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皮革で製品を作っている様子

「皮革」とは。「人類最古のリサイクル品」と呼ばれる技と歴史

投稿日: 2020年5月19日
産地: 読みもの
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古くから私たちの生活を支えてきた「皮革(ひかく)」。

小学生の頃に毎日背負っていたランドセルも、中高生になって初めて履いたローファーも、社会人になって購入したちょっといい財布も。

革財布

革財布

あれもこれも革からつくられていました。

今回は、そんな身近な皮・革・皮革の歴史と特徴、世界に注目される日本の技術やプロダクトについてご紹介します。

皮革とは。皮・革・皮革の違い

動物から得られる「皮革」。しなやかで肌触りがよく、触ると温かみを感じる。温度による形状変化は少なく、適度な弾性があるため加工もしやすい。手入れによっては何十年と保つことから、親から子へ、何代にもわたり受け継がれることもある。

こうした特徴から、人は古くより「皮」の加工技術を発展させ「革」を生み出し、衣類、バッグ、家具や楽器など生活の様々な場面に活用してきた。日本においても、同様に原始時代から毛皮や皮革が利用されていたと考えられる。

ここに注目 皮・革・皮革はどう違う?


「かわ」には同じ読み方の「皮」と「革」、その他に「皮革」を合わせた3つの表現があり、混同されやすいが、実際にはそれぞれに意味が異なる。

動物から剥いだあとの「皮」はそのままにしておくと腐ったり、そのまま乾燥すると硬くなってしまう。そこで、腐らないよう、柔らかさが保たれるように「なめし」の工程が施される。

「皮」とはなめし前の生皮を、「革」とはなめし後の製品として加工できるよう処理された状態を指す。なお、「皮革」は皮と革のどちらの意味でも使われる。

皮革のきほん


○革の種類

すべての動物の皮が、革として加工されるわけではない。革となるのは「脊椎動物」、いわゆる背骨を持っている動物だけになる。動物が、自らの体を保護するためにある皮を利用しているのだ。

革として利用している動物は、家畜として飼育されている牛、豚、羊、山羊、馬が大部分。これは、食利用した後に残る皮を活用しているからだ。皮革製品は人類最古のリサイクル製品とも言われている。

また、革はどの動物のものかによってその特徴が異なる。

・牛:世界中でもっとも取引される。丈夫で、部位ごとの品質差が少ない。
・豚:国内で100%を自給自足している。通気性に優れ、薄くて軽い。
・羊:品種が多くて皮の性状も多様。繊維は細かく、交絡が緩いので軽くて柔らかい。
・ヤギ:強靭ながらも弾力があり、厚みが薄いため軽い。
・鹿:キズが多く、銀面を除いて使用されることが多い。繊維は細いがからみ合いが粗く、非常に柔らかい革となる。かつては武具によく使われていた。
・馬:牛に似ているものの繊維構造は粗大で、毛穴数が少なく銀面 (表面) はなめらかである。尻部分の内層から取れるコードバン層は繊維密度が高く、一部の馬皮からしか取れないので希少とされている。
・ダチョウ(オーストリッチ):羽毛を抜いた後の突起した軸跡(クイルマーク)は他の革にない特徴。現在は各地で養殖されている。
・ワニ:独特の鱗模様が特徴的。部位によって形状や性質が異なる。
・サメ:鮫肌の所以である楯鱗(じゅりん)という硬い表皮を除去して仕上げる。銀面は、細かい連続した網目状に凹凸がある。
・エイ:銀面(表面)全体に敷き詰められた光沢のあるビーズ模様がある。背部の中程には真珠様の「石」が並びユニークな特徴となっている。
・ヘビ:斑紋や鱗模様が独特で、同じ個体の革でも部位によって入り方が違う。

○代表的な工芸品

めがねとキョンセーム

こちらは鹿の一種キョンの皮を使ったキョンセーム。鹿皮の製造量が全国シェアの90%を占める奈良で作られる

・バッグ
・スーツケース
・衣料
・手袋
・ベルト
・靴
・財布
・椅子
・ランドセル
・グローブ
・球技のボール
・馬具
・太鼓
・三味線

○代表的な技法

動物の皮はコラーゲン繊維、弾性繊維、糖タンパク質、プロテオグリカン、水などで形状や柔らかさを保っている。それが剥皮されて皮だけになると腐敗するか、そのまま乾燥するとしだいに水分が抜けていき、繊維同士が付着して(膠着という)硬くなってしまう。

