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自分好みのひと鉢を作ろう。「自由な盆栽」を目指す塩津植物研究所へ

投稿日: 2019年8月8日
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部屋の中に小さな「景色」が生まれる。

手のひらサイズの小さな鉢でつくる「盆栽」は、 まるで小さな庭を部屋の中に持つように、慈しみ育てることができます。

和室が無くても、窓辺や食卓に。どこに置いても、すんなり似合って、そこに小さな景色をつくります。

人の暮らしに長く寄り添い、人より長生きするものも

今回は、今の暮らしに似合う、誰にでも楽しめる盆栽を研究し、盆栽のおもしろさを教えてくれる奈良県橿原 (かしはら) 市のご夫妻を訪ねました。

盆栽の楽しさを教えてくれる塩津ご夫妻

橿原市は歴史ロマンあふれる古墳や名所、大和三山が織りなす美しい自然景観を持つところ。里山には古来よりの万葉植物など多種多様な植物が息づきます。

塩津植物研究所の塩津丈洋(しおず・たけひろ)さんと久実子さんは3年前に拠点をこの地に移し、展覧会やイベント、ワークショップなどを各地で開いて活躍中。人と植物のよりよい暮らしを研究しています。

塩津丈洋さん

盆栽はとても自由なもの

盆栽といえば松や梅を思い浮かべる人が多いでしょう。

ところが研究所では盆栽のイメージをグッと広げる多様な植物を「わざと、かなり豊富に」常時200種も栽培しています。

「珍しい山野草や実のなるものなど、おもしろいものも揃えています」

たくさんの植物を育てている

塩津さんの盆栽は、和にも洋にも合うものばかり。

可愛かったり、カッコよかったり。

それは、旧来の盆栽のイメージとは異なる、モダンな印象です。

「盆栽は実はとても自由なものなのです」と塩津さん。

バラでもヒノキでも多くの植物が盆栽になり得ます。

自分好みに仕立てる楽しさ

「たとえば松でも剪定次第で自分好みの斬新なデザインに仕立てて良し。自分好みの植物で、新感覚の盆栽を作ることもできます。

モダンがいいと思えばモダンに。クラシックがいいと思えばクラシックに。自分の暮らしにあった盆栽に仕立てていけば良いのです」

盆栽は生き物。買った時点が完成形ではなく、持ち帰った後に自分の好みに剪定し、育てていくことができます。

なにげない樹木や野草がかわいい盆栽になることも

塩津さんの研究所では、植栽の美を引き立てる盆栽の鉢も、自分の好みのものを選ぶことができます。

うつわは全て、丈洋さんが陶芸家に依頼したオリジナルです。

「盆栽はうつわと植栽の総合芸術ですから」

うつわ選びも楽しさのひとつ

とはいえ、盆栽は難しそう。そう思う人もいるかもしれません。

「盆栽は気候の合った日本の植物を日本で育てるものです。だから僕は、『盆栽は優しい』と思っていますよ」

もちろん盆栽は生き物ですから簡単とは言えません。

まずは知ることから。その一歩を踏み出して、育ててみること。

「私たちの盆栽について知りたいこと、分からないことがあれば、どんどん聞いてください」と語るのは、丈洋さんとともに研究所を支える妻の久実子(くみこ)さん。

水やりをする塩津久実子さん

もっと知りたい、触れたい、育ててみたい。ひと目見た盆栽にそんな気持ちが湧いたら、始めどきかもしれません。

豊かな地で「種木屋」に

もともとは東京で盆栽師として活躍していた丈洋さん。奈良の橿原に拠点を移した転機は、他でもない久実子さんが運んできてくれました。

実は奈良出身の久実子さん。ある日、長らく空き家となっていた久実子さんの祖父方の土地を見た丈洋さんは、「ここなら、種木屋がスタートできる」と、確信したそうです。

それはかねてからあたためていた丈洋さんの夢でした。

盆栽の世界では、通常盆栽用の植物を育てる種木屋から苗を仕入れて仕立てます。しかし、丈洋さんが志していた「種木屋」とは、植物を種や挿し木から、「一からまるごと」育てて仕立てる仕事。

丈洋さんは橿原の地を得て、「種木屋」をこの地で始めることを決意しました。

命を感じる小さな芽

「ここは、植物にとっておいしい井戸水が湧き、風が通る。野山に足を伸ばせば、盆栽の材料となるいろんな植物と出会えます」

深く植物と関わって、育てる魅力、仕立てる魅力、そんな植物の魅力のすべてを多くの人に伝えたい。

ずっと胸に抱いていた願いが叶い、今、塩津植物研究所は「種木屋」を名乗ります。

看板に種木屋を示す「種」の屋号

「草木の駆け込み寺」になりたい。

そしてもう一つ橿原で叶えた夢があります。

それは、誰しもの「草木の駆け込み寺」になること。

盆栽のよろず相談所として、育成や培養だけでなく、検診や治療など相談にものります。

「ここに来られたお客様には実生の様子、苗の育成なども見ていただいています」

植物は、定番の松のほかにケヤキやヒノキ、イチョウや楓なども揃えます。

部屋の中でヒノキと暮らす。イチョウや楓と四季を共にする。

塩津さんの盆栽は、森で大樹になるものを部屋に飾ることができるという自由さに気づかせてくれます。

盆栽という小さな世界を通して、人々の思いに沿いながら、人と植物をしっかりつなぎたい。

今の暮らしにあった盆栽を多くの人に楽しんでもらいたい。

そんな思いから塩津さんは、日本の山野草木を題材にした盆栽教室も開いています。

「橿原に来て3年。やりたいことが少しずつ実りだしてきたところです」

植物の種のように、塩津さんの夢もこの地でどんどん膨らんでいくことでしょう。

自然を感じて暮らしたい。そんな人におすすめです

<塩津植物研究所の盆栽に出会える場所>
「大和路 暮らしの間」 (中川政七商店 近鉄百貨店奈良店内)
9月6日(金)まで、企画展「橿原の盆栽」を開催中です。
https://www.d-kintetsu.co.jp/store/nara/yamatoji/shop/index02.html

大和路

<取材協力>
塩津植物研究所
奈良県橿原市十市町993-1
0744-48-0845
http://syokubutsukenkyujo.com/

〜「大和路 暮らしの間」とは〜

伝統産業、技術、工芸品。

それらを守り抜くために、作り手はいろんな想いを抱いています。

商品の背景を知ると、その想いとともに大切なことに気づく瞬間があります。

それは、単に古きものを守り伝えるということではなく、時代時代の「新しい挑戦」が重なっているということ。

その重なりが伝統として次世代へと語り継がれ、また新しい時代を築いていきます。

長い歴史と豊かな自然が共存する奈良で生まれた暮らしに寄り添う品々を、作り手とともに磨き上げ、その想いとともにお届けする。

それが「大和路 暮らしの間」です。

奈良らしい商品を取り揃え、月替わりで注目のアイテムを紹介する企画展を開催します。

この記事では、企画展に合わせて毎月ひとつ、奈良生まれの暮らしのアイテムをお届けします。

次回9月は、「香芝のアート&クラフト」の記事をお届けします。

文:園城和子、徳永祐巳子
写真:中井秀彦
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