さんち 〜工芸と探訪〜

SUNCHI ~ Explore japan through regional crafts ~

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産地の工芸品

奈良県

飛鳥・橿原・広陵

くつした 靴下

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概要

奈良の靴下生産量は国内シェア約34.1%(H24時点)で全国1位を占める。うちソックス丈に限れば約56%(同上)と過半数を占める。県内では大和高田市、広陵町、香芝市一体にその生産が集中している。この現状を読み解くには奈良盆地独特の風土が育んだ歴史を紐解く必要がある。奈良盆地は年間降水量が1500ミリ前後しかなく、昔から水不足に悩まされていた。また、江戸のはじめにはすでに新しい耕地を開拓する余地は残っておらず、耕地の90%は田が占めた。そこで少ない水を有効活用して農作物を得るため、一つの耕地を時に田として、時に畑としてかわるがわる使っていく農法、田畑輪換農法が取り入れられた。田の代わりに夏に作られたのが、綿である。

歴史

1586年には、奈良盆地で綿作(わたさく)が確認されている。16世紀頃の日本列島は衣服を麻ものから綿の服へと衣替えしていく過渡期にあり、奈良では17世紀には木綿の日常品への使用が広まる。その需要の増大が、奈良盆地での田から綿への転換を後押ししていたと考えられる。八木、田原本、郡山付近から産出した白木綿は「大和木綿」と呼ばれ、一部を税金に取られる米に変わって農家の貴重な現金収入になった。一帯の綿は繰綿(くりわた。種を取り除いた、精製前の綿)として他の地域へ出荷されることが多く、18世紀初頭には郡山(現大和郡山市)に繰綿屋が約300軒、繰綿問屋が6軒あったという。ほどなく18世紀半ばより、盆地内で繰綿から糸を紡いで織る加工業が盛んになる。この中心となったのが高田、御所、今井町やその周辺の農村などの中・南和エリアであった。
江戸末期、鎖国の終了とともに外国から安価な綿花や綿製品が入ることとなり、国内の綿作・綿織物業は大打撃を受ける。大和盆地でも綿作は急速に衰退するが、綿織物業は輸入の紡績糸に切り替えることでさらに発展した。明治初年、今井町には109軒、高田村には37軒、広瀬群百済村(現広陵町)には25軒の織屋があったという。

明治からの文明開化は、日本に新たな産業をもたらす。服装の西洋化は洋靴と、そして靴下を必要とした。真っ先に洋靴と靴下を必要とした西洋式軍隊の需要を受けて、当時日本橋で鉄砲店を営んでいた西村勝三が、洋靴とともに靴下工場を築地に開いたのが、日本における靴下産業の始まりだったとされる。1871年(明治4年)のことだった。
すでに綿織物業で生地加工の技術や、問屋・糸商といった産業の土台のあった奈良で靴下産業が始まったのは、昭和に入ってからになる。ある人物が一台の靴下の機械を持ち込んだ。時代の変化を見越し、機織りに代わる仕事を模索していた馬見村疋相の吉井䓙治郎である。糸商を商っていた吉井は靴下の製造に目をつけ、アメリカにも視察に行って1910年(昭和43年)、靴下製造を始めた。当時は手回しの編機だった。こうして馬見村から、靴下作りは次第に周辺へと広がっていき、のちに全国一の靴下産地になるまでに発展した。この馬見村こそ、現在の広陵町に当たる地区だ。大正時代には自動編み立て機も導入され、農家が農閑期に行う副業として広く普及することになる。
現在、広陵町だけでも繊維工業に従事する事業者数は63軒、従業員数にして844名にのぼる(平成22年統計)。次ぐプラスチック業が22軒299人、以下は事業者数が一桁台と、圧倒的な差がある。産地内の近しい距離感でメーカー同士がより高性能、高品質の靴下を目指して競い、研鑽を重ねていることが、日本一の靴下産地を支えているとも言えるだろう。

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