そこで、皮から革として不要な組織や成分を除去する準備作業を経た後に、皮を革に変換する「いわゆる革らしさ」を与える「なめし」が行われる。

ただし、なめしの工程には様々な方法があり、目的とする用途によって選択される。また、国によっては独自になめしの技法が発展してきた。

・クロムなめし

現在、最も一般的に行われている方法。皮を塩基性硫酸クロム塩で処理することによって、コラーゲン繊維同士を結合し安定化する。クロムなめしで処理された革は、耐久性や耐熱性、柔軟性にも優れており、染色しやすいことからさまざまな用途の革に向いている。

淡く水色に染まるクロムなめし革

クロムなめしの革は薬品の化学反応で青く染まる。この状態を「ウェットブルー」と呼ぶことも

・タンニンなめし(植物タンニンなめし)

古くは、植物の樹皮や幹、葉、実などを粉砕し、皮とともに水に浸してなめしていた。その後、植物タンニンエキスを抽出し、皮を漬け込む方法が行われ、現在でも行われている。タンニンなめしで処理されると革の表裏、断面ともに使用したタンニンの色になる。

伸びが少なく、可塑性に優れ、丈夫で型崩れしにくく、使い込むほどに独特の味が生まれる。底革、ぬめ革、サドル革、馬具用、工業用、クラフト革(手芸用革)等の製造に利用され、鞄など形状を保たせたい製品に向いている。紀元前から続くなめし方法の一つで、日本には明治時代に伝えられた。

これらの方法は、いずれも長い時間をかけてなめしを行うものであった。現在は、前なめし剤を使ってドラムによる短時間のタンニンなめしも行われている。

・白なめし

皮(牛皮)を水に漬けて脱毛するところから始まる。その後、塩と菜種油を加え、手もみ・足もみと天日乾燥を繰り返して仕上げる。銀面が乳白色(薄いベージュ)に仕上がることが特徴。河原に広げて天日にさらし、塩と菜種油で揉んで仕上げていくという世界的に珍しい技法。白く(淡黄色)て柔らかい、独特の風合いのある革となる。

似たような技法は全国にあったと考えられているが、白なめし革は姫路市の東側にある市川の特定の場所でしか上手くできず、不思議とされている。なお、姫路の名品として知られる白なめしは、遅くとも室町時代には存在しており、朝鮮半島から伝えられたと考えられている。

○数字で見る皮革 革手袋はシェアの約90%が香川県

・なめし・革同製品・毛皮製造業:事業所数3888軒/製造品出荷額等3848.4億円
・なめし革製造業:事業所数352/製造品出荷額等556.6億円
(出典:経済産業省 平成30年工業統計表「産業別統計表」*推計による従業者3人以下の事業所を含む)
・シェア率:革手袋は香川県が約90%を占める
・伝統的工芸品指定:甲州印伝(国指定)、姫革細工(兵庫県指定)で2件

革のお手入れ


革は汚れと水気に弱く、そのままにしているとシミになることがある。汚れがあるときには、まずブラッシングで汚れを落とす。部分的な汚れは指定のレザークリーナーを布につけて軽く拭きとる。

ただし、クリーナーがしみ込んでシミになることがあるので、目立たない部分で事前に試してから使うことが重要。特にアニリン調の革は、クリーナーが革にしみこみ、シミになりやすい。乾拭きやブラッシングでまず汚れを落とし、専用のクリーナーを用い、まず目立たないところで試してから使用する。

水に濡れたときは水滴を払い落とした後、タオルでたたくようにして水分を吸い取り、型崩れしないよう丸めた新聞紙などを詰めて風通しのいい場所で陰干しすると良い。

濡れた革は熱に弱いので、ストーブの前などで乾燥させることはしない。また、使われている革の種類や製品の種類(靴、バッグ類、衣料、家具など)によってお手入れの方法が異なるため注意したい。

革靴をお手入れする様子

革靴をお手入れする様子

なお、「靴」と「財布」のより詳しいお手入れのコツは以下の記事にまとめられている。

<アイテムごとのお手入れはこちら>
財布(春財布):「革の春財布を買ったら覚えておきたい、お手入れのコツ」
https://sunchi.jp/sunchilist/himeji/8541

