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失敗しないお菓子作り!おいしく作る秘密は道具選びにあり かっぱ橋の老舗製菓道具店「馬嶋屋菓子道具店」で聞く、バレンタインのお菓子作りのコツ

投稿日: 2019年1月29日
産地: 浅草
タグ:
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シフォンケーキが膨らまない!

もうすぐバレンタイン。

この季節になると、店頭にずらりと並ぶ製菓グッズを見て心が踊ります。日常的にお菓子作りをしていなくても、なんだかチャレンジしたくなりませんか?

かくいう私は、昨年シフォンケーキに挑戦して、見事に失敗。メレンゲもしっかり泡立てて、レシピ通りに作ったのになぜ‥‥。

今年こそは!と調べていると、「お菓子作り成功の秘訣は道具にある」との情報を目にしました。いったいどういうことなのでしょう。

専門家に尋ねるべく、食にまつわる道具の一大問屋街「かっぱ橋道具街」へ。

成功のカギをにぎる製菓道具のこと、詳しく聞いてきました!

かっぱ橋道具街のお店にはたくさんの道具が所狭しと並んでいます。プロだけでなく一般客や外国人観光客にも人気です

たくさんの道具が所狭しと並ぶ問屋街。プロのみならず、一般客や外国人観光客も多く訪れます

訪ねたのは、かっぱ橋の老舗製菓道具店「馬嶋屋菓子道具店」。同店で製菓道具の開発や研究をされている櫻井裕 (さくらい ゆたか) さんに教えていただきました。

「馬嶋屋菓子道具店」の櫻井裕 (ゆたか) さん

科学的視点を踏まえて製菓道具を語れる櫻井さんは、プロの職人からも頼られる道具のスペシャリストです

その教えは、作りたいお菓子によって適切な素材を選ぶという「型」に着目したもの。つまり、大事なのは形状よりも素材だったのです。

焼き菓子の決め手は「熱通り」

「レシピ通りに作ったシフォンケーキが膨らまなかったんです」と相談すると、櫻井さんは「原因は大きく2つ考えられます」と答えてくれました。

「まずは熱通りの問題。

シフォンケーキをはじめ焼き菓子は、しっかりと焼き上げることが膨らみや味に直結します。指定の温度で充分に焼き上げられるかは、生地を流し込む型の素材次第なんです」

別の金型で焼いたフィナンシェの比較画像

同じレシピを使って、異なる素材の菓子型で焼いたフィナンシェ。条件が同じでも、型の種類でこんなに差が出ます。左の方がしっかりきつね色に焼けていて美味しそう

熱通りがよい素材はを筆頭に、アルミ鉄 (アルタイト、ブリキなど) 。ステンレスやシリコンゴムは焼き菓子には不向きなのだそう。

シフォンケーキならば、アルミ型で

「熱通りの良さがメレンゲの膨らみを助けるシフォンケーキは、アルミの型がいいでしょう」

そう教えられ、熱通りの良い銅ではないの?と思うと、実はそうもいかないよう。

「生地が型に張り付くシフォンケーキ型は洗う必要がありますから、錆びにくいアルミがベストなんです。

銅は高価なので、銅製の道具も多くありません。また、錆びやすいので水洗いできません。プロが銅素材の型や天板を使うのは、パリっとした仕上がりが重要なカヌレやフランスパンを作るときですね。使用後は、拭き掃除のみで保管します」

銅製のカヌレ型

銅製のカヌレ型。一個1,000円以上と高額ですが、お菓子づくり上級者になったらトライしてみたい

表面加工や油分にご用心

「もう一つの失敗原因として考えられるのは、生地の油分やコーティング加工です。

シフォンケーキは、型に張り付きながら生地を支えて膨らんでいきます。型離れを良くしようと型の表面にバターやオイルを塗ったり、油分を含む抹茶やココアなどを加えたり、型の表面にすべりやすい加工がさていたりすると膨らみにくくなってしまうんです」

オーブンの中で膨らむシフォンケーキ

この膨らみは型の支えあってこそ

昨年の私は、シリコンゴムの型を使った上、後片付けを楽にしたい誘惑に負けて型に薄くバターを塗って抹茶シフォンを作りました。どうりで膨らまなかったわけです‥‥。

「シリコンの型は、専用のレシピを使ってくださいね。強力粉を入れるなど、膨らむ力を助けて作る方法もあります。

また、型離れしやすいようにコーティング加工されているシフォンケーキ型もあります。この場合も、膨らみにくくなるのでレシピの工夫が必要です」

テフロン加工のシフォンケーキ型

テフロン加工のシフォンケーキ型

失敗しないシフォンケーキ作りについて納得したところで、他の素材や加工についても教えていただきました。

マドレーヌや食パンには、鉄製を

「銅やアルミには劣るものの熱通りが良く、衝撃に強い鉄素材は、マドレーヌやフィナンシェ、食パンなど万能に使えます。

ただし、湿気ですぐに錆びるため注意が必要です。生地を流し込む前に薄く油脂を塗って型離れしやすくし、使用後は拭き掃除のみ。紙などに包み、風通しの良いところで保管するのが理想的です。

