったんです。この棚は松で出来ていて、柱が竹、梅の蒔絵があしらわれています」

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棚の上には少し変わった形の棗(なつめ)が置いてあります。朱漆で梅を思わせます。

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「近代を代表する木・漆作家の黒田辰秋(くろだたつあき)の鎌倉彫の棗です。『模様から模様を作らず』と説いた富本憲吉の有名なフレーズを思わせてくれる道具だと思います。日本には美しい文様がたくさん生まれて来ました。それは、質・量の豊かさとは対極にある、貧しい島国だからこその知恵であったかもしれません。シンプルで美しい日本の文様は、心惹かれるものばかり。だからといって、すでにある文様を見てそこから新しい文様を作ろうとすると、それは二次模倣になるからいかん、と言ったのが富本憲吉です。

この棗は、彫りの筋が4筋なのがしゃれています。5筋では上から見たときにそのまま「捻じ梅」の模様になります。それを4筋にしたんです。すでにある模様にすがらず、本当の梅の花を見続けてその上でオリジナルの文様を作ると、どこかで見たような、でも似て非なる、という模様が生まれるのではないか、と思います。

同じような黒田の作品に5筋のものもあります。私個人としては、先の理由からも4筋のほうが、ものとしての力は上だと思います。

さらに説明を加えるなら、鎌倉彫という工芸自体が不足から生まれた『似て非なる』ものです。鎌倉時代、中国から入ってきた堆朱(ついしゅ。漆を何度も塗り重ねて彫刻した漆器)が仏具として重用されました。ですが、堆朱を国産で作るには様々なコストから困難を極めるため、次第に鎌倉の仏師たちの手で、先に木彫りを作ってから漆を塗るという大胆な技法が生まれます。堆朱が欲しいけれど、間に合わない、似たような、それでいて違う価値を、と…そうして生まれた工芸品が鎌倉彫なんです」

お茶室内にはどれをとっても「何気なく」というものがありません。そろそろ今日のお稽古も終わりの時間が近づいてきました。

◇体の中にあるもの

「このお稽古は、私にとっても実験的なアプローチです。普通お茶のお稽古といえば、帛紗さばきから習います。ですが、今の我々には体の中に昔の道具とかその成り立ちへの思いがありません。昔の人は、どこか知らずしらずに、道具や、その成り立ち、立ち居振る舞いへの謙虚な思いが体の中にあった。だから、すぐに訳もわからず、細かな訓練から入っても身につけられたのだと思います。小さな子供であれば、現代であっても同じアプローチが有効だと思います。ただ、大人相手にそれでは難しいのでは、と思うことが多かった。

そこで、皆さんと新たに始めたこのお稽古では、お茶をすることの価値、世界観を先に共有した上で、具体的な姿に落とし込んでいくようにしてみようと考えたのです。真剣を手にして、名物茶入にふれて、もろもろになった仕覆(しふく)1枚を扱う。そうすれば自然と身近のあるものを扱うときの所作も、変わってくるはずです。 大それたことではなくて、日常我々がやっていることも同じです。お茶だけの話ではありません。贈りものをする、それを受け取ったときにちゃんとお礼を言う、大事に使う。同じことです。

−では、今宵はこれくらいにいたしましょう。

◇本日のおさらい

一、話す順番ひとつでも、伝わり方が変わる。基本はポジティブキャンペーンの伝え方を。

一、道具を大事に扱うことが、そこに関わる人を大事にすることにつながる。


構成:尾島可奈子
写真:山口綾子
衣装協力:大塚呉服店

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