靴:「父の日に贈る、家族で使う。中川政七商店「靴のお手入れ道具」
https://sunchi.jp/sunchilist/asakusa/19598

革のアイテムいろいろ

○「革手袋」の全国生産量の約90%は香川県

日本国内で生産される革手袋のおよそ90%がつくられる地域がある。日本唯一の手袋の産地「香川県東かがわ市」だ。

東かがわ市で手袋生産が始まったのは明治時代。低迷していた塩製造の従事者に新たな働き口を与えるため、大阪で手袋製造を行っていた棚次辰吉(たなつぐたつきち)が故郷・松原村(現在の東かがわ市)の教蓮寺境内に製造所を設立したのがきっかけとされる。

その後、太平洋戦争からの復興や高度経済成長の大量消費の波にのり規模を拡大していく。今日ではその製品の種類の多さ、品質の高さで世界からも手袋の産地として注目されている。

○進化をとげる「ランドセルの世界」がすごい

日本独自の革製品といえば「ランドセル」。その起源は明治時代で、官立の模範小学校として開校した学習院の初等科が、学校指定の鞄を設けたことにある。

約50年前の学習院指定のランドセル

約50年前の学習院指定のランドセル

当時は貧富の差が大きく、学用品を風呂敷につつむ子どももいれば、使用人に預ける子どもも。

そこで、学習院では「教育の場での平等」の理念のもと、持ち運びがしやすく、両手が空くことで安全性も確保できる陸軍用の布製鞄「背嚢(はいのう)」、いわゆるバックパックが採用される。なお、「ランドセル」の語源は、オランダ語で背嚢をあらわす「ランセル」から生まれたのだそう。

今日の「箱型・革製」のランドセルになったのは1887年(明治20年)のこと。嘉仁親王 (後の大正天皇) が学習院初等科に入学する際に、内閣総理大臣の伊藤博文がお祝いの品として、箱形・革製の特注ランドセルを献上したのが始まり。

職人さんがランドセルを縫製しているところ。東京・土屋鞄製造所の工房にて

職人さんがランドセルを縫製しているところ。東京・土屋鞄製造所の工房にて

その後、ランドセルは100年以上もの間、基本的なかたちが変わっていない。

箱型は荷物が整理整頓しやすく、教科書を折ることなく並べられる。重心が高いため、体を前に傾けるだけで重心が背中に乗り、重さを感じにくい。さらに、側面に厚みがあることで、ぶつかったときの衝撃を和らげてくれる。見慣れたランドセルのかたちには、子どものことを考えた工夫が詰まっている。

また近年、大人向けのランドセルも誕生している。ランドセルならではの利便性はそのままに、大人向けにアレンジが加えられており、国内のみならず海外からも注目を集めている。

「土屋鞄製造所」が手がける大人用のランドセル

1965年創業の老舗・鞄工房「土屋鞄製造所」が手がける大人用のランドセル

<関連の読みもの>
土屋鞄のランドセル、300工程を超える手仕事を間近で見学
https://sunchi.jp/sunchilist/tokyo/112816

○東京屈指の観光地「浅草」は革靴も日本一

「浅草」は、実は150年以上の歴史をもつ「革のまち」でもある。浅草寺の北側にある奥浅草エリアは、革靴の生産出荷額で日本一。革靴や革製品をつくる工房やアトリエ、皮革素材をあつかうショップなどがあつまる。

○日本独自の発展をした「甲州印伝」

山梨県には鹿革に色漆で多彩な模様を描いた、独特な革製品がある。産地が山梨県であることから「甲州印伝」という。印伝は、日本各地で作られていたが、現在作られているのは山梨県と奈良県である。印伝革で作られた製品を印伝という。諸説あるが、インド(印度)伝来の言葉に由来するともいわれている。

*印伝の由来は諸説ある。

革の歴史

○現存する最古の革製品は牛革の革靴

1991年、アルプス・チロル地方の標高3,200メートルにある氷河において、革製の帽子や服を身につけたままの凍結ミイラが発見された。紀元前3300年ごろとみられ、毛皮の帽子、上着(コート)、レギンス、矢筒、靴、腰巻き、袋付きベルトなどの革製品を身につけていた。それらには、5種類以上の動物の皮が使用されており、当時から既に用途に合わせて動物の皮を利用していたことが明らかになった。

さらに、アイスマンと呼ばれたこの冷凍ミイラよりさかのぼること200年ほど前と推定される、世界最古の現存する革靴が2008年にアルメニアの洞窟で発見された。革製の袋状の靴モカシンに似たこの靴は紀元前3500年のもので、アルメニアにある洞窟の発掘調査で見つかった。靴は牛革製で、ほぼ完全な形で残っており、靴ひももあった。