表面に残った油分が型に馴染むことで、型離れ効果とサビ予防の役目をしてくれます。長く使うほどに、使いやすい道具に育てていけるのです。

汚れがひどい時は、柔らかいスポンジで水洗いして、すぐにオーブンの予熱で水気を取り除いてください」

コーティング加工で型離れを助ける

シフォンケーキ以外の多くの焼き菓子で重要なのが、焼きあがった際に型からきれいに取り外せること。

マドレーヌやフィナンシェは、型の通りの形でころんと外れると嬉しいもの

型の通りにころんと外れると嬉しいマドレーヌやフィナンシェ

「金属型に、シリコンやテフロンの薄い膜を施すコーティング加工をしている商品もあります。使い始めの空焼きが不要な上、最初から型離れ効果が望めます。

カロリーカットなどの目的で、コーティング加工のものには油脂を塗らずに使う方もいらっしゃいますが、コーティングが剥がれやすくなるため油脂を少量塗ることをおすすめしています」

ただ、プロが使うお菓子型は、コストの観点から加工無しのものが一般的だそう。

「加工無しの型は空焼きが必要であったり、使い始めは型離れしにくいので油脂をしっかりと塗るなどの手間はかかりますが、正しくお手入れしていれば長く使えて、使い勝手の良い型に育ちます」

コーティング加工なしのブリキのフィナンシェ型

コーティング加工なしのブリキのフィナンシェ型

「すぐ簡単に使いたい」なら加工された型、「長く道具を育てていきたい」なら加工なしの型と、好みで選ぶのが良さそうです。

お菓子にはシリコン加工&拭き掃除

加工が施された金属型選びにはこんな注意点も。

「テフロン加工は水に強いので洗えます。ただし、糖分に弱いため甘いお菓子には不向きといわれています。

一方、シリコン加工は糖分に強いのでフィナンシェやマドレーヌなど甘いお菓子に最適です。でも、液体に弱いので水洗い、特につけ置きは絶対に避けてください。

加工なしの型同様、原則拭き掃除のみで紙に包んで保管します」

ちなみに、テフロン加工は糖分に弱いためパン作り向き。お菓子作りにはシリコン加工がおすすめなのだそう

テフロン加工は、甘くないマフィンやパン作り向き。甘いお菓子作りにはシリコン加工のものを

ステンレスやシリコンゴムは、冷や菓子に

「ステンレスは錆びにくく、シリコンゴムは錆びません。

ムースやゼリー、チョコレート、羊かんなど水分の多いお菓子に最適です。特にシリコンゴムは、いろんな形のものがあるので人気があります」

シリコンゴム製の型を紹介する櫻井さん

店内にも様々な形のシリコンゴム型が並んでいました

道具選びのまとめ

・シフォンケーキ型は、加工なしのアルミ製がベスト。

・マドレーヌやフィナンシェは、手軽に作るならシリコン加工の鉄製型、プロ仕様で道具を育てるなら加工なしの鉄製型を。

・ムースやゼリー、チョコレートなど冷やしてつくるお菓子には、シリコンゴムやステンレスのものを。

素材別の特製一覧

素材別の特徴一覧 (資料提供:馬嶋屋菓子道具店)

まずこの基本を押さえながら、自分にあった道具を選ぶと良さそうです。

「専門店で買うときは、どんな風に作りたいかをお店の人に相談すると良いですよ。いつでも相談に乗りますので」と櫻井さん。専門店、心強い。

弱点を克服した新しい菓子型

素材や加工とお菓子作りの相性を研究してきた櫻井さん。それぞれに一長一短のある道具を見ていて、ついにこんな商品を開発したそうです。

遠赤加工した熱伝導率の高い鉄に、糖分に強い特殊なテフロンを塗った金型「あかがね」シリーズ

鉄製テフロン加工の金型ながら、熱伝導率が高く、糖分に強い特殊加工がほどこされた金型「あかがね」シリーズ

「銅やアルミより熱通りが劣る鉄に遠赤加工を施し、糖分に強い特殊なテフロンを塗装した金属型を作りました。

強くて扱いやすい鉄と水洗いできるテフロンの弱い要素を克服した、しっかりとした焼き上がりと使いやすさを兼ね備えた道具です」

なんと、銅製の型でないと焼き上げられないカヌレまでパリッとしっかり焼けるそう

なんと、銅製の型でないと焼き上げられないカヌレまでパリッとしっかり焼けるそう

この『あかがね』シリーズの価格は5千円から7千円程度。銅製品より安価ですが、一般的な製菓道具よりは高額です。

「お菓子作りが好きな中級者以上の方に喜んでほしいと考えています。

世の中には安価な型もありますが、それは金属素材の純度や加工塗料の質の違いが価格差になっています。お菓子の型は値段相応にそれぞれの納得感がありますので、ご自身の作りたいお菓子をイメージして選んでみてください」

道具の説明をする櫻井さん

「お菓子作りの鍵は道具にあり」

自分の作りたいお菓子ってどんなものだろう?理想の仕上がりや自分にとっての作りやすさを思い描きながら、道具を選ぶのは楽しいものでした。

リベンジを誓う私。アルミ製のシフォンケーキ型を手にお店を後にしました。




※次回は、アルミ型を使ったシフォンケーキ作りの様子をお届けします。お店で教えていただいた膨らむレシピとコツを使って挑みます。果たして成功するのでしょうか?どうぞお楽しみに。

<取材協力>
馬嶋屋菓子道具店
東京都台東区西浅草2−5−4
03-3844-3850
http://majimaya.com/

文・写真:小俣荘子
画像提供:馬嶋屋菓子道具店
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