○日本でも古代から使われていた革製品

日本においても古代から皮革製品があったと考えられている。

「日本書紀」によれば、4世紀のころ、工人が渡来し、百済から革を裁断する技術を伝え、その後4世紀末より革工が渡来し、革を製造したということである。

大阪府豊中市の古墳からは約1,600年前に使われていたとみられる革製の盾や鎧、奈良県の古墳からは約1,300年前のものとみられる鹿革の袋(ポシェット)が見つかっている。この頃の革製品は天皇や貴族のような一部の上流階級のためにつくられていた。

奈良の正倉院には鞍褥(くらじき)、納御礼履(のうのごらいり。靴のこと)、金銀絵漆皮箱(きんぎんえしっぴばこ)、紫皮裁文珠玉飾刺繍羅帯残欠(むらさきがわさいもんしゅぎょくかざりししゅうらのおびざんけつ。革を切りぬいてつくられた模様を、縫いつけた帯の一部)などが収められている。

その柔軟性、工芸性、装飾性、デザイン性は、1300年経過した現在でも十分通用する。

○戦国時代には鎧兜に重宝された

戦国時代、革は鉄よりも軽く、硬さもあったことから鎧兜に重宝された。鎧の胴部分には牛革のようなかたい革に漆を塗ったもの、兜のつばには鹿革に綺麗な模様をつけたもの。また、大将が采配を振るうのに使われる軍配も革であった。

○江戸時代には庶民にも広まる

戦国時代が終わりをつげ、江戸時代にはいると皮革製品は庶民の間にも広まっていく。財布、たばこ入れ、まくら、雪駄、革羽織など。また、革は布と比べて燃えにくいことから、纏(まとい。火消組のしるし)にも用いられた。皮を張った太鼓や鼓(つづみ)、三味線などの楽器が出まわるようになったのもこの頃である。

さんちで取り上げた革製品の今

○八幡靴(はちまんぐつ)

滋賀県近江八幡市には、明治時代から伝統の手縫いで作られてきた「八幡靴」がある。紳士靴の町として知られたが、大量生産、安価な外国産の靴の流入、職人の高齢化によって衰退していた。そんな伝統の八幡靴を復活させるべく、立ち上がったのが「コトワ靴製作所」。オーダーメイド靴をネット販売したり、足型の製作に3Dプリンターを導入したり、と斬新なアイデアや最新技術で伝統の世界に新たな風を吹き込む。

「コトワ靴製作所」で製作された八幡靴

「コトワ靴製作所」で製作された八幡靴

<関連の読みもの>
究極の履き心地に加わったデザインと手軽さ。伝統の「八幡靴」はこうして生まれ変わった
https://sunchi.jp/sunchilist/oumi/105623

○ミニチュアランドセル

卒業の季節。革職人・寺岡孝子さんのもとに全国からランドセルが押し寄せる。可能な限り、もとと同じ場所から裁断され、組み上げられたランドセルはまるで魔法で小さくしたかのよう。役目を終えたランドセルに新たな命が吹き込まれる。

寺岡孝子さんが組み上げたミニランドセル

寺岡孝子さんが組み上げたミニランドセル

<関連の読みもの>
ミニランドセルで傷もそのまま、思い出を残す。革職人 寺岡孝子さん「1日1個」のものづくり
https://sunchi.jp/sunchilist/ueno/87534

<参考>
・太田恭治/中島順子/三宅都子/山下宮也子 文『人権総合学習 つくって知ろう!かわ・皮・革』株式会社解放出版社(2003年)
・北俊夫 監『調べよう 日本の伝統工芸4 中部の伝統工業』株式会社 国土社(1996年)
・宮坂敦子 編『革のすべてを知って作る レザークラフト の便利帳』誠文堂新光社(2012年)
・一般社団法人 日本皮革産業連合会 皮革及び革製品関連「統計データベース」
https://data.jlia.or.jp/kokunai/index.html
・一般社団法人 日本皮革産業連合会 皮革マンガ辞典
https://www.jlia.or.jp/enjoy/manga/index.html
・日本手袋工業組合 東かがわの紹介と歴史
http://www.tebukurokumiai.jp/tidbits/
・JTCO日本伝統文化振興機構 伝統工芸品館
http://www.jtco.or.jp/japanese-crafts/
(以上サイトアクセス日:2020年3月29日)

<協力>
一般社団法人 日本皮革産業連合会
https://www.jlia.or.jp